“ゲームのオリンピック”が開幕
オリンピックでゲームをやるなんて、昔は夢にも思わなかった。
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かつて、何度か「eスポーツ元年」が叫ばれても、ゲームメディアに籍を置く身でありながら、もちろんイベントの取材に行くたびにその都度の盛り上がりは感じながらも、なんというかその熱は、瞬間的、刹那的なものであるように感じていた。
どれだけ熱気を感じても「eスポーツの盛り上がりはすごいから、そのうちオリンピックでもやるかもね」と言ったとしたらやはりそれはどこか現実味がなく、なかば夢物語として語るような意味合いを含んでいたように思う。
しかし、けれども。
現実として2021年には“オリンピックバーチャルシリーズ”が開かれた。
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IOCが“オリンピックバーチャルシリーズ”の開催を発表。『パワプロ2020』や『グランツーリスモ』などが使用される
2021年4月22日、IOC(国際オリンピック委員会)は、テレビゲームを使用したeスポーツの大会“オリンピックバーチャルシリーズ”を2021年5月13日~6月23日の期間で開催すると発表した。競技については現在、5競技が発表されており、『eBASEBALL パワフルプロ野球2020』や『グランツーリスモ』が使用される模様だ。
そして今日から、国際オリンピック委員会(IOC)主催の“オリンピックeスポーツウィーク”が始まった。世界の予選を勝ち抜いた選手たちがシンガポールに集い、決勝を戦う。
2021年のオリンピックバーチャルシリーズよりもさらに規模を大きくしての開催という形になる。
すごいことだ。
歴史的なことだという気すらする。
サンテック・シンガポール国際会議展示場では、さまざまな場所を五輪マークが彩っている。
会場のサンテック・シンガポール国際会議展示場
会場入口
街はもはやオリンピックeスポーツウィーク一色……というほどではないものの、会場の巨大液晶には動画が流されていたり、車止めにもイベントロゴが使われていたりと装飾されている。
会場のサンテック・シンガポール国際会議展示場は、ショッピングモールも併設されている巨大なホールで、会場内にはメインステージと、来場者が競技タイトルを遊んで体験できるゲームブースに分かれている。
夏季オリンピックとか冬季オリンピックみたいに専用の競技場やスタジアムを建設したわけではなく、すでに存在するホールを活用してのイベントというわけだ。
もちろん、国を挙げての一大イベントである夏季・冬季オリンピックとは比べ物にならないとはいえ、ゲームイベントとしてはなかなかの規模。
6月22日には開会式が盛大に行われ、その模様はYouTubeでもライブ配信された。
OlympicEsportsWeek Opening Ceremony LIVE
開会式では、東京オリンピック2020の開会式もかくやといわんばかりのド派手な演出。多数のスポットライトがステージ空間を縦横無尽に走り、ステージ上では背景にダンスや歌唱が披露された。会場には関係者・報道陣含め1000人近くかそれ以上の観客が詰めかけていたように見えた。
さらにIOCのトーマス・バッハ会長やハリマ・ヤコブシンガポール大統領がバーチャルで出演。
バーチャルバッハ会長。
バーチャルヤコブ大統領。映像での出演となったふたりだが、暗い会場で遠目から見ると、かなりリアルに見分けがつかなかった。
バーチャル映像で登場したヤコブ大統領は、
「すべての選手がオリンピックの価値観である卓越、友情と尊敬(excellence friendship and respect)の念を体現してくれると確信しています」
と述べ、オリンピックeスポーツウィークの開催を宣言した。
リアルスポーツであってもeスポーツであっても、そこに共通するべき精神性であると思う。
開会式が終わると、競技に使用されるタイトルなどのゲーム体験ブースがオープンし、来場者は思い思いに好きなゲームを体験していた。
『グランツーリスモ7』ブースにはハンドルコントローラが完備。
『ジャストダンス』ブースでは、実際にダンスで対戦!
日本メーカーではセガやカプコンブースも出展。オリンピックeスポーツウィークは、国際的なeスポーツの大会であると同時に、eスポーツの普及も目的にあるように見受けられる。
体験してみたい度がかなり高い『バーチャルレガッタ』。
記者の目 階段の途上――オリンピックeスポーツが見る景色
実際のところ、オリンピックeスポーツウィークは、オリンピックと名づけられているものの、世間一般がイメージするオリンピックの規模感とは異なる。
オリンピック的な(国家の威信を懸けたと形容されるほどの大規模で強烈な)盛り上がりを期待して現地入りしたとすると、少し肩透かしを食らうかもしれない。
では、本イベントは無価値なのだろうか? 意味のない空騒ぎなのだろうか? 「eスポーツなんてけっきょく流行らねえよな」と冷笑的な程度を取られてしまうのだろうか?
決してそんなことはない。思い出してほしいのは、5年前はこのような、IOC主催でオリンピックの名を冠したeスポーツの国際大会が開かれるということは現実味が薄かったということだ。考えてほしいのは、いまから5年後、さらに盛り上がってより大規模になっている可能性だ。
eスポーツはいまも階段を登っている最中だ。このオリンピックeスポーツウィークは、その階段の途中にある大きな一歩であるだろう。かっこいい横文字で言うとメルクマールとか言うのだ。
過去のeスポーツの歴史から見ると本イベントはこれまでなかったと言っていい意義を持つ大会だし、もしも、未来から本大会を振り返ると「オリンピックeスポーツウィークって、昔は小さな展示場でやってたらしいよ!」と驚きをもって語られるものになるかもしれない(コミケって昔は晴海でやってたらしいよ、と語られるような)。
そうなるためにも、IOC主催のeスポーツイベントが短期的に終わらずに、今後も長く続きさらに盛り上がるように祈りたい。
そんなわけで“オリンピックeスポーツウィーク”、気になるゲームがあったら配信をチェックしてみてはいかが。ファミ通.comでも本日から3日間、精いっぱいリポートする。
オリンピックeスポーツウィーク 実施競技一覧
6月23日~25日に決勝戦が行われる種目とゲームタイトルはつぎの通り。
自転車『Zwift』
アーチェリー『Tic Tac Bow』
セーリング『Virtual Regatta』
ダンス『ジャストダンス2023エディション』
野球『WBSC eBASEBALLパワフルプロ野球』
チェス Chess.com
テニス『Tennis Clash』
射撃『フォートナイト』
モータースポーツ『グランツーリスモ7』
テコンドー『バーチャルテコンドー』
(計10種目)
また、以下のゲームタイトルがエキシビションマッチとして使用される。
『ロケットリーグ』
卓球『Eleven VR』
アリーナ・ゲームズ・トライアスロン『Zwift』
『ストリートファイター6』
バスケットボール『NBA2K23』
(計5種目)
以上、計15種目が予定されている。これらはYouTube配信なども予定されているため、興味がある競技の開始日時を事前にチェックしておくといいだろう。
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...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202306/23307192.html