『ヒュプノノーツ』という名作RPG(と言い切ります)をご存知でしょうか?
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このゲームは、Android向けタイトルとして2012年に登場。その後、iOS/Android両機種対応のリメイク版が2015年にリリースされました。現在は、これをベースにした再リメイク版が、Nintendo Switch、PC(Steam)にて発売中です。
※現在はスマホ版も、Switch/Steam版をベースに逆移植したバージョンへとアップデート済み。
『ヒュプノノーツ』の素晴らしい点はいくつもありますが、ひとつ挙げるなら“ひとりの人間の人生の追体験”を、ローグライクRPGのゲームデザインを活かし切って表現した点にあります。
各章ごとに発生する戦闘やイベントは、人生の“ある時期の体験”がモチーフ。幼少期ならニンジンやピーマンといった“苦手な食べ物”、学生時代では学力テスト、それ以降は“さまざまな人間関係”や“世間の声”といった具合に、“人生における困難”が敵キャラとして出現。これに立ち向かっていくという見立てにニヤリとしつつも、終盤では切なさにホロリとさせられる、ゲームならではの感動がそこにはありました。
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そんな『ヒュプノノーツ』のゲームデザインを継承した、新たな“人生の物語”が、同人・インディーゲーム展示即売会“デジゲー博2023”の石乃浦骨董店ブースで出展された『至れり尽くせリ』です。Nintendo Switch、Steam、iOS、Androidにて、2024年3月の発売が予定されています。
本作のシナリオを担当する薄倉氏もまた、『ヒュプノノーツ』に強く影響を受けたうちのひとり。新作を手掛けるにあたり、差別化を図りつつも『ヒュプノノーツ』と肩を並べるゲームにするために、『至れり尽くせリ』には“自分自身の実体験”を盛り込んだのだと言います。
2003年の東京・上野。この時期は街の歴史の中でも、とりわけ激しい狂騒に包まれた時代だったのだとか。当時の東京都知事である故・石原慎太郎氏の指揮のもとに“歌舞伎町浄化作戦”が行われ、これにより歌舞伎町にいられなくなった訳アリな人たちの一部が、上野へと流れてきたのです。
このころ上野でバーテンダーをしていた薄倉氏は、街を取り巻く変化に翻弄されることに。また、薄倉氏の記憶の片隅にはもうひとつの引っ掛かりがありました。夜な夜なバーに集まってくる“うわさ話”です。
忘れることのできない経験と、上野でまことしやかに囁かれていた都市伝説めいた“うわさ話”から着想を得たストーリーを、『ヒュプノノーツ』のものを受け継いだゲームシステムによって描くのが『至れり尽くせリ』なのです。
『至れり尽くせリ』(Steam)
ニンテンドープリペイド番号 5000円|オンラインコード版(Amazon.co.jp)
人生の“とある瞬間”が頭をよぎるリアリティは健在。有頂天パワーでパイセンをボコれ!
デジゲー博2023で試遊できたのは、導入部の物語がカットされており、序盤のゲーム部分のみを楽しめるバージョンでした。
インターフェースは基本的にSwitch/Steam版、スマホ版それぞれ『ヒュプノノーツ』と同様。各章が一本道のダンジョンとして構成されており、左端のスタート地点から右端のボス戦まで、十字キーで一歩ずつ進んで行きます。ターンが経過するごとに残り時間の数値が減少していくものの、順調に進めばゼロになることはまずないはず。
当時を象徴するアイテムとして、各種インターフェースを彩るPHS。レベルアップを通知する着メロ(!)を『ヒュプノノーツ』のものに変更することもできた。
道中では戦闘やイベントがランダムで発生。これらが“主人公の実人生”とリンクしています。最初に対峙することになった敵キャラクターは“叩き売り屋さん”。確かに、買う気もない商品を一方的にまくし立てるようにアピールしてくる存在は、決して大きな影響力はないながら、平穏な日常を乱す“敵”と言って差し支えないかもしれません。とはいえこの敵は比較的簡単に撃退できました。
序盤~中盤で厄介だった敵は“ギャル男”です。ギャル男は攻撃力こそ高くありませんが、とにかく耐久力が高く、何度攻撃してもわずかしかダメージが通りません。おまけに出現頻度がやたら高い! 筆者はひとりかわしてもまた別の方向からひとりまたひとりと声を掛けてくる、繁華街にいるキャッチたちの厄介さを思い出しました。また出た……!
これも『ヒュプノノーツ』から引き継いでいる部分ですが、本作では敵によって攻撃力に影響するパラメーターの種類が異なります。たとえば叩き売り屋さんなら“意志”の数値が高ければ簡単に倒しやすく、ギャル男なら“協調性”が高ければダメージが通りやすくなるのです。彼らを振り払うために必要とする心の持ちようやスキルを想像すれば、いずれも納得ですよね。
なお、“霊気”というパラメーターは今回プレイした範囲では活かされる機会はなく、その名称からも今後の展開で都市伝説にまつわる敵が登場した際に影響するものであることが想像できます。
敵によっては主人公をしばらく状態異常にしてくる場合も。ギャル男は主人公を貶すことで“ダサい”状態にして、“協調性”パラメーターを低くしてきます。これもギャル男の耐久力が高く感じる一因だったわけです。一方で、いずれかのパラメーターが大幅にアップする状態異常もあったりして、これを活かすことで敵を簡単に倒せたりするのが爽快です。
ほかにも強敵が多数登場。対峙している相手に有効なステータスは赤線で囲われているもの。
後半に登場した“ギャル”はギャル男と異なり耐久力は低いが、とにかく攻撃が強烈。女性からの言葉のほうが傷つきやすい男心(?)を表現しているのかもしれない。
こういった戦闘での駆け引きをさらにおもしろくするのが、アイテムの活用やレベルアップの存在。道中、自販機でお金を払って購入するなどして回復アイテムが手に入るのですが、本作ではレベルアップのたびにHPは全回復するので、使いどころに悩まされます。
もうちょっとでレベルアップするから、アイテムは温存しておくか? それとも安全策を取って使ってしまうか? 終盤に向かうにつれ出現する敵も強力になるので、安全策を選びすぎ、アイテムを使い切って打つ手なく倒される……といった状況もあり得るのが難しいところ。
どこで一息つくかが攻略のカギ。
ステータスを上昇させるアイテムもある。これは懐かしの“しゃべる鳥”。モルスァ。
倒れてしまえばスタート地点からやり直し。強敵があまり登場しない地点まで戻って、残り時間に気を付けつつ安全に経験値を稼ぐというのも戦略のうちです。ときとしてランダムイベントの発生に助けられることもあれば、ただ所持金が減って損をしてしまうことも……不測の事態を想定した行動も求められます。
このヒリつくリソース管理の駆け引きもまた、『ヒュプノノーツ』から続くゲームデザインの醍醐味と言えるでしょう。
路上で『コンドルは飛んでいく』を演奏している人たち。出会ったことはなくとも、なんとなく想像できてしまう。
自称・不忍(おそらく上野恩賜公園の中にある不忍池のこと)の主が自分を信じろと言う。ろくなことにならないのは目に見えている気がするが……?
なんとかギリギリの駆け引きを制してボス戦に突入。しかし、直前でギャルから浴びせられた暴言で“自信喪失”状態になった主人公は、“意志”のパラメーターが低下中。ボスである“夜のパイセン”に有効な一撃を与えられません。
回復アイテムも底を突き、敵の攻撃力とこちらの残りHPから考えて、勝利は絶望的……と思われたところで、パイセンの言葉により“有頂天”状態になった主人公は、“意志”が大幅に上昇。攻撃力の高まりにより、パイセンを撃退することに成功しました。ここで試遊範囲は終了。
こちらの残りHPはたったの“3”。本当にギリギリの勝利でした。
ランダム要素によって攻略に“運”が大きく絡むことを、ゲームの“中毒性”を引き上げるために用いるのが昨今のローグライク(ローグライト)系インディーゲームのトレンドと言えるでしょう。
そんな“運”に左右されるゲーム性が“人生のままならなさ”を表現するために用いられていた点に、『ヒュプノノーツ』の魅力はありました。“ちょっと昔のオトナの世界”を味わうという世界観によって受ける印象はかなり異なっていますが、『至れり尽くせリ』は間違いなくその精神を受け継ぐゲームになっています。
製品版でストーリー部分が追加されることによる、さらなる独自性のある体験にも期待が掛かるところ。ひとりのファンとして、リリースされる日が待ち遠しいです。
こちらはスマートフォン版。縦画面に最適化されたインターフェースとなっている。
『至れり尽くせリ』(Steam)
ニンテンドープリペイド番号 5000円|オンラインコード版(Amazon.co.jp)
...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202311/18324448.html