2024年1月26日にプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、Steamにて発売予定の3D対戦格闘ゲーム『鉄拳8』。大人気シリーズの最新作として注目が集まる本作の開発陣にインタビューを行った。
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先日行われたクローズドベータテスト(CBT)の反響や、シングルプレイモード、さらには新キャラクター“麗奈”や“ヴィクター”などについて伺ったので、本稿で紹介していく。
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原田勝弘(はらだ かつひろ)
鉄拳プロジェクト エグゼグティブプロデューサー
池田幸平氏(いけだ こうへい)
『鉄拳8』開発プロデューサー兼ゲームディレクター
あのころのゲームセンターが再現された“アーケードクエスト”を語る
――『鉄拳8』のシングルプレイモードを遊んでみて、本当にボリュームがすごいと思いました。とくにアーケードクエストは、対戦への導線がしっかりしていて、対戦したくなりました。
原田ストーリー、アーケードクエスト、鉄拳ボウルとボリュームはすごいよね。アーケードクエストは、ゲームセンターの体験を中心に描いているから、導線があるんですよ。現実世界に起きていることをそのまま置き換えているのがアーケードクエストです。
ゲームセンターというコミュニティーや文化は、日本でもなくなりつつあります。海外に関しては、ほぼ0です。今回、初めて家庭用から発売する『鉄拳』なので、ゲームセンターの体験をゲームの中に入れてしまおうというのが、ファイトラウンジやアーケードクエストなんです。
ゲームセンターでは、見て興味が湧いたり、友だちがやっていたから遊ぶ、勝手に教えてくれる人がいる。そういった体験をバーチャルに入れ込んであるので、そこがいい効果を生んでいるんだと思います。
池田自分を含めて、80年代後半から90年代にゲームセンターで遊んでいた人たちが開発に多くいるので、そういう人たちが体験してきたことを盛り込んでいます。Max君は教えてくれる人だし、プレイにこだわりがある人もいるし、そういった人たちが中心人物になります。
ほかのゲームセンターに遠征に行けば、そのゲームセンター独特の特色があります。プレイスタイルやセリフに反映されているなど、ゲームセンターらしい体験を味わえますよ。
――店舗自体はもちろん、観戦勢をはじめとしたゲームセンターにいる人たちの再現度が高くて驚きました。実際のゲームセンターを取材されたのでしょうか?
原田開発の中で自然と生まれていきました。そういうことを体験した人たちが作っているから、取材なんか必要ないですよ。
池田我々はあのコミュニティーが血や肉になっていますからね。おもしろかったのは、若手に「筐体から顔を出して話すんだよ」と教えたら、「そうだったんですね!」とびっくりされたんですよ。そういう形でコミュニケーションをとっていたこと自体が珍しいみたいで(笑)。
原田欲を言えば、灰皿もやりたかったですけどね……。“GONG”(プレイヤーが訪れる架空のゲームセンター)のイメージは、80年代後半から90年代くらいです。ファイトラウンジでも、アメリカやヨーロッパを意識していますが、あれは欧米の古いゲームセンターをイメージしています。カーペットの柄も、いまだとちょっとダサいですけど、あえてそうしています。日本人的には斬新ですが、海外から見たら、「そうそう。これだよね」なんですよ。
池田「よくできている!」と言われますよね。
――80年代後半から90年代以外をイメージしたゲームセンターもあるのでしょうか?
原田バリエーションはいろいろあります。
池田ビデオゲーム中心で稼動している地方のゲームセンターのような場所、ゴーストが集まる場所、『鉄拳』のサウンドが流れているクラブのような場所、プライズゲームがメインで、『鉄拳』は角においてあるような場所など、ゲームセンターと思いつくような場所の大半は実装しているので、それぞれおもしろみのあるゲームセンターになっていると思います。
――ゴーストは、キャラクター対策、有名プレイヤーとの疑似的な対戦、自分と戦えるなど、さまざまな遊び方が予想されます。開発内で、オススメの遊びかたはありますか?
池田上手なプレイヤーほど、2体、3体と多くのキャラクターを使えると思います。そこで、メインキャラクターとサブキャラクターのゴーストを作成して、対戦してみてください。そうすると、「自分はこっちのキャラクターのほうが向いているかも……?」と、キャラクター選びのひとつとして遊んでみるのもいいかもしれません。
今後、ニーズがあった場合は、“ゴーストとゴーストを戦わせて観戦する”遊びも検討します。自分の育成したキャラクターを親の目線で観るのも楽しそうですよね。
原田AIが本当によくできているので、そういった拡張性も未来がありますね。
――実装されているゴーストの中には、開発内のメンバーもいらっしゃるとか……?
池田いますよ。僕や原田、マイケル、ミシマスターは、特定の条件を満たすと登場します。それ以外にも、“ファイナルラウンド”というゴーストがたくさん登場する場所には、デザイナーやエンジニアなどが作ったデータが入っています。
ゴーストは宝箱を持っていますし、さまざまなコンセプトの個体がいるので、強さはバラバラです。スペシャルスタイルでも勝てるような調整にしているので、初心者の方にもぜひ挑戦していただきたいですね。
原田ゴーストとガチ対戦がしたいときは、上手なプレイヤーのゴーストと戦ってみてください。プロゲーマーのゴーストは人気が出るだろうなあ。
池田CBTの時ですら、有名プレイヤーのまわりにはゴーストと対戦している光景が広がっていましたね。グループマッチの筐体に人だかりができていたり。
原田昔のGAME SPOT21みたいになっていましたね。行列ができていて、みんな並ぶんですよね。本当にバーチャルのゲームセンターの光景でした。
池田直接対決できなくても、ゴーストはプロフィールからダウンロードできるので、待たなくてもいいんですよね。僕はCBTのときに、強そうなパキスタン勢のゴーストと対戦して、強そうな韓国勢のゴーストと対戦して、みたいな遊びをしていました。地域の特徴が出ていておもしろかったです。
――初心者の方だと、対戦に挑むこと自体が怖い、申し訳ない、といった意見も聞きますが、ゴーストなら関係がなさそうですね。
原田そうなんです。ゴーストはすべてを解決してくれます。絶対、ゴーストばっかり対戦する人も出てくると思いますよ(笑)。
客層が変わった? 新キャラクター“ヴィクター”と“麗奈”について聞いてみた
新キャラのヴィクター(左)と麗奈(右)。
――新キャラクター“ヴィクター・シュヴァリエ”と“麗奈”の特徴について教えてください。
原田まずは“ヴィクター”から。フランス人のキャラクターは、じつは『鉄拳』初なんです。フランス語をしゃべるキャラクターはいましたが、フランス出身のキャラクターはいませんでした。フランス人の俳優であるヴァンサン・カッセルみたいなキャラクターを作ろうとしたら、声優さんが本当にヴァンサン・カッセルになりました。
池田いただいた見た目の希望が、「ヴァンサン・カッセルみたいなの」だったんですよ。もうちょっとなんかないのって(笑)。そこから、渋いイケオジを作ろうと派生していきました。ストーリーにも絡むレイヴンの上官なので、スーツスタイルでピシッと決まった、おしゃれでダンディな紳士、という見た目に出来上がりました。
いろんな武器を使う特徴もあります。カラミットナイフという武器を使って、しっかりとした軍隊格闘術に基づいて、本格的なキャプチャーを行っています。加えて、SF的なガジェットも持っていて、フラッシュライトだったり、“タケミカヅチ”という剣を使ったり、いろいろなキーワードを盛り込んで出来上がったのが“ヴィクター”です。スーパースパイ式CQBというふざけた戦闘スタイルが、すんなり受け入れられましたね。
原田世界中の人に、馬鹿にされるくらいでいいかな、と思っていたら、みんな「かっこいい!」と言ってくれたんです。開発的には、少し驚きました。ただ、動き自体は本格的な近接戦闘で、銃を近接で使用する時、ナイフを使用する時の動きなど、専門家の人に教えてもらいつつ、アニメーションキャプチャーをして、それをアレンジしています。
――どうして近接戦闘だけではなく、さまざまなガジェットを使用するようにしたのでしょうか?
原田現場の人たちに、どうしてもガジェットを使ってやりたい、と。
池田レイヴンもマスターレイヴンも、忍術を使うじゃないですか。ならば、その上官ならもっと上を行きたい、いろんな要素を入れたい、と思ったんです。ユーザーからは、「ジョン・ウィックやキングスマンみたいにかっこいい」と褒めていただいています。結果、うまくハマったかなと思います。
原田カーネル・サンダースと言っている人もいましたね。
一同 (笑)。
池田日本だと高田純次とも言われていました。
原田見ている人によって見えかたが違うんだな、と。驚きだったのは、『鉄拳』はリアルな格闘技をやっているので、あまりにSFっぽいと、ファンは拒否反応を起こすんじゃないかな……? と思っていたら、『鉄拳』が好きな人ほど、かっこいいと言っていただいています。そこは意外でした。
池田古くから『鉄拳』をやっている人ほど、新キャラクター3人の中だと、ヴィクターをほめていただくことが多いです。
原田『鉄拳』をあまり触っていない人の反応は、「『鉄拳』ってこうだったっけ?」という感じなのですが、いまでも『鉄拳』を遊んでいる人は、「早く触りたい」、「メインキャラが決まった」と言っています。わからないもんだな、と。昔はこの想像は当たっていたんですが、最近は読み切れないですね。
――個人的に、『鉄拳7』で“豪鬼”や“ノクティス・ルシス・チェラム”が登場したので、そういった先入観はなくなった気がします。
原田そうか、あれでみんな価値観が変わったのか! なるほど……。
――麗奈についてはいかがでしょうか。
池田最初のキーワードは、“ミステリアス”や“二面性”でした。
原田珍しく、ストーリー的に必要で生まれたキャラクターなんですよ。ヴィクターは、フランス人を作りたいという思いで作ったキャラクターでしたが、麗奈は物語に必要だから作ったキャラクターです。デザインは『ベヨネッタ』のキャラクターデザイナーである島崎麻里さんにお願いしました。
池田年齢的にも若くしたい、二面性があるから2色を使いたい、ファッショナブルだけどどこかミステリアスにしたい、とお願いしたら、あのデザインがあがってきました。本当に素晴らしいデザインだと思います。ぱっと見、ファッショナブルな人が着てそうなデザインになっていて、格闘ゲームにしてはどうかな、という服を着ています。
原田『鉄拳』にしては珍しい、一般にいてもおかしくないくらいのデザインですよね。僕的には、シルエットが特徴的ではないので、すごく心配でした。もうちょっと特徴を付けたほうがいいんじゃないのか、と。結果的には大ウケしており、読み切れないですね……(笑)。
池田客層は変わってきていて、時代の流れ的に受け入れられているんですよね。
原田麗奈はヴィクターとは対照的に、『鉄拳』の外側にいる層、ちょっと興味があるくらいのユーザーに刺さっています。
池田SNSでのイラストの投稿も多くて、『鉄拳6』以来、久しぶりに『鉄拳』のキャラクターを描きましたという人もいました。
原田二面性、と言っていますが、トレーラーだとほぼ一面性しか映していないんですよ。ストーリーをプレイしていただくと、二面性が見えておもしろいキャラクターになっています。僕としては、ストーリーモードを遊ぶとファンが増えると思うから、見た目のシルエットは尖らせたいけど……まぁこれくらいでいいか、と、OKラインを妥協したんです。結果的に、すごく受けていてびっくりしました。
――確かに、ストーリーモードをプレイさせていただきましたが、そのときの二面性には驚かされました。
原田PVと印象は違いますよね。ストーリーを遊んだあとなら、魅力はわかってもらえると思いますが、1分30秒くらいのトレーラーでも魅力が伝わるものなんだと思いましたね。デキがよかったのもありますけど。
池田トレーラーに入れる内容はかなり厳選して、こういうところが見たいだろう、麗奈の魅力はここだろう、と凝縮して入れたら、結果的に喜んでもらえたのでよかったです。
原田『鉄拳』には珍しかったのかもしれないですね。みんな歳をとっていて悪い女ばかりですからね。ニーナも戸籍上はとんでもない年寄りですからね。
――先ほどのお話を聞いて、ターゲット層が変わっている印象を受けます。
原田変わっています。いい意味で、世代交代に成功したシリーズで。『鉄拳7』はかなり売れていますが、支えてくださっている層は、『鉄拳5』や『鉄拳6』がメインだった人たちが多いです。プロゲーマーのノビくんですら、昔の『鉄拳』の話は知らないくらいですから。そのノビくんですら、いまやベテランおじさん扱いですよ(笑)。
お父さんが買っていたから、自分も買ったという人は多いです。何せビデオゲームの歴史上もっとも長く続いているストーリーというギネス記録がありますから。
格ゲーチャンネルでは、注目の新キャラクター麗奈のカスタマイズ動画をアップしている。今後も『鉄拳8』の動画をアップしていくので、ぜひチャンネル登録してほしい。
キャラクターはギリギリのラインで作った最大限の数に
――キャラクター数について、ローンチ時点では32体が登場しますが、どういった理由でこの数になったのでしょうか?
原田いろいろな事情がありますが、大きいところはアーケードからスタートしていないところがですね。いままでは、アーケードで初めて、アップデートをかけてキャラクターが増え、家庭用でさらに増えるという流れがありました。ですので、家庭用から購入している人からしたら、ボリュームがあるのが当然ですよね。でも、開発としては、ゲームエンジンも新しくして完全新規で作り直しているので、キャラクターは20体以下、18体くらいで始めたいのが本音でした(笑)。
しかし、『鉄拳』はボリュームを期待されている面もありますので、32体以上出したいくらいの熱量があります。32体という数は、締め切りに間に合うギリギリのラインで作った最大限の数になります。
開発費の内訳セミナーを開きたいくらいですよ。いかに『鉄拳』のローンチで32体揃っているということがすごいことか、本当は3時間くらい語りたいくらいです(笑)。
――3D格闘ゲームのローンチで32体のキャラクターは、とんでもないキャラクター数ですよね。
原田そうなんです。しかも『鉄拳』は、格闘ゲーム史上もっとも技数が多いゲームとしてギネス記録を持っています。もともとの動きもそうですし、キャラクターカスタマイズも、キャラクター1体にかかっているコストが段違いです。
これは自信を持って言えますが、格闘ゲーム業界だと、1キャラクターに対するコストは群を抜いてナンバーワンだと思っています。他社さんが聞いたら驚くと思いますよ。
池田ほかにも、キャラクターエピソードもありますからね。
原田そうそう。1体作るのに付随してかかるコストは全体の開発費もそうですが、「そんなにお金をかけて格闘ゲームを作るのは信じられない」と言うと思います。
――そこまでのコストをかけられるのは、『鉄拳7』が1000万本以上売れたからなのでしょうか?
原田もちろんそれはあります。それだけではなくて、売れ続けているからできることですね。売る側としてのマーケティング、セールスもいて、その人たちが「売れる」と判断しているから投資できるわけです。0から始めるシリーズだとふつうは通りません。
――プレイヤー視点の話になってしまいますが、32体のキャラクターを対策しようとしたときに、トップ層のプレイヤーたち以外はすごく苦労すると思います。こちらに対しては、どう手ほどきをしていますか?
原田そこは僕も心配しました。ただ、ディレクターを筆頭に現場のチームがかなりがんばっていて、“スペシャルスタイル”を始め、使う技や起点となる技をフォーカスして、システム的にサポートしているんです。“ヒートシステム”にメインとなる技を入れ込むことで、自然と戦いを構成できるようにするなど、戦いかたがわからないプレイヤーを誘導しています。
いままでは、何を起点に戦えばいいのか、どの技を振ればいいのかは、各キャラクターの上級者たちに、動画や配信などで聞かなければいけませんでした。「この技を中心に戦うのがいいですよ」というものをシステムに落とし込んだことが大きいポイントです。
池田ヒート発動技もそうですし、ヒート中に起こせるキャラクターごとの固有スキルみたいなものがあって、それを中心に戦うことで、キャラクターの個性が引き立ちます。システム的にそういう方向を目指しています。
ほかにも、ゴーストの再現性によって練習がしやすくなる、リプレイがそのまま対策につながるように、リプレイ中でも確定反撃の練習やコンボチャレンジができるので、ゲームサイクルの中で、対戦以外で自然と対策スキルが身につく作りになっています。それらを導入することで、一気に32体のキャラクターを出せるようになりました。
原田『鉄拳』を遊んでいるプレイヤーならある程度はわかってもらえると思いますが、1キャラクターを極めると、ほかのキャラクターも似た攻略で操作できるようになっているんです。身に着けるまでは難しいかもしれませんが、技が多いように見えて、セオリーを覚えてしまうと、使えるキャラクターの幅は広がると思います。
池田プラクティスでも、ゲーム内のサポートでかなり身につきやすくなっていると思います。
原田今回のサポートは手厚いですよ。
池田32体のキャラクターを実装するには、ご想像の通り簡単ではありませんでしたが、上達するための術は、ゲーム内でフォローしています。
――リプレイに入り込める機能は、発明だと思います。リプレイ中にオススメコンボの表示もされる機能があるのですが、状況によって、壁を使ったコンボなどは表示されることはあるのでしょうか?
池田いまは、そこまではサポートできていませんが、将来的に手を加えたいと考えています。壁に当たった時の状況もひとつではないので、すべてに対応しようとすると、正解を出すのが非常に困難です。そこが難しい分、リプレイに介入して、自分で試してみて、「この壁の状況だったら、このコンボが入るんじゃないか」と、面倒な操作を必要とせず練習できるようになっています。
原田試合中で稀に起こる限定のシチュエーションでも、何度も練習できます。
池田コンボのやり直し、反撃手段を試す、横移動での回避が可能かどうか。10秒間だけですが、「あの時こうしていたら……」の未来を遊べるのがおもしろい機能です。
原田人生もそうだったらいいんだけどね(笑)。
池田どっちにしても結末は同じになりますけど(笑)。
原田でも、これだけすごい機能でも、そこの機能に到達しない人だって数多くいるわけです。それすらも、アーケードクエストでサポートを行っています。
池田Max君に話しかけると、リプレイへの導線もあるので、とりあえずMax君に話しかけてみてください。自然といろいろな機能を使いこなせるようになりますよ。彼は『鉄拳』が好きで『鉄拳』を広めたい人ですから。
アーケードクエストに登場するMax君。鉄拳博士を自称しており、プレイヤーにアドバイスをくれる頼もしい存在だ。
――『鉄拳7』でプラクティスが拡張された時のように、拡張性も期待できる要素ですね。
原田『鉄拳7』は、ファンの要望でいろいろな機能を後付けで実装しました。僕らでもその未来は想像できていなくて、こんなことなら最初から実装すればよかったと思ったほどたいへんだったんです。ですから『鉄拳8』は、後先考えずに詰め込みました。そしてこれからは、ユーザーからのフィードバックを見ながら、変えるところ、増やすところなどに対応していくことになると思います。たとえば、「ファイトラウンジにこういった要素を追加してほしい」という意見が多ければ、具体的に検討する予定です。
池田ゴーストについても、さまざまなコンテンツの追加は考えていきたいですね。
原田追加プレイアブルキャラクターを含め、コンテンツは増えていくので、「やることがなくなった」とならないように、がんばりたいところです。いただいた要望には柔軟に対応するつもりです。
新たなランクマッチシステムは“公平性を保つため”。今後の『鉄拳8』とは?
――2本先取になったCBTのランクマッチのシステムについては賛否両論あったと思います。なぜ2本先取に固定したのでしょうか?
池田ランクマッチシステムの公平性を保つためです。『鉄拳7』と同じ仕様にしてしまうと、段位が上がるまで対戦し続けないと「逃げた」と言われてしまう。そういう一面があるので、2本先取でシンプルに白黒をつけてつぎに行く、というのが公平なんじゃないかと思って2本先取にしました。
原田自由度が高いと、暗黙の了解でいろいろ生まれてしまうんです。それに苦しんでいる人たちもいるんですよ。
池田もう一方では、マッチングのバランスがよくなります。再戦を無制限にすると、どうしても段位の高い人が先細りで固まってしまって、マッチングしない状況に陥りやすくなります。
原田今回の仕様は、マッチングしやすくなりますから、総じていいことだらけですよ。
池田わからなかった連係、いわゆる“わからん殺し”で2本取られてしまって、対策しきれなかった試合でも、リプレイ機能やゴーストを使って対策できますし、お互い上達すれば、そういった“わからん殺し”にはなりにくいと思います。
――プレイヤーマッチは、試合数に制限はありますか?
池田プレイヤーマッチには、制限を設けていないので、好きなだけ再戦できるようになっています。
――バーチャルなゲームセンターを通じて、オンライン上のコミュニティーが増える気がしています。その中で“ギルド”や“クラン”のようなプレイヤーどうしが連盟を組む機能は実装される予定はありますか?
原田ファイトラウンジで集まって遊ぶ、ということが、コミュニケーションの受け皿になっている一面もあります。仲間を見つけたり、仲間と遊ぶ場所は、ファイトラウンジを活用してほしいですね。
池田じつは、開発内でも議論はありましたが、昨今だとDiscordなどの外部のツールでコミュニケーションが保管できている部分が強いんです。ゲーム内でギルドやクランのようなものを作ってしまうと、それを使って何かをする目的を用意する必要があるんです。現時点ではそういう方向性ではなく、より幅広い人が楽しめるゲームを目指しているので、バーチャルのゲームセンターを楽しんでほしいですね。
原田最初からあると、阻害する要素でもあるんです。たとえば、ギルドやクランがあるなら、入らなければ楽しめないのでは、と思われてしまう可能性もあります。それなら、ゲームセンターに近い環境を用意しているので、そこを楽しんでもらえたらと思います。
――以前、イラストや音楽などの二次創作にも目を向けるとお聞きしましたが、どういったことをやられる予定でしょうか?
池田公式世界大会“鉄拳ワールドツアー”ですと、SNS上でハッシュタグをつけたファンアートを紹介するなど、ユーザーのみなさんといっしょに『鉄拳』を盛り上げてきました。また、その流れで人気のファンアートを描くイラストレーターの方に、ゲーム内のキャラクターパネルを描いていただくということをやっていましたが、『鉄拳8』でもそういった試みは続けたいですね。
音楽についても、『鉄拳』のサウンドチームを集めて、サウンドイベントも開催しました。2024年は『鉄拳』シリーズ30周年でもありますので、その一環としてイラストや音楽など、いろいろな趣味趣向の人が、『鉄拳』を通じて交流したり、盛り上げる場は設けるつもりです。
――『鉄拳7』のキャラクターパネルは、プレイヤー視点でもうれしい機能でした。反応はいかがでしたか?
池田よかったですよ。プレイヤーはモノが増えてうれしいし、イラストレーターの方も、ゲーム内に実装されるのはうれしいと言っていただいています。
原田自分の描いた絵がゲーム内で見られるのは、感動するみたいです。使ってくれると、よりうれしいですよね。
――ゲーム内に初心者に向けたさまざまな導線があることは素晴らしいと思います。そう考えると、つぎは実際にゲームに触れるまでの導線が大切かと思いますが、どういったプロモーションを仕掛けていくのでしょうか?
原田いまはまだ言えないですが、当然いろいろやっていくので楽しみにしていてください。
――難しい問題だと思いますが、より多くの人に実際にゲームに触れてもらうためには何が必要だと思いますか?
原田これは永遠のテーマではありますが、作品を認知していただくところから始まると思います。最近の例では、麗奈は『鉄拳』の購入層から離れた人にまで情報が届いていて、それをきっかけに『鉄拳8』の発売日を知った人もいるくらいです。
今回は初心者に向けた導線を作っているので、『鉄拳』を知っている層からすると至れり尽くせりだと感じますが、初心者からすると、そんなことを言われてもわからないものはわかりません。もちろん、そういうアプローチも必要ですが、それ以上に作品を認知してもらうことが、最初のステップとして重要だと思います。そのために魅力的なイラストや音楽、PVだったりと、さまざまなフックを用意しています。
池田ランクマッチで対戦するのは、そもそもエンドコンテンツなんですよね。その手前でいかに魅力的なコンテンツを用意して、それを認知してもらえるか。『鉄拳8』では、それらを積極的に行っていきたいと思います。
原田そもそも、プラクティスの機能に注目して褒めてくれるようなプレイヤーは、ソフトを発売日に購入してくれるんですよ。
池田麗奈の件でもそうですが、かっこいいから知る、流行っているから知る、認知とはそういうものだと思います。
原田『鉄拳』をよく知らないけどSNSで話題になっていた麗奈がかっこよくて調べてみたら、新作はどうやら初心者に手厚いらしいな、と知ってくれる人もいるんです。
池田いろいろな仕掛けを用意して、口コミや流行りなど、どれだけきっかけを用意して、尖らせていくか、という感じですよね。
原田『鉄拳』シリーズはヨーロッパでとくに人気なのですが、シリーズ初期のころはSONYがパブリッシングしていたので、「SONYは知っている」、「SONYの格闘ゲームならすごいだろう」と、初めて手に取っていただいた理由はそういう浅いところからなんですよね。あとでナムコのゲームと知った人は多いはずですよ(笑)。
一般の人に認知してもらうという意味では、ゲームセンターの効果も大きかったんですよ。街に出れば目に入るし、生活の導線にゲームセンターがあって、100円で体験できると考えると、とてもいいシステムだったんです。つねに街中に広告を出しているみたいなもので、友だちがやっているからとか、息子がやってるからといった理由で『鉄拳』を知ってもらえたんですよね。ゲームセンターが生活の導線にない昨今では、それがSNSだったり、YouTubeなどがきっかけになってきているのかなと。
ですから、そういうところから初めて『鉄拳』を知ったという方も、安心してプレイできる手厚いサポートを用意していますので、ぜひ購入していただきたいですね。
格ゲーチャンネルでは、ストーリーモードの冒頭映像を公開しているので、こちらも併せてチェックしてほしい。
...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202312/12326546.html