VRヘッドマウントディスプレイVIVEなどでもおなじみの、台湾の大手ITメーカーHTC。同社のメタバースブランドであるVIVERSE(ヴァイバース)が、WOWWOW Technologyと協業して、Nintendo Switch用ソフト『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』(以下、『BIRDIE WING』)を6月15日にリリースした。なぜ、HTCはゲーム事業に参入したのか? HTCのコンテンツプラットフォームVIVERSEの事業開発部長であるマーチ・ルー氏に、戦略を聞いた。
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HTCのメタバースブランド“VIVERSE”は、Nintendo Switch向けダウンロード専用ソフト『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』を2023年6月15日に発売。本日(4月7日)よりニンテンドーeショップにて、先行予約を開始した。
March Lu(盧毓隆)氏
HTC VIVERSE事業開発部長
(文中はマーチ)
BIRDIE WING x VIVERSE Portal Site
『BIRDIE WING』をきっかけにメタバースの世界を広げたい
――HTCのブランドであるVIVERSEでNintendo Switch用『BIRDIE WING』をリリースするとのことですが、まずはVIVERSEとはどんなものなのか、教えていただけますか?
マーチVIVERSEは、HTCが提供するメタバースのプラットフォームで、2022年に始動しました。仮想3次元空間であるメタバースに関しては、HTCでも力を入れており、2015年くらいから技術研究を重ねてきました。当時はVIVE Realityと呼んでいましたね。
それが、ここ2、3年は新型コロナウィルスの影響などもあり、企業さんやユーザーさんを問わず、VIVERSEに対する問い合わせも増えていました。その過程で、VIVERSEのエンターテインメント展開に可能性を感じて、映像および没入感のあるコンテンツやゲームに、さらに注力すべきとの判断になったんです。
――奇しくも、コロナ禍がメタバースの流れを加速させたのですね。
マーチそうですね。コロナ禍で、人と人とが直接フェイス・トゥ・フェイスでコミュニケーションを取りづらくなったときに、バーチャル空間がより注目を集めるようになったとは言えるかもしれません。実際のところ、PCや携帯、タブレット、さらにはヘッドマウントディスプレイ(HMD)など、お手もとにあるいろいろなデバイスを使って、世界中の人とコミュニケーションを取れるというのは、とても魅力的なことだと思います。
ミュージアムやギャラリー、ストアなどさまざまな “ワールド”が公開されているVIVERSE。アバターを気軽に作って楽しむことも可能だ。
――HTCが見据えるメタバースというのは?
マーチメタバースは、VRやARはもちろんですが、クラウドなども含めた幅広い技術を駆使して実現する、エンターテインメントや新しい体験をもたらしてくれる世界です。日常生活の一部となりえるものかもしれません。とにかく斬新な発想が展開できるというのが、HTCのメタバースに対する考えかたです。言ってみれば、スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』の世界が実現するような感じでしょうか。いずれにせよ、人生を豊かにしてくれますよね。
――わけても、VIVERSEの強みは何になるのですか?
マーチこの分野に関しては、2015年から取り組んでいまして、技術に関しては一日の長があると認識しています。さらには、長いあいだ取り組んでいるということもあり、連携しているグローバル・パートナーさんも多く、新規のベンチャー企業さんとのコラボも多いです。VIVERSEには大きな可能性があるのです。
――メタバースのためにも、VRデバイスのVIVEに注力しているのですね?
マーチそうですね。HTCが携帯端末やHMDの開発を続けているのは、どんどん斬新な機能を追加していって、さらに人が使いやすいデバイスを提供していきたいという思いがあるからです。
とりわけ、VRには大きな可能性を感じています。VRデバイスの利用には現状まだまだ壁がありますが、将来はさらに普及していく方向性になると思っています。なぜならば、人はもっと没入感のあるものを実現したいと願っているからです。ただ、現実的にはまだ少し時間が必要かなと思っています。HTCは、VRをさらに訴求させるために、一歩一歩着実にステップを踏んでいくつもりでいます。技術開発を続けて、パートナーさんとも積極的に連携して、ユーザーさんに楽しんでいただけるようなサービスをどんどん提供していきたいです。
たとえば、2Dのライブイベントを見ていただくことで、「楽しいな、つぎはさらに没入感のあるVRで参加したい」と思ってくださることもあるでしょう。まずはユーザーさんに興味を持っていただいて、どんどん試していただく。HTCではそれを目標としています。HTCが提供しているVRデバイスも、どんどん進化しています。たとえば、今年の新機種VIVE XR Eliteは、パワフルかつ折りたためる超軽量ヘッドセットで本格的なMR機能を特徴とした画期的なデバイスです。
2023年にリリースされたVIVE XR Elite。価格は17万9000円[税込]。
VIVE XR Elite公式サイト
Nintendo Switch向けにいくつかのプロジェクトが進行中
――今回の『BIRDIE WING』のリリースは、VIVERSE訴求のための第一歩として実現したものなのですね?
マーチそうですね。『BIRDIE WING』は、当社とバンダイナムコピクチャーズさんとの提携第1弾となります。我々がVRも視野に入れたIPを……と考えたときに、まずは日本のアニメ業界におけるリーディングカンパニーのひとつであるバンダイナムコピクチャーズさんと協力して、オリジナルIPの『BIRDIE WING』を展開することにしました。
『BIRDIE WING』は、2022年にアニメの第1期をスタートして、同年6月には『BIRDIE WING』のメタバースギャラリー“BIRDIE WING METAVERSE MUSEUM”を公開しました。そして6月15日にはNintendo Switch版のリリースが控えています。さらに、『BIRDIE WING』に関しては、スマートフォンゲームも事前登録開始していますし、VRゲームのリリースも予定しています。
各プラットフォームの現在の仕様及び使用の規則、そしてプレイヤーの慣れにより、最初はそれぞれのプラットフォームで同じIPを持つ異なるゲームをリリースします。これらは将来的にメタバースに向けて徐々に統合され、ファンが単一プラットフォームのゲームからメタバースに移行できるようになります。さまざまなプラットフォームで経験を交換できるのです。これが、私たちが今後プロジェクトで実現したいビジョンです。
メタバース空間で『BIRDIE WING』の世界をより深く知ることができる“BIRDIE WING METAVERSE MUSEUM”。美麗なビジュアルやPV、キャラクターやコースの設定などを見ることができる。
――メタバースに親しんでもらうためには、IPによる訴求が近道ということですね。
マーチ必ずしもそうというわけではないのですが、コンテンツを提供することでユーザーの皆さんにとにかく楽しんでいただきたいという思いはあります。HTCでは、2年前にアーティストのシューヤマモト氏とコラボして、“Step into CAT ART”というバーチャル展覧会を開いたのですが、そこで得られた手応えが、今回の『BIRDIE WING』での展開にも生かされています。実際のところ、現時点でのメタバースとSwitch版との直接の連携はないのですが、同じIPで幅広い体験ができるということは、メタバースにとって意義のあることだと思っています。『BIRDIE WING』は、メタバースと相性がいいコンテンツですしね。
――ゴルフと3Dは相性がいいかもしれないですね(笑)。
マーチNintendo Switch版を遊んで、メタバースミュージアムで親しむといった方もたくさんいらっしゃるでしょうし、Switch版や今後リリースされるスマホ版で『BIRDIE WING』を遊んで、「VRでも楽しんでみたい!」と思ってくださる方もいらっしゃるでしょう。今後に向けてさまざまな可能性が生まれてくると思っています。
ふたりの天才少女がゴルフ界に波乱を巻き起こすストーリーが描かれる『BIRDIE WING』。ゲーム版は、ストーリーモードと、友人との対戦やジャイロ操作も可能なフリーモードが楽しめる。
――ちなみに、『BIRDIE WING』のほかにも、メタバース訴求を睨んでのゲーム展開は考えているのですか?
マーチはい。Nintendo Switch用ソフトに関しては、じつはいくつかのプロジェクトが進行しています。今年から来年にかけて、随時新情報が出てくるかと思います。ちなみに、『BIRDIE WING』自体も、メタバースに絡めて、今後いろいろな展開を考えています。
――どんな展開を予定しているのですか?
マーチ現時点ではお話しできないのですが、ファンの方に喜んでいただけるような楽しい機能を実装予定です。楽しみにしていてください。
――今後のメタバース展開で思い描いている目標を教えてください。
マーチ人と人とのコミュニケーションの部分を、さらに進化させていきたいです。たとえば、バーチャル空間に自分の部屋を作って、そこに友だちを招いて交流するとか、飾ってあったデジタルのフィギュアをプレゼントするとか……。そこからビジネスが発生してくる余地もあるかもしれません。とにかく、ユーザーの皆さんに“楽しい”と思っていただけるような空間を構築したいです。それらのことは、今後実現したいと思っています。ゆくゆくは、メタバースにひとつの“世界”が構築されていったらすばらしいですね。
――最後に、今後に向けての抱負をお願いします。
マーチメタバースでは、今後も斬新な体験をファンの皆さんに提供していきたいと思っています。ゲーム展開も含めた、これからのVIVERSEにご期待ください。
ホソクセツメイ01VIVERSE
VIVERSEは、HTCが提供するメタバースプラットフォーム。Webブラウザ経由で、PCやスマートフォン、タブレットで利用可能。VRデバイスでも楽しめる。ゲームやバーチャルコンサート、ミュージアムなど、多種多様な楽しみかたができるプラットフォームとして、2022年3月に立ち上げられた。
VIVERSE
ホソクセツメイ02『BIRDIE WING』
『BIRDIE WING』は、HTCが初めてアニメの製作委員会に参画した、バンダイナムコピクチャーズ制作のオリジナルIP。賭けゴルフで生計を立てているイヴと大企業の令嬢である天鷲葵というふたりの天才少女を軸としたゴルフストーリーが描かれる。2022年4月にはテレビアニメ『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』のSeason 1が放送。この4月にはSeason 2がスタートし、6月15日にはNintendo Switch用ソフトが発売された。
『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』ニンテンドーeショップサイト
...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202306/28305232.html