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『桃太郎電鉄ワールド』さくまあきら&桝田省治&岡村Pにインタビュー。地球マップで遊びが変わる! さらなる『桃鉄』新作の存在も明らかに | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

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 『桃鉄』が世界へ飛び出す。

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 老若男女問わず支持されている『桃太郎電鉄』。その最新作『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』の発売日が2023年11月16日に決定した。
 「『桃鉄』の世界版があればおもしろそう」というアイデアがついに実現。ももたろ社長たちが日本を飛び出して世界中を飛び回る、ワールドワイドな競争が楽しめる。
 遊ぶだけで日本の地理が覚えられると言われ“教育版”まで作られた本シリーズが、いよいよ世界をテーマに据えた。
 シリーズの生みの親であるさくまあきら氏を始め、本作で監督/ゲームデザインを務める桝田省治氏と岡村憲明シニアプロデューサーにインタビューを実施。従来の『桃鉄』との違いを意識し、チャレンジングな要素も多数取り入れたという最新作の開発裏話をたっぷり語ってもらった。

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さくまあきら 氏(さくま あきら)

1952年生。1987年にファミリーコンピュータ用ソフト『桃太郎伝説』をハドソン(当時)からリリース。翌1988年に『桃鉄』シリーズ第1作『桃太郎電鉄』を発売。『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』では制作総指揮を務める。(文中はさくま)

桝田省治 氏(ますだ しょうじ)

1960年生。広告代理店勤務時代にPCエンジン用ソフト『天外魔境 ZIRIA』(1989年発売)の制作に協力した縁でゲーム制作へ転向。『俺の屍を越えてゆけ』や『勇者死す。』などの代表作がある。『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』では副監督を務め、本作では監督とゲームデザインを務める。(文中は桝田)

岡村憲明 氏(おかむら のりあき)

KONAMI在籍のゲームプロデューサー。『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』、『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』シニアプロデューサー。(文中は岡村)

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新要素“球体マップ”のヒミツ
『桃鉄』だけど『桃鉄』とは違う。禅問答のようなテーマに挑戦
電車はやめて飛行機に 従来作品との違いを意識
コロナウイルスや地域紛争など世相を反映したイベントも導入
最短ルートの算出やCOMの性能強化によりプレイ感覚も一新
『桃鉄』次回作も進行中!? 気になる今後の展開

新要素“球体マップ”のヒミツ
――世界全体を舞台にした『桃鉄』、企画スタートのきっかけというのは?
桝田我々は『桃鉄』について定期的に会議を行っているんですが、いつぞやの定例会議で、さくまさんから「そろそろつぎのタイトルを作ってよ」と、サクッと言われたのがきっかけかな(笑)。
――気軽に(笑)。
桝田前作にあたる『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』は先日400万本を突破したけど、これは舞台が日本で、ほぼ国内だけでの売上だと考えるとすごいことだよね。そして、「『桃鉄』という遊びそのものは世界でも通用するのか、一度試してみたい」という思いもあって。

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さくま海外に向けて『桃鉄』を発売する場合、どうすれば世界中のユーザーさんに楽しんでもらえるか? いろいろと試してみたいけど僕は体力的にきびしいので、今回は代わりに桝田くんに企画を進めてほしいとお願いしたんです。
桝田『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』の発売前から「いつかそういうタイトルもやってみたい」とは話していたけど、そのときは「まずはこれが50万本売れてからだね」という話で落ち着いて。そうしたら予約だけで50万本を超えて発売したら、あっという間に100万本を突破したんだよね。
 「これはいけるんじゃないか?」ということになり、前作の発売から日をおかずに『桃鉄ワールド』の開発準備も進めることになったんじゃないかな。
――『桃鉄 令和定番』のヒットを受けて、開発環境にも変化はありましたか?
岡村いろいろな企業様から「『桃鉄』とコラボしたい」というご連絡をいただくようになりました。本作以前にもそういったお話はありましたが、『桃鉄 令和定番』では、コラボ依頼の数が2桁くらい増えて、てんやわんやになって。
 コラボ企画を担当するために専用チームを編成するくらい盛り上がりました。本当にありがたい限りです。

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――前作開発時のインタビューでは「さくまさんがお孫さんに遊ばせたくて開発に踏み切った」というお話もありましたが、お孫さんの反応はいかがでしたか?

桝田KONAMIはずっと『桃鉄』を作りたがっていて、さくまさんは男の子の孫が初めて生まれたのもあって、『桃鉄』をもう1回作りたくなっていた。そのタイミングに、僕が『桃鉄』を作れるラインを用意した。この3つが揃ったから始められた。これは僕の自慢だけど、さくまさんは「二度と『桃鉄』は作らない」と言っていても、いつか「作る」と言い出すだろうと、ラインをキープしていたんだよね。出典:『桃鉄』新作の謎に迫る、さくまあきら氏&桝田省治氏インタビュー。開発の経緯から新要素までを訊く(ファミ通.com)

さくまいま幼稚園に通っている年齢なので『桃鉄』はまだちょっと難しいみたいで……(笑)。自分自身、70歳を超えてこれほどのヒット作を手掛けることになるとは思いもしなかったので、人生、何があるかわからないものだなと改めて思いました。
桝田小ネタだけど、スリの銀次の登場シーンでは、毎回さくまさんのお孫さんが背景に描かれているんだよ。『桃鉄ワールド』にも銀次は登場するので、お孫さんの成長の過程もぜひチェックしてみてほしいね(笑)。

スリの銀次の右側に、さくまさん一家が……?

――今回新たに挑戦した点は?
桝田『桃鉄』シリーズでタイトルに“ワールド”が付くのは本作で2本目なんだけど、2010年発売の『桃太郎電鉄WORLD』を遊んでみたところ、日本からいちばん遠い駅がハワイだったんだよ。『教育版』(※)も出しているのに、それじゃあよくないよね?(笑)
※……『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』。シリーズの特徴を活かしたデジタル教材『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』。2023年より学校教育機関向けに無償で提供している。

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桝田それで、まずマップから再検討して「世界を舞台にするならいっそマップも球体にしてみてはどうか?」ということになった。ふだん移動しているときは平面のマップなんだけど、カメラを引いて画面を縮小すると球体状になって、いま自分は世界のどのあたりにいるのか直感的にわかるようにすればおもしろいんじゃないかと思ったんだよね。
 実験してみたら実現可能だとわかって取り入れることにしたんだけど、そこからがまた苦労の連続で……。球体でのマップの表現を甘く見ていたというか、実際に取り入れてみたらこれがめちゃくちゃたいへんだったんだよ。

マップを縮小すると球体に。

――具体的に言いますと?
桝田海が……広いね、大きいね。
――(笑)。
桝田素直に地球をマップにすると、その大半が海になってしまうんだよ。それに、陸地も北半球に集中しているんだよね。球体にすることで改めて気づかされることが山のようにあって。
 いままでの平面マップの作りかただと距離感がぜんぜん違っていて流用できなくて「空路や海路も含め、どうやって線路をつないでいくか?」という根本的な部分から考え直す必要があったんだ。作っては修正する作業をひたすらくり返して、さくまさんに見せられる段階に持っていくまでに1年近くかかってしまったね。
さくま改めて世界地図を眺めてみると、各大陸でも面積的には山や砂漠などが多くて、人が住んでいるエリアはごくわずかなんですよね。それをリアルに再現すると、物件駅がすごく少ない過疎マップになっちゃう。
桝田逆に、ヨーロッパ地方は狭いエリアに物件駅が密集してしまう。なのにそこにある都市名がめちゃくちゃ長かったりするから、混み入っているエリアでは駅名の看板が乱立してたいへんなことになっているよ。
――たとえばええと、アムステルダムとかコペンハーゲンとか……。
岡村ニュルンベルクとかシュツットガルトとか……。
桝田僕ら制作側としては、子どもたちがオリンピックを観戦するときに、参加国を見て「この国、『桃鉄』で行ったことがある」と言ってもらえるようにしたいという目標もあって。それらの国と主要な都市はできる限りゲーム内にも反映したくて、どんどん盛り込んでいくうちに膨大な情報量になってしまった感じかな。

――都市部のエリアは物件駅で溢れる一方、海上や砂漠地帯では、路線がスカスカになってしまったりということも?
さくまそうしたエリアには、便利なカードがもらえたりちょっとしたイベントが発生したりとお得な効果のあるマスを多く配置して、その経路を通ることに意味を持たせています。とはいえ、延々と移動し続けるだけではおもしろくないので、各マスの間隔を大きく取って、一気に移動できるように調整しています。
――従来作品のグアムとかハワイへ行くときみたいなイメージですかね。
桝田これが平面マップだったり舞台が日本国内だけだったら、現実よりも関東平野を広めに描くとか、ある程度のアレンジを加えることもできたんだけど、今回のマップは球体だからね。
 手を加えてしまうと球体になったときに世界地図が大きく歪んでしまうので、わずかでも座標をいじるわけにはいかなかったんだよね。
 あと、北極航路問題ね。
――と言いますと。
桝田現実では、飛行機で北極圏ルートを通ることもあるんだけど、ゲームでは球体マップだから北(上方向)へひたすら向かっていくと、北極点を境に南(下方向)へ自動的に方向が変わっちゃうよね。プレイヤーにとっては「なんで上に進めていたのに勝手に下方向に変わっちゃうんだよ」となってしまう。
――確かにちょっと気持ち悪い感じがしそうですね。
桝田だから、北極を経由して移動する場合は、北極点は通らずそれを中心軸としてグルっと回る環状交差点(ラウンドアバウト)方式にした。日本には少ないけど海外にはけっこうあるよね。

環状交差点。フランス・パリの凱旋門まわりなどが有名。

『桃鉄』だけど『桃鉄』とは違う。禅問答のようなテーマに挑戦
――本作は『桃鉄』シリーズの中でもかなりチャレンジングなタイトルと言えそうですね。
桝田そうだね。さっき話した目標とは別にもうひとつ広報的な意味での目標もある。
 それは、長年にわたってシリーズ作をプレイしてくれている皆さんに、“これは『桃鉄』シリーズのひとつだけど、これまでの『桃鉄』とは違う”というある種の矛盾を伝える……ということなんだけど、なかなかたいへんだったね。
 「『桃鉄』ならではのおもしろさはちゃんと引き継いでいます。そのうえで、これまでのタイトルとは異なる遊びも提供します」ということをひと目見ただけでもわかるようにするため、いろいろな要素をいじることになったんだ。
――『桃鉄』といえば各駅で購入できる物件も見どころですが、本作に登場する物件はどのように決められたのでしょう。
桝田これまでは、実際にさくまさんが現地を取材して、さくまさん目線で掘り出し物件を見つけてくるのが『桃鉄』らしさでもあったんだけど、今回は新型コロナウイルスの影響でそうした動きができなくて。実際にその街に行ったことのある人のブログなどを拝見して、そこから情報を拾う形でめぼしい物件を探していった感じかな。
岡村最初はがんばって調べていたんですけど、やはり我々だけでは正確な情報を集めきれなくて。旅行ガイドブック『地球の歩き方』(※)の編集部に相談して、途中から監修で入っていただくことになったんです。編集部から各国在住のライターさんを探してもらって、より正確な情報も集めてもらって。そこからは物件選びが格段にスムーズになりました。
※……個人旅行者のバイブルとも言われるガイドブック。非常に多くの国や地域がラインアップされており、実際にその土地を旅したライターによる文章・写真が多く掲載されている。

土地土地にさまざまな名産物件が用意されている。

――それはいいコラボレーションですね。
桝田たとえば“天使の海老”というのが有名な街があって、その駅では物件に天使の海老レストランなんて入れようと思ったんだけど、調べてもらったら「エビの養殖は盛んだけど、天使の海老を使った料理を出す店は現地にはない」とのことで。そうしたリアルな声を聞かせてもらえたのはありがたかったね。
――さくまさんご本人ではないにしても、できるだけリアルな声を拾っているわけですね。本作をプレイすることで地理だけでなく各国の抱える事情や世界経済についても学べそうです。
さくまとくに海外だと、最新データといいながら5年前の情報が平気で出回っていたりするので。
 数年前までは金の産地として有名だった鉱山が閉山されていたり、洪水で壊滅したりと変わってしまう都市などもあるので、そのあたりは入念に調べて間違いのない情報でデータを作っています。それと、実際に自分で調べてみて改めて気づいたことなのですが、世界には国境線があいまいな地域がたくさんあるんですね。
 世界地図ではくっきりと線が引かれていますが、実際はそうではない地域が意外と多くてどこまで正確に載せるべきかは迷いました。

岡村こちらも我々だけでは対応しきれない部分なので、各分野の専門家の方や日本旗章学協会の方にもご協力いただいています。
 注意深く調べて、調整にも時間を掛けできるだけ公正で正しい情報を盛り込むよう気をつけています。前述の物件選びに関してもですが、各分野の専門家の皆さんにご助力いただきつつ、社内でも調査担当の別働チームを用意しまして。現状では日本で発売するぶんには問題のないレベルまで情報は精査できたと思っています。
電車はやめて飛行機に 従来作品との違いを意識
――桝田さんは前作で副監督、本作では監督となっていますが、業務の内容にはどのような変化があったのでしょう?
桝田すべてのポジションに目を配るようになったけど、僕の上には制作総指揮としてさくまさんがいるからね。開発が進むにつれてその都度できあがったものをさくまさんに見てもらうんだけど、「今回は急行系カードをなくして、ぜんぶ飛行機に変えよう」とか、平気で言ってくるので恐ろしかったね。
 いくら今回は新しい『桃鉄』を作ると言っても、僕からはとても言えない発想だよ(笑)。
――『桃鉄』から急行系カードをなくすとか、なかなか言い出せないですよね。
桝田僕たちが“『桃鉄』らしさ”を維持して、さくまさんが“これまでの『桃鉄』とは違う”要素をバンバン打ち出してくる感じだった。
 本作では、急行カードや特急カードがなくなる代わりに、それらと同じ効果で、給油して残量を満タンにすれば何回でも使える“タンク系カード”が出てくるんだけど、これもさくまさんのアイデアなんだよ。
 「何回使えるかわからない周遊カードより、使える回数を自分で管理できるカードがあったほうが初心者の方も遊びやすいはず!」ということで採用になった。給油駅でタンクを補充したり、相手のタンクを攻撃してガス欠にしたりと新しい駆け引きも楽しんでもらえるんじゃないかな。
――舞台が世界になっただけでなく、システム的にも新たな挑戦が行われたのですね。
岡村さくまさんから最初に「(プレイヤーのコマを)電車はやめて飛行機にする」と言われたときは、正直「マジかよ!?」と思いました(笑)。
――『桃鉄』の“鉄”部分がなくなっちゃう!
さくま飛行機も素材は鉄だから(笑)。
桝田そういう問題じゃないでしょ(笑)。

岡村移動手段が飛行機であることが視覚的にも本作の特徴になっていて、いまとなってはこの形にして正解だったなと思っています。ちなみに、飛行機に目がいきがちですが、地上を移動するときはこれまでどおりSLが登場しますので鉄道ファンの方もご安心ください。
コロナウイルスや地域紛争など世相を反映したイベントも導入
――ゲーム内の仕様で、ほかにもさくまさんから変更を指示されたところはありますか?
さくまUI(ユーザーインターフェイス)に表示されるパラメータが多かったので「もう少しシンプルにしてほしい」と伝えました。桝田くんの作るゲームは情報量が多いので、わかりやすく整理してもらうようお願いした感じです。
桝田『桃鉄』は一手ごとに熟考するのも楽しいけど、眉間にしわを寄せて毎回5分以上考え込んでしまうような遊びかたは合わないからね。さくまさんからは「わかりやすく、テンポよく遊べるようにしてほしい」ということを何度も念押しされたよ。
さくまほかには、通常のイベントとは異なる3つの大型イベントを用意しているんだけど、これも本作ならではの大きな特徴なんじゃないかな。それぞれでテーマも違うので、『桃鉄』を遊びながら、同時進行で別のゲームもプレイする感覚になると思う。
――各イベントのタイトルは『伝染病にうちかて!』、『救援物資をとどけろ!』、『IT長者をめざせ!』とのことですが、これらを導入された経緯をお聞きしたいです。
桝田ここ数年で起きた世界規模の大きな出来ごとというと、いちばん記憶に新しいのはやはり“新型コロナウイルスの流行”と、“ワクチン開発のために世界中の人々が協力し合ったこと”になるよね。
 世界中を飛び回るイベントということで真っ先に思いついたのがこれらだった……というのが、正直な答えになるかな。それと、各地でいま現在も起きている問題として“地域紛争”にも触れないわけにはいかなかった。3つ目のイベントに関しては、IT企業が際限なく大きくなり続けていることは、いまや世界中で知られている事実なので。テーマとして取り上げても問題ないだろうという認識で採用した感じかな。

――社会情勢もゲームに取り入れていく姿勢は教育版でも活かせそうですね。
桝田「こういう出来事があったことを子どもたちに知ってほしい」というのはもちろんあるけど、導入したもうひとつの理由を挙げるとしたら、「せっかく作った球体マップを有効活用したい」という気持ちがある。
 制作側には「とにかく地球を回せ!」というスローガンがあって、イベントが発生したりカードを使うたびに、ガンガン地球が回る演出を取り入れていって。あまり難しく考えすぎず世界を旅する感覚を楽しんでもらいたいね。
――視覚的にも“世界中を飛び回っている感”を楽しめるのはいいですね。イベントについて、具体的はどのようなものになるでしょうか?
さくま『伝染病にうちかて!』は、全世界で流行した伝染病に対抗するために、各国の製薬会社がワクチンを作って、それを集める競争が発生する……というイベントになります。
 飛行機で世界中の製薬会社を買い集めて、ワクチンを開発して、公的機関に納める。プレイヤーどうしで協力しつつも競争するゲーム性になっているので、従来の『桃鉄』とはひと味違うゲームプレイが楽しんでもらえるのではないでしょうか。
――本作で新たに導入されたおもしろい物件や掘り出し物物件というのはありますか?
桝田ニューヨークの市場で上場している有名企業をモチーフにした物件はたくさん入っているよ。ゲームをプレイしながら「先月は大手A社、B社を買って……」みたいな自慢話もできると思う。
――GAFA的な企業を買い占めてみたいですね(笑)。
さくま物件には各国の特色が出ているのでそれらを見て回るだけでもおもしろいと思いますが、実際に調べてみて改めて、アフリカ大陸は資源が豊富であることに気づかされました。
 「これだけ資源が豊富なら各国がこぞって投資したがるのもよくわかる。実社会でもこれから間違いなくアフリカは急成長するな……」ということが感じられていい勉強になりました。

これまでの作品ではあまり見覚えのなかった物件が並ぶ。“コシャリ”って……何!?

最短ルートの算出やCOMの性能強化によりプレイ感覚も一新
――ゲームをプレイするうえでの感覚においても“これまでとはここが違う”という要素はありますか?
さくま目的地がものすごく遠くだった場合、舞台がワールドワイドだからというのもありますが、東まわり、西まわりどちらのルートを選ぶかで、ぜんぜん違うゲーム体験ができるようになっています。
――ルートによって、発生するイベントや得られるものがだいぶ異なる?
さくまそうなります。それと本作では、目的地までの最短ルートがラインで表示されるようになっていて。これもなかなか便利な機能なんじゃないかなと思っています。
桝田ニューヨークやロンドンといった大都市ならおおよその位置はわかるけど、目的地が聞いたことのない駅だった場合、どこにあるのかを調べるだけでもひと苦労だからね。それも踏まえて「いまいる位置から目的地まで、ルートが表示されたら便利じゃん!」と。
――カーナビみたいな感じで。
桝田そうそう。そういう軽い気持ちで提案したんだけど、いざ作り出したら1マス移動するたびに新しくルートを計算し直すという、CPU的になかなか膨大な作業が発生してしまって……。こういった発言は気軽にするものじゃないね(笑)。
――このルート表示はオンオフ可能に?
さくまはい。最速でゴールを目指すかどうかは人それぞれですからね。道中で独占できる都市を探したい方もいれば、カード収集に注力したい方もいるので。そういったときはオフにしたほうがプレイしやすいので、切り換えられるようにしています。

桝田それと、実際に役に立つかどうかは別として“地球の裏側カード”も使ってみておもしろいカードだね。
 その名の通り、いまいるマスからちょうど真裏にあるマスまで移動できるカードなんだけど、地球の大半は海なので、ほとんどの場合は移動先にマスがないんだよ。でも、経度緯度を計算して、現在地の真裏はどこになるのかしっかり把握したうえで使いこなせば、一気に有利な状況に持ち込めるので、戦略を練るタイプのプレイヤーにはぜひ使ってみてほしいね。
――地理の勉強にもなりそうなおもしろいカードですね。
桝田実際に僕たちも数値を計算して、本当に日本の真裏がブラジルだったときはちょっと感動したからね。ほら、リオ五輪の閉会式で、ブラジルから土管の中を通って日本に来るっていう演出があったじゃない?
――ああ、ありましたね(笑)。
桝田あれは合ってたんだよね(笑)。ちなみに本作では敵のCOMキャラクターをかなり賢く調整しているので、こういった使い勝手の難しいカードもガンガン使ってくるよ。
――それは、最強COMのさくま鉄人が、ということですよね?
桝田まだ調整中だけど、赤鬼を始め、初心者~中級者向けのCOMとも、かなり歯ごたえのある対戦を楽しめるようになっているね。
 というのも、こうしたCOMを交えてゲームをプレイする際、弱すぎても強すぎてもおもしろみを損なうことになるので。できる限り人間に近い思考ができるキャラクターにしようと調整した結果、めちゃくちゃ強くなってしまったって感じかな。発売までにはちょうどいいバランスに仕上げておくよ。
『桃鉄』次回作も進行中!? 気になる今後の展開
――今回、さくまさんが総指揮、桝田さんが監督という肩書で協力しながら開発が進められているとのことですが、改めて桝田さんの考える“さくまあきらのすごいところ”とさくまさんの考える“桝田省治のすごいところ”を教えてもらえますか。
桝田前述の飛行機の話もそうだけど、さくまさんは発想が大胆だよね。やることは大胆なのに、検証してみると緻密。
 そんなの成り立つわけがないと思うんだけどやってみたらふつうに遊べるという。「こうすればこうなるはず」といった想定する能力がずば抜けているんだよね。400万人が遊んでくれて、浸透しているルールをいきなり変えてしまうなんてさくまさん以外には絶対にできない。
――“『桃鉄』シリーズだけど、これまでの『桃鉄』とは違う”という取り組みを、率先して行われている感じですね。
桝田僕たちがどうしたものかと思案しているときに「これが正解だ!」と方向性を示してくれたわけだからね。
 それともう1点、『桃鉄』には、さくまさんが長年にわたって継ぎ足し継ぎ足しで作り上げてきた、めちゃくちゃ細かいデータがあるんだよ。「このタイミングではこういう行動を取らせよう」とか、「手もとに残すカードの優先順位はこう変化させよう」といった、状況ごとのCOMの行動を細分化したデータが大量にあるんだけど。
――へえ。まさに“『桃鉄』制作の虎の巻”というか、それがあれば続編制作のかなり参考になりそうな。
桝田厄介なのが、さくまさん自身が「何をどこまで作り込んだのか、自分でもこのデータの正体を覚えていない」って言うんだよね。
一同 (爆笑)。
桝田弱っちゃうよな(笑)。本人にもわからないのなら僕たちで解析するしかないということで、全データを調べ直したところ、似たような表がいくつかあった。
 「間違えて同じデータを作ってしまったのかな?」と思って調べてみたところ、それは間違いでもなんでもなくて、状況にほんのわずかな差が生じた場合も想定してCOMの思考パターンが細かくまとめられていたんだよね。これには恐れ入ったね。
 よくこんなところまで想定しているなと感心したし、改めてさくまさんのすごさを思い知らされたよ。

――本作はそうした解析データをもとに制作を?
桝田いやいや。とにかく量が膨大すぎて、まだすべては解析しきれていないんだ。
 それにデータを割り出せたとしても、それらを最大限に活用できるのはやはり作り出した本人であるさくまさんだけだろうしね。解析できた範囲の中から、僕たちでも使いこなせる部分を抽出して使っている。それを開発チームでは“8割さくま”と呼んでいるんだけど。
――8割さくま!(笑)
桝田そのデータにあれこれと手を加えつつ制作しているところなんだ。プレイヤーの皆さんには、これまでの『桃鉄』シリーズと同様の感覚で遊んでもらえると思うけど、作り手側の目線で見たら、かなりいろいろなところが変わっている。
――内部的には従来より複雑なプログラムが導入されているとか?
桝田逆に、プログラムやゲームデザインはずいぶんわかりやすくなっているはずだよ。ゲーム開発の経験がある人間が見ればすぐに理解できるんじゃないかな。
――長年にわたってさくまさんが作られてきた膨大なデータを、より開発しやすい形に整理されたわけですね。さくまさんの考えられる“桝田さんのすごいところ”もお聞きしたいです。
さくまもともとすごい才能の持ち主だったけど、数年前まではかなり尖っていて。『桃鉄』をお任せするには合わない部分も多かったけど。
桝田だって『俺の屍を越えてゆけ』とか『リンダキューブ』とかだよ、俺の作ったゲームって(笑)。
さくま最近は歳のせいかずいぶんと性格も丸くなって、いい感じになってきたね(笑)。いまなら安心して、シリーズ作の監督をお任せできます。
――まだ『桃鉄ワールド』発売前に恐縮なのですが、『桃鉄』シリーズの今後の展望というのは?
岡村桝田さん主導の『桃鉄ワールド』は、ほぼほぼ形も整い、発売に向けて順調に準備を進めているところです。それと同時に、まだ詳細をお話しする段階ではありませんが、さくまさん主導の別タイトルも鋭意開発中ですので、こちらにもご期待いただけますと幸いです。

――おお、新たな『桃鉄』にも期待ですね! それでは最後に、『桃鉄ワールド』発売を楽しみにしている方へおすすめの過ごしかたを教えてください。
桝田発売日が近づくにつれ、YouTubeなどで先行プレイ動画がアップされると思うので、気になる人はそちらもチェックしてみてほしいね。実際に遊んでいるところを見てもらったほうがより正確におもしろさが伝わると思うので。
さくま『桃鉄ワールド』はとにかくマップが広大なので、いまのうちから世界地図を見て、国や都市の位置を把握しておくことをオススメします。だいたいの位置を覚えておくだけでも、ゲームプレイがかなり快適になるのでよかったら試してみてください。
――世界地図を眺めて過ごします!

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...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202308/11312160.html

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