高性能? それともごじゃっぺ? AIひよりんの実力はいかに 茨ひよりブースレポート【ニコニコ超会議2023】
2023年5月30日 17:00 VTuber
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景品のイバラキング(茨城県のオリジナルメロン)は参加者に大人気であった
ドワンゴは、4月29、30日の2日間、インターネットの祭典「ニコニコ超会議2023」のリアル開催を幕張メッセにて実施した。昨年2022年に、ようやく再開することができた本イベントは、少しずつではあるが着実に以前の活気を取り戻しつつある。
VTuber関連のイベントも複数企画される本イベントであるが、その中でも、日本初の自治体公認VTuber・茨ひより(愛称:ひよりん)さんのブースには、一際大きな注目が集まっていた。本記事では、茨ひよりさんのブースで行われた、「日本初」のトークイベントについて紹介していく。
本題に入る前に、軽く茨ひよりさんについて紹介しよう。彼女は、2018年より茨城県(いばらきけん)公式YouTubeチャンネル「いばキラTV」のアナウンサーとして活躍する、茨城県バーチャル広報課職員のVTuberである。詳しい説明については、昨年のニコニコ超会議における、茨ひよりさんのブースレポをご覧いただきたい(関連記事)。
昨年のイベントでも、「メロン掴み取り」といったキャッチーな取り組みで、会場で注目を集めていたひよりんであるが、今年これだけの注目を集めた理由はもう一つある。
それは、本イベントが、国内初である「自治体公認 VTuberのAI化」のお披露目の場となったからである。
開場から1時間でブースには多くの人々が集まっている
「自治体公認 VTuber の AI 化」 とは、アドバンスト・メディアの提供するAI 音声対話アバター「AI Avatar AOI」(エーアイ アバター アオイ)のシステムに、OpenAI社が提供する会話生成 AI「ChatGPT」を連携させることで、「茨ひより」さんのキャラクター性を再現した会話を実現するものである。詳細については本サイトにて既に紹介しているため、気になる方はご確認いただきたい(関連記事)。
なお、AI化された茨ひよりさん(以下、AIひよりん)は、すでに「いばキラTV」にて、県のふるさと大使である「いばらき大使」である檜山沙耶さんとのコラボ動画を投稿している。
思い返せば、この時からAIひよりんの「ごじゃっぺ」の片鱗が伺える
今回の超会議では、「ダブル茨ひよりトーク」として、本物のひよりんとAIひよりんによるトークイベントが実施されるということで、数多くの人々の注目を集めた。
トークイベントは、初日の朝11時から開催された。超会議自体の開場が10時であることからも、かなり「早め」の実施と思われたが、ブースには数多くの人々が集まっていた。昨年も本イベントに参加した筆者であるが、去年の2倍は人がいるのでは?と思うほどの大盛況ぶりであった。
ブースを見渡すと、昨年に引き続き、ひよりん推しのコスプレイヤーであるもころすさんも、ひよりんブースのお手伝いとして参加していた。
真剣な姿で原稿を確認するもころすさん(Twitter)
時間になると、司会の声優の金澤まいさん(Twitter)の進行の元、トークイベントが始まった。本物のひよりんは、AIひよりんについて「自分が2人もいる、不思議な感覚」ととても素直なコメント。
最初は、AIひよりんへの質問コーナー。AIひよりんに、本物ひよりんなら間違いなく答えられるクエスチョンを投げるというもの。
第一問目は、「茨城県を愛しているか?」と優しい質問から。勿論、AIひよりんも「茨城県を愛している」と回答する。これには、思わず本物ひよりんも「AIひよりんも『茨城県を愛している』と言ってくれた」と感激。
第二問目は、少しレベルを上げて、「茨城県の見どころ」についての質問。AIひよりん、ここも苦も無く乗り越えるかと思いきや、茨城県の見どころではなく、茨城県の名産品を答えてしまう。おまけに「いばらき牛」なる新品種まで開発してしまうという、かわいらしい側面を見せた。
ここで、すかさず本物ひよりんが「皆さん筑波山はいかがでしょうか?」とナイスフォロー。「日本百名山の中で最も標高の低い筑波山は、TX(つくばエクスプレス)を使えば、都心から2時間程度で山頂に辿り着ける」とここぞとばかりにアピール。来場者も、本物ひよりんの、立て板に水を流すような話っぷりに思わず圧倒されていた。
第三問目は、はらぺこなAIひよりんのために「茨城県のおいしいもの」についての質問。AIひよりんは「イバラキング、常陸牛、ひたちのかがやき(茨城県のブランド豚肉、ローズポークの後輩)」と完璧に回答。やはりおなかが空いていたようだ。
AIひよりんの回答するときのモーションも、独自システムによるものである
いくつかの質問の後、最後の問題は、「乾燥芋(干し芋)のおいしい食べ方について教えて」との質問。少しずれた感想であるが、筆者としては、本物ひよりんが、一般的な名称である「干し芋」ではなく、敢えて「乾燥芋」と茨城特有の呼び方で呼んでくれたところに、ただならぬ茨城愛を感じてしまう。そんなこともつゆ知らず、回答を悩んでいるAIひよりん。しかし、その口から出てきた食べ方は衝撃的過ぎるものであった。
「薄切りにして、素揚げで食べるのが、おすすめゴジャ!」
あまりにも前衛的すぎる食べ方、おまけに、取って付けたような語尾。これには、会場の茨城県職員さんたちも思わず苦笑、会場は爆笑に包まれた。
すかさず、本物ひよりんが正しい食べ方を伝授。本物ひよりんのおすすめは「薄切りにして、片面だけをオーブンであぶる」とのこと。これによって、干し芋のこんがりとした食感と、ねっとりとした甘みを同時に楽しめるらしい。確かに、この食べ方はあまりにベテランすぎて、AIには出力できるはずがない。
会場限定で販売されていた干し芋、実は激レア品らしい
続いてのコーナーは、茨城県をお題にした575の川柳大会。本物ひよりんは「某お茶のパッケージも読んでいるし、得意中の得意である」と強気の発言。ここで以下に、Wひよりんによる川柳を記載する。どちらのひよりんがよりセンスがあるか、皆さんに判断していただきたい。
お題:メロン本物ひよりん:茨城の 誇るお味に メーロメロAIひよりん:みずみずしい 甘い香りに メロンに咲く
お題:干し芋本物ひよりん:欲しいもの お腹いっぱい 干し芋よAIひよりん:縮こまる 干し芋の中に 秋風感じ
正直、理系出身の筆者には、到底ジャッジなどはできない。しかし、AIひよりんの川柳にも、確かに「意思」を感じられるような気がしてならない。干し芋を「縮こまる」などと表現するのは、私にはとても思いつかなかった視点だ。
最後のコーナーは、「Wひよりん人生相談」
最初の質問は、司会である金澤まい さんから。今年で声優活動歴9年目を迎えた金澤さん、Wひよりんに「今後の声優活動をどんな感じで頑張っていけばいいか」との真剣な質問。
本物ひよりんは、「不安なときは、茨城の絶景を堪能することが一番!」と、本日2度目になる筑波山のアピールを行う。茨城県のアピールを忘れない点は流石としか言いようがないが、若干機械的なものを感じてしまう回答に、会場もクスクスと小さな笑いが起こる。
それに対し、AIひよりんは、長考の後、「今までの経験があれば、茨城アンテナショップで働くことがオススメ!」と、唐突に転職を推奨。
これには一同大爆笑、会場はまたしても笑いの渦に包まれた。とんでもない剛速球に、金澤さんも思わず苦笑い。しかし、最後に「何が好きで、何に熱中できるかというところが一番大事」と、急に真面目?なアドバイスを残す。なんだかお茶目で憎めないAIひよりんである。
お悩み中のAIひよりん
その後は、会場に訪れた参加者たちの質問に答えていくWひよりん。茨城のおいしいものを知ってもらいたい人、新社会人としてのアドバイスを求める人、同じ県の職員として仕事へのやりがいの見つけ方を求める人。それぞれに、Wひよりんは真摯に向き合い、真剣に答えていく。
本物ひよりんは、同じ生きとし生けるものとして自分の知識を生かしたアドバイスを、AIひよりんは、ある意味「完璧」とも言えるストレートなアドバイスを与えていく。どちらも正しく、それでいて間違っていない。
ただ、国営ひたち海浜公園のネモフィラを渋滞に巻き込まれずに見に行く方法を教えてほしい、と質問した参加者に「自転車でアクセスしましょう、そのために事前に体力を養いましょう」と、大変素晴らしいアドバイスをしたAIひよりんは、やはり「ポン」かもしれない。
最後に、本物ひよりんより、AIひよりんは「茨ひより」を名乗るのにふさわしい!との判定を受け、万雷の拍手の中、Wひよりんによるトークイベントは終了した。
なお、本イベントが終わった後のサプライズゲスト?として、現職の茨城県知事である、大井川和彦さんがブースに訪れた。
知事は、AIひよりんに「茨城県の魅力度ランキングを46→1位にするにはどうしたらいいか?」と質問するが、なんとAIひよりん、「この質問はごじゃっぺですね」とバッサリ。物怖じしないところも、流石はAIといったところだろうか、それとも、やっぱり「ポン」?
最後に、筆者の感想を軽く残したい。
AIひよりんについて、その実力こそはまだ「ポン」の域を出ないかもしれない。ただ、AIひよりんがたった1ヶ月という「突貫作業」で生まれたにも関わらず、これだけのリアリティを持って現れたことは、やはり特筆すべきことであろう。
今回のような人工知能とのコラボレーションは、ひとえに「キャラ」を再現することにとどまらず、将来的には、同時的かつ多言語でのコミュニケーションを実現できるポテンシャルを秘めている。これは、ひよりんの目指す「日本国内外問わず活躍する、茨城県庁内最大のPRマン」の理想形に最も近しい要素である。
元茨城県民としては、様々な企業や自治会が人工知能との向き合い方を模索している中、茨城県が「AIひよりん」という一つのロールモデルを打ち出すことができた点は、非常に喜ばしい限りである。
今後のAIひよりんの活動については、まだ検討中とのこと。いつか「AIひよりん人生相談」のようなコーナーが常設化されることを祈りながら、本記事の締めとしたい。
(Text by ONO SOICHIRO)
●関連リンク・茨ひより(Twitter、いばキラTV再生リスト)・いばキラTV(YouTube、Twitter)・ひよりんの部屋(茨城県庁公式ページ)・株式会社アドバンスト・メディア(公式サイト)
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引用元:https://panora.tokyo/archives/65624