【本ページはプロモーションが含まれています】

PlayStation

【ネタバレあり】『スターオーシャン セカンドストーリー R』開発者インタビュー。現代風の遊びやすさをプラスしながら『SO2』の魅力を継承。マップには裏設定も隠されている!? | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

詳細はこちら

ブログランキングに投票お願いいたします。

 1998年7月30日にエニックス(当時)から初代プレイステーション(PS)で発売された『スターオーシャン セカンドストーリー』。シリーズの中でも屈指の名作と称される同作のフルリメイク作品として、『スターオーシャン セカンドストーリー R』(以下、『SO2R』)が2023年11月2日にスクウェア・エニックスより発売された。

広告

 オリジナル版の魅力はそのままに、2Dと3Dが融合した美麗なグラフィック、テンポ感が増したバトル、ファストトラベルや釣りなどの新要素と、大きく進化を遂げた『SO2R』。Steamのレビューでは“圧倒的に好評”(96%以上のレビューで好評)を獲得。原作ファンはもちろん、初めて『スターオーシャン』シリーズに触れるユーザーからも多くの支持を集めている。

Switch『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』の購入はこちら(Amazon.co.jp)

PS5『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』の購入はこちら(Amazon.co.jp)

PS4『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』の購入はこちら(Amazon.co.jp)

 本記事ではそんな本作を手掛けた開発陣へのインタビューをお届け。二度目のリメイクとなる『SO2R』の制作秘話をはじめ、アートやキャラクターイラストのこだわりなどを伺った。なお、インタビューでは若干のネタバレも含まれているが、物語の核心には触れていないので、未プレイの人でも読み進められる内容となっている。すでにプレイ済みの人はもちろん、まだ『SO2R』を遊んでいない人もぜひチェックしてほしい。
※記事内では『スターオーシャン』を『SO』、『スターオーシャン セカンドストーリー』を『SO2』と表記しています。

小牧 恵氏

『スターオーシャン セカンドストーリー R』プロデューサー。スクウェア・エニックスに在籍。文中は小牧。

北尾 雄一郎氏

『スターオーシャン セカンドストーリー R』開発プロデューサー兼ディレクター。ジェムドロップに在籍。文中は北尾。

増田 幸紀氏

『スターオーシャン セカンドストーリー R』アートディレクター。ジェムドロップに在籍。文中は増田。

梶本 ユキヒロ氏

『スターオーシャン セカンドストーリー R』キャラクターイラストを担当。スクウェア・エニックスに在籍。文中は梶本。

『SO2』の魅力はそのままに、現代風の遊びやすさをプラス
――発売から約1ヵ月が経ちましたが、反響はいかがですか?
小牧皆さんから多くのご好評の声をいただいていて、感謝の気持ちでいっぱいです。またSNS上でのゲームの感想や『SO』を遊んだ当時のエピソード、多くのファンアートなども、ありがたく拝読しています。個別にご返事はできないのですが、遊んでくださった方々に感謝の気持ちを伝えたいです。
北尾我々は自信なく作っていたわけではないですが、想定以上の好評のお声をいただいて素直にうれしいです。開発者としては「なぜここまで賞賛されたのか」、「どこがウケたか」を細かく調べて、次の経験に活かしたいです。
 ポジティブな意見が多かったのは、PS版やPSP版を遊ばれた皆さんの記憶が鮮明だったということも大きいのかなと。このあたりはプロモーションやマーケティングがすべてでもないですし、開発者のパッションも需要だと思いますので、調査は調査、情熱は情熱として、どちらも大切にしたいと思います。
――梶本さんはファンアートなどを拝見されていかがですか?
梶本すべてではないのですが、SNS上で手の届く範囲のファンアートは拝見させていただいております。反応してもらえた人、してもらえなかった人とで差が出てしまうので、投稿してくださった方への反応は過度にしないようにしています。「うれしい」という気持ちで反射的に動きそうになることもありますが、できるだけ傍観する立場で喜ばせていただいています。
――『SO2』は2008年にPSP版が発売され、『SO2R』は二度目のリメイクとなります。実際にプレイしてみてすごく遊びやすくなったなと感じたのですが、制作される際に意識したポイントなどはありますか?
小牧『SO2』は原作がすごく優れた作品で、いまでもファンの方も多くいらっしゃるタイトルです。その原作とファンの方に対してどう応えようかというのは、企画の初期のころから開発チームでもすごく気にかけていました。
 それに加えて、いまのRPG作品として“あって当然”という要素は全部入れようと思っていました。“『SO2』としての魅力の根幹の部分は何か”、“それを現代に出すために何が必要なのか”というふたつを大きな軸にして、北尾さんと開発スタッフの方々で話し合ってもらいながら作っていただいたという形ですね。
 もちろん、PSP版もその当時でやるべきことをやって発売されているはずで、だからこそ我々は我々でいまのユーザーにどう届けるべきかを考えていきました。開発初期のころは、目指す方針をどうやって具体的な実装にするか、北尾さんと話し合う時間が多かったですね。
――当時『SO2』を遊んでいた人たちだけではなく、いまのゲームを遊ぶ人に向けて違和感なく遊べるように作られていったんですね。
小牧はい。本作は移植ではなくリメイクです。ですので、最低限”新しい楽しさ”の部分を用意していないと昔とまったく同じ体験になってしまいます。根柢の『SO2』の魅力の軸はずらさないようにしつつ、バトルやシステムで新要素を入れ込むというところは、私と北尾さんで方針を出しつつ、開発チームが非常にこだわりを持って作ってくれました。
北尾実際、PSP版はPS版から10年後で、小牧さんがおっしゃった通り「10年後に作ったらこうなるよね」という作りになっています。『SO2R』はPSP版から約15年後、PS版から25年後、四半世紀が経つわけで、当時10代~20代だった方々がいまでは30代~40代になります。お子さんがいらっしゃる方もいますし、少年少女時代と違ってゲームにかけられる時間があまりないという方もいらっしゃいます。
 そういった方々が、当時の記憶のまま楽しい部分を体験していただくにはどうすればいいのだろうというのは、そもそもの『SO2』の魅力を見直しながら詰めていきました。併せて初めて『SO』シリーズや『SO2』に触れる方にも向けての見直しも含めです。
 これはたとえ話ですが、コップの上に表面張力ひたひたの状態でできているのが原作で、そこからどの要素を足して、削るのかは、開発スタッフみんなが苦労したと思いますし、うまくいった部分だなと思います。イラストやイベントシーンの立ち絵演出も梶本さんともそこまで綿密に打ち合わせをしたわけではないですが、うまくいきましたよね。
増田本格的に打ち合わせをしたのは最初のクロードとレナのキャライラストのときぐらいで、後半はほぼお任せした感じでしたね。梶本さんだったら大丈夫かなと(笑)。

――梶本さんと増田さんは顔見知りだったのですか?
梶本北尾さんもそうなのですが、増田さんと僕は元トライエースなんです。北尾さんがプロデューサーのプロジェクトに制作スタッフとして入ったこともありました。増田さんとはとくに縁が近くて、席が隣だったんですよ。
――そんなに近いところとは(笑)。
梶本僕がトライエースに入社してしばらくしてから、社内に特殊なスタッフが集められる部署ができたんですよ。その部署にアサインされて席替えをしたときに、先輩の増田さんがいらっしゃって、そこからしばらく増田さんの隣で仕事をしていました。僕は絵しか描けないからその部署に異動したのですが、増田さんはなんでもできるアートの人みたいな感じで、ずっと隣で勉強させていただきましたね。
増田いえ、僕は梶本さんほど絵が描けないので……(笑)。
梶本いやいや、ご謙遜を(笑)。
小牧少し補足すると、今回梶本さんには開発チームといっしょにイベントの演出方法の検討や、実際のイラスト素材の制作まで、幅広く関わっていただきました。単に発注を受けてキャラクターを描いていただけではないですよ、ということをお伝えしたいです。
梶本イベントの表情は僕からも積極的に提案させていただきました。またイラストの絵柄に関しては小牧さんから「梶本さんが納得する形の絵を描いてほしい」というオーダーがありましたので恐縮ながら自己解釈を多めに描いています。ただ25年前の作品のキャラクターを新たに描き起こすので、関係者の方々からいただいた意見も適時参考にしています。
ただ便利にするのではなく『SO2』らしさも継承
――本作ではSP、BPまわりや、PA(プライベートアクション)発生場所がひと目でわかるようになっているなど、システム面がすごくわかりやすくなっているなという印象を受けました。これは先ほどのお話にもあったように、いまゲームをプレイする人を意識してのことだったのでしょうか?
北尾もともと要素が多いゲームで、『SO2』としての体験・魅力と思う部分を削らずに、さらにユーザーを楽しませるにはどうすればいいんだろうと話し合った結果、いまのような形になっています。たとえば、PAが発生しているかが確認しやすくなっていたり、ファストトラベルで移動が楽になっていたりと、遊びやすさをプラスした感じですね。どうすればいまの時代の体験として気持ちよく遊べるかという部分はすごく悩みましたね。
 ゲームは便利すぎてもダメなんです。ゲーム内に検索機能を入れて、ボスの倒しかたを調べられるようになっていても楽しくないわけですよ。
――確かに、それだと作業的に感じてしまうかもしれません。
北尾自分で攻略方法を見つけてこそ楽しいわけで、便利すぎるとプレイ体験から得られる感動や達成感が薄れてしまいます。本作でもそのバランスには気を付けていて、便利な機能を使ってサクサクとゲームを進めることもできますし、あえて遠回りをしながらじっくりと遊ぶこともできるような作りになっています。
――本作にはいろいろな要素が用意されていますが、自然とそれを身につけながら遊べるバランスがすごく絶妙だなと。
小牧システムまわりでいうと、街中でのPAモードの切り替えに関しては、最初、僕は反対していたんですよ。フラグ管理がとてもたいへんになるので、QA(品質管理。デバッグのためにゲーム動作をテストする作業)で引っ掛かるだろうなと。ただ、開発チームと話し合って、ここはあえて切り替えのあるPAモードのシステムを残すことにしたんです。
――何故残すことにしたのでしょうか?
小牧たとえば、街に入ったときにクエストが配置されていて、そこからサイドクエストが楽しめるというゲームは、いまはたくさんあると思います。PAをクエストのように配置して遊びやすさは向上させることもできましたが、それだと「『SO2』ではないよね」という話になったんです。便利さをどれぐらい入れるか、プレイ体験としての『SO2』をどこまで残すかというバランスを考えた結果、いまの切り替えのシステムになったという経緯があります。

――ただ便利にするのではなく、『SO2』らしさも残したかったと。
小牧そうですね。ただ、スキルまわりのシステムのように、オリジナル版から変更を加えたものもあります。スキルシステムは、オリジナル版だと新しい街を訪れて、スキルを購入して開放していくという仕組みでしたが、今回はすべてのスキルが最初から開放されている形になっています。これは当時の体験を壊すことにもなるのですが、若手のゲームデザイナーから「自由なキャラクタービルドができるから」と提案をいただいて、実際にプレイして検証を重ねていまの形に落ち着いています。
 このように、じつはいろいろなチャレンジをしていて、僕たちとしても不安だった部分があったのですが、実際に遊んでくださったユーザーの皆さんから好評の声をいただいて、よかったなと……(笑)。便利さに振りすぎると『SO2』としての特色がなくなってしまう。そのラインがどこなのかはすごく悩みましたね。
――明確な答えがないぶん、難しいところですよね。
小牧そこはQAチームと我々でくり返しテストプレイをして、ラインはここだねと決めるしかない。社内でテストプレイをしてもらうと「これはいまのゲームとしてはちょっと……」みたいな意見も当然上がってくるんですけど、そういうことがあるたび 「それなくしていいんだっけ?」、「『SO2』の体験ってそれでいいんだっけ?」 という感じで振り返りながら、地味にバランス取りを進めていきました。
――名作のリメイクとなるとプレッシャーも大きいですよね。
小牧企画がスタートした段階から「ファンの皆さんの記憶を大事にしよう」という方針を決めていて、その方向に向いていなければこのゲームは受け入れられないなと思っていました。それに加えて、『SO』シリーズを遊んだことがない新しいユーザーの方々にも遊んでほしいという、2段階のハードルがあったので、そこはたいへんでしたね。
――『SO2R』ではオリジナル版からの機能だけでなく、釣りやレイドエネミーといった新要素も追加されています。新たな要素はすんなりと実装が決まったのでしょうか?
小牧フィールドの新要素については今回のビジュアルで作ったマップが非常にいいものだったので、ストーリーを追う以外でも歩き回る理由を作ってくださいと私からお願いして作ってもらいました。釣りはその中のアイデアのひとつで、いまの形に落ち着くまで、北尾さんと何度もやり取りをしましたね。
――ぜひ実装にいたるまでの経緯を聞かせてください。
北尾最初に「釣りを入れましょう」と提案したのは僕でした。開発初期の頃にワールドマップを作り始めて、ドットで表現されるキャラクターが遠くまで見える広大なワールドマップを歩く姿を見て、おもしろいものができそうだなと。プレイヤーの皆さんもいろいろな場所を探索したくなるだろうなと思っていて、そこで世界各地で釣りができるようにしてはどうかと提案させていただきました。
小牧最初に開発チームが作ってくれた釣りのゲームは、いろいろな要素が盛り込まれていて、すごくおもしろいゲームだったんです。釣り単体でおもしろいのはいいことでもあるのですが、遊び応えがありすぎるとプレイしていて疲れてしまいます。それだとフィールドを歩き回ってほしいという本来の目的と違うところに流れつくなと思ったので、「もう少し軽いものに」と何度かやり取りをさせていただいて、いまの形に落ち着きました。
北尾僕も最初はライトに楽しめる釣りを目指していたのですが、若手のスタッフがこだわりを持って仕様モリモリの釣りを作ってきて……(苦笑)。それはそれでありがたいのですが、釣りを遊ぶ人もいれば、遊ばないひともいるわけで、ゲーム全体のバランスを見たときに釣りだけ要素として突出してはいけないなと。

――いまの形に落ち着くまでに紆余曲折があったのですね。
北尾そうですね。それに加えて、どこで釣りができるかは結構悩みましたね。「この魚がここで釣れるのはおかしくない?」とか、いろいろとありまして……(苦笑)。
増田僕を含め、仕様については企画とプログラマー、アートのチームは混沌としていました(笑)。
北尾たとえば、ホテルのロビーの噴水で魚が釣れるのは、ゲームの体験としてはすごくおもしろいのですが、アートチームもこだわりを持ってマップを作っているので、「そこで水しぶきがあがる絵面が合わない」、「ここでこの魚が釣れるのはおかしい」とか、いろいろな意見が出ましたね。
増田絵的には苦しい見た目にはなるけど、体験としてはおもしろい……という葛藤はありましたね。
小牧宇宙や砂の上とかでも釣れるようにしてほしいとわがままを言ったのは僕ですね。ごめんなさい……(笑)。
北尾絵を作っているスタッフの中には、自分の作った絵が壊れていく点に葛藤を覚える者も少なくないので、そのバランスを取るのは難しかったですね。
――釣りの要素ひとつ取ってもそんなせめぎ合いがあったのですね。どこまでできるかということだと、序盤から最強クラスの武器“エターナルスフィア”が作れたり、玉手箱から強力な装備が手に入ったりしますけど、そこに手を加えようという案はありましたか?
小牧そこは北尾さんとも深く話し合ったことがないのですが、自然と「それがなくなってしまうと『SO2』ではないよね」という共通認識があったと思います。
北尾アイテムクリエイションは、いい意味でゲームを壊す要素じゃないですか。序盤から玉手箱で強力な装備を手に入れてゲームを進めるのも『SO2』の楽しみのひとつだと思っていて。小牧さんとは細かいすり合わせはしていないものの、その要素をなくしてはいけない、オリジナル版のまま持ってこなくてはいけないという共通認識は、自然とあったかなと。逆に“用心棒”みたいに、ユーザーが気づいたら「こんな遊びもできるかも?」という要素を追加したりして。
 唯一議論になったのは、体験版でどこまで出すかということですね。そういった遊びを残したほうがいいという思いは根本的にありましたが、体験版ではどこまで制限するかは、小牧さんやQAチームの方々と協議しましたね。社内のスタッフともここまではやりたい、これはやりすぎなんじゃないかと議論した覚えがありますね。
小牧体験版でどこまで遊んでいただけるようにするかは、長い時間をかけて議論しましたね。結果的に、多くの要素を塞いだ状態で体験版をリリースしたので、すごく心配ではあったのですが、2Dと3Dが融合したビジュアル、バトルの真新しさの部分といった新鮮さがあったので、好評の声をいただけたかなと。いまでもあの線引きは難しかったなと思っています。
――体験版の範囲でも玉手箱から強力な武器が入手できて、すごく話題になっていましたよね。
小牧我々もおっかなびっくり皆さんの反応を見ていたのですが、SNSや動画で話題になっていて、すごく広く遊んでいただけたのは本当にありがたいなと。
マップの中に仕込まれた小ネタも用意
――『SO2R』の新要素としては、クリアー後の引き継ぎ要素もうれしいポイントでした。これは開発当初から入れようと決められていたのでしょうか?
北尾どの要素を引き継ぐかはいろいろと調整しましたが、エンディングの数が多いのはわかっていたので、初期段階で入れたいなと思っていました。
 これは初めてお話するのですが、本作はプロジェクト初期のタイミングで、開発スタッフ全員にPS版、PSP版の両方のバージョンを遊んでもらって、各々が思ういいところ、ここは調整を加えたほうがいいと思うところなど、意見を出してもらいました。
――スタッフ全員にまず『SO2』に触れてもらったと。
北尾全員が当事者意識を持って、「ここをこうしたい」、「ここはこう調整したい」と意見を出し合ったのは、結果としてすごく大きかったなと。クリアー後の引継ぎ要素もそこで出た意見のひとつでした。
――そうだったのですね。先ほど話題に挙がったエンディングですが、全部で99種類ありますよね。今作はフルボイスに対応していて、ボイス収録がすごくたいへんだったかと思いますが、いかがでしたか?
小牧オリジナル版ではバトルボイスのみで、『SO2R』ではメインシナリオ部分をフルボイスにしようというのは企画の立案時から決まっていました。収録はとにかくたいへんでしたね……。集中的にやって3ヵ月ぐらい、スタジオに行っては帰りをくり返していました(笑)。
――シナリオの分量も多いぶん、かなりハードなスケジュールだったんですね。
小牧とくに主人公のクロード役のうえだゆうじさん、レナ役の久川綾さんのおふたりには、3ヵ月間、週に1、2回スタジオに来ていただいてボイス収録を進めていきました。収録タイミングとコロナが流行る時期が被っていて、開発チームにもオンライン上で参加していただいて、技術的なところで時間を取られて本当にたいへんでしたね。『SO6』でもフルボイスの収録を体験しているのですが、いざやってみたら、やはり分量が多かったというのが正直な感想です。
――その苦労があったからか、フルボイスでの物語はすごく感動しました。
小牧オリジナル版が発売されたのが25年前で、では25年前と同じ演技をするのが正解なのか? という議論も現場で行われました。今回ボイスを収録した声優の方々も、その点ですごく真摯に取り組んでくださって、本当にありがたかったですね。うえだゆうじさんからは、すべてのボイスを撮り終えた後に「1章をもう1回撮り直させてほしい」と提案してくださって、すごく熱量があるものになっているかなと。
 あと、本作ではオリジナル版の声優さんたちの新規ボイスに加えて、PSP版のボイスにも切り替えられるのですが、じつは開発終盤ごろに残っていると思っていたPSP版のフィリアのボイスデータが一部見つからないという事件がありまして……。PSP版でフィリアの声を担当いただいた佐藤利奈さんに急遽お声がけして収録したというドタバタもありました。この件は、開発チームの皆様、すいませんでした……(苦笑)。

北尾昔の作品をリメイクするときは、何十年前のデータを集めるところからスタートするのですが、データが見つからなかったり、当時のミスが見つかったりするのはあるあるなんですよね。セリフの言い回しに関しても、PS版とPSP版で変わっているものがいくつかありました。
小牧ED直前の最後のシーンのクロードのセリフが、PSP版ではアニメ側の演出によってPS版とセリフが少し違うんですよ。ここは開発チームにがんばってもらって、ボイス切り替えシステムを使って両方のボイスを入れているので、しゃべっているセリフが違ったりします。
――PS版とPSP版とで違いがあると、整合性を取るのも難しそうですね。
小牧我々としてもPSP版をないがしろにしたくはなくて、PSP版で初めて『SO2』に触れたという人もいらっしゃると思います。そういった方々のことも考えて、今回は両方のボイスを入れた感じですね。
北尾PS版という原作がありますが、公式資料として公になっている設定もあれば、そうでないものもあって、僕たちは「なぜこういう設定になっているのか」を裏読みしながら開発を進めていきました。この部分に関しては、とくにアートまわりは苦労したと思います。
増田紋章兵器研究所とかはそうですね。設定的にはミロキニアと紋章兵器研究所と同じ場所にあるのですが、PS版では別々の惑星に見えるんです。そこは今作では見た目上で補完しなくてはいけないなと思って、ミロケキニアと紋章兵器研究所の建物は同じという設定で作っています。ただ、原作の見せかたも大事にしたくて、ユーザーの方々に向けてわかりやすくはしないように工夫して実装しています。
 気付いている方は少ないかもしれませんが、クロードがミロキニアで転移事故に巻き込まれた場所と、レナが7億年前の事件で転移した場所は、まったく同じ場所にしています。クロードが転移した場所でカメラを反時計回りに90度回転させると、紋章兵器研究所の記録映像で出てきたシーンの場所になっています。
――ゲームでは実際にカメラを回転させることはできませんが、じつはそうなっているんですね。
増田研究室跡を注意深く見ると、窓の奥にクロードが転移した後に残されていたクレーターがあります。そういった要素を、あえてわかりづらいように入れていたりします。あの屋外のマップも7億年前の事件、クリエイションエネルギーが暴走したことによってできたクレーター、そのエネルギーを時空転移シールドで別の時空へ転移したからドームが全壊しなかったなど、細かい部分を決めてマップを作っています。
――それを踏まえて周回プレイをするといろいろな発見がありそうですね。
北尾細かいところを見ると、いろいろと共通点が見つかると思います。どこが公式設定として公になっていて、どこまでやっていいのかは、小牧さんたちにも相談しながら進めていきましたが、じつは黙って追加した要素も……(笑)。
増田そういった小ネタをいくつか仕込んでいます(笑)。
小牧それを能動的にやっていただけるのが今回の開発チームのいいところでもありますね。北尾さんも増田さんも、もともと『SO』シリーズを作っていたチームにいらっしゃったので、ここは変えてはダメという勘どころがおさえられていて、あまり心配していませんでした。ただ、いまの話を聞く限り、僕が知らない要素やデータも結構ありそうだなと(笑)。
北尾マップの中にカニが隠れていたりして……。
――そんな隠し要素が。
北尾PS版でも神護の森に同じような小ネタが入っていたのですが、それと似たような感じで、今作にはカニがどこかのマップで登場するようになっています。年末年始に改めて遊ばれる方は、そういった要素にも注目してほしいですね。
小牧冒頭でもお話ししたとおり、原作の要素を大きく変えないという大きな方針はありましたが、やはりエンタメなのでどこかに新しい驚きがないと、ただ懐かしむだけで終わってしまいます。そこは開発チームがすごく理解して取り組んでくれて、今作は25年前にPS版を手に取って遊んだ方でも、当時の体験をなぞるだけにならないのは間違いありません。新しく楽しめる要素もふんだんに用意されているので、まだ遊んでいないという方は、この記事を読んだ後にぜひプレイしてほしいです。
十賢者の新イラストに込められたこだわり
――『SO2R』ではキャラクターイラストが一新されていますが、とくに十賢者はそれぞれの個性が出ていて、すごく記憶に残る感じになっているなと。イラストを描かれる際にとくに工夫したところ、苦労したところなどを教えてください。

梶本たとえばプレイアブルキャラクターたちは当時僕が『SO2』を遊んだときのイメージを今に通ずるよう描こうとしたんですが、十賢者は敵役、ヴィランなので感情移入してもらうことよりもインパクトが大切だと考えました。なので、主人公たちに比べて、より大げさに描くことを意識したように思います。
――確かに登場時のインパクトはすさまじかったです。
梶本ただ、PS版とPSP版とで十賢者のキャラクターイラストも大きく違うところがありました。今回は可能な限りPS版を尊重して作ろうというのがプロジェクト全体の流れだったので、十賢者のデザインも基本的にPS版を踏襲する形にしています。
小牧僕からも質問したいのですが、十賢者の中で、梶本さんがとくに意識してイメージを変えたキャラクターって誰ですか?
梶本ディテールを変えたという意味ではハニエルでしょうか。構造的に原作のイラストだと現代風のSF感が出ないパーツが多かったので。なので、同じくメタトロンなんかも変わっていると思います。

ハニエル

メタトロン

――メタトロンもすごくかっこよくなっていますよね。
梶本ありがとうございます。メタトロンはだいぶロボ感が強くなっちゃいましたが(笑)。剣や盾などはドット絵のデザインを取り入れています。それと最初に戦う十賢者なのでちょっと厳つくしたいと思いあのようなイラストになっています。
 あとは先ほど話したPS版とPSP版でデザインが違うサディケルですね。設定上PSP版の解釈もわからなくはないので悩ましいところだったんですが。彼に関してはPSP版からだいぶん変わったという印象の方も多いと思います。

サディケル

――そういったこだわりがあっていまのイラストができあがっていったんですね。個人的にはジョフィエルがいちばん好きです。
梶本僕も当時からジョフィエルが好きでした(笑)。人柄が好きということは絶対ないですが、癖が強いキャラクターは描く側、作る側としては好きになっちゃうんですよね。キャラクターに徹しているキャラクターというか。ちょっと気持ち悪い感じをちゃんと描こうと思いました。

ジョフィエル

――見事に刺さりました(笑)。話は変わりますが、エンディングまではほどよい難度だなと思ってプレイしていましたが、クリアー後の要素、隠しボスなどはすごく手強いなという印象を受けました。これは意図して難しくしたのでしょうか?
小牧そうですね。当時の難度をベースに、開発チームに調整をしていただきました。じつは、クリアー後の要素だけでなく、序盤からクリアーまでも難しくしてくださいと私からはオーダーをしていたんです。
北尾ボス戦を中心に、旧作と比べても難度は上げています。本作からの新要素である“ブレイク”や“ジャストカウンター”などをうまく活用すると攻略しやすくなるので、テクニカルな遊びかたをすればスムーズに進められるということは想定していたのですが、リリース後の反応を見ると、我々の想像以上に皆さんがゲームをやり込んでくださったなと(笑)。もう少し難しくしてもよかったのかなと思いつつも、ゲーム全体の体験としては、いまのバランスがちょうどいいのかなと思っています。
小牧イセリア・クィーンや真ガブリエルなどの隠しボスまで挑まれる方が全体のプレイヤーの中でもひと握りというのは、ゲーム開発者的にはなんとなくわかっていたつもりなのですが、SNSなどをみていると想像していたよりもチャレンジしている方が多いなと思いました。
 原作をプレイした方は攻略方法もある程度わかっているゲームですし、未プレイの方でも今は攻略サイトの情報が豊富なので、それを受け止められるものを用意したつもりではあったのですが、とことん突き詰めてやり込まれた方からすると、まだ敵が柔らかいと感じるところもあるのかな、というのがいまの印象です。
――闘技場やクッキングマスターなどやり込める要素がたくさん用意されていて、本編クリアー後もじっくり遊べるのはうれしいですよね。
小牧和ヶ原聡司さんに書いていただいたキャラクターの追加セリフに注目したり、新要素のレイドボスに挑んだりと、本編以外にも楽しめる要素をたくさん用意してあるので、すでにクリアーした方もそういった要素を改めて触っていただけるとうれしいです。それこそ深くアイテムクリエイションに触れずに本編を進めている方もいらっしゃるかもしれません。
 アイテムクリエイションをフル活用するというピーキーな遊びを楽しんでいただくとまったく別のゲームになっておもしろいので、ぜひいろいろな遊びかたを試していただきたいですね。
北尾先ほど梶本さんがおっしゃっていましたが、『SO2R』はPS版を尊重して作ろうというテーマで作っています。PS版では稲垣喜章さん(※)がアートディレクターを担当していて、稲垣さんが描いたコンセプトアートの一部がマップの中に入っていたのですが、『SO2R』にもそれをマップの中に仕込んであります。
※稲垣 喜章(いながき よしあき)氏。元トライエース所属。原作版『SO2』のアートディレクション、コンセプトイラストなどを手掛ける。
 今回のリメイクで「こんな絵になりましたよ」と稲垣さんにもお見せしたかったのですが、プロジェクトが発表される直前に稲垣さんが鬼籍に入られてしまって。ご存命のときに稲垣さんに報告したかったのですが、それが叶わなかったのはすごく残念でしたね……。
――そんな熱い想いもアートに込められていたのですね。
増田PAでその絵の内容についてしっかりと触れているものもあって、当時の絵のままじゃないとダメだったんです。そういったPAも用意されているので、ぜひいろいろなところに注目しながら遊んでいただけるとうれしいです。
楽しさを共有しながら遊べる環境作りも構想
――『SO2』のリメイク作品として、今作の完成度はすばらしいものでした。そうなると、次は『SO1』や『SO3』のリメイクにも期待したいのですが……!
小牧『SO』チームとしては、現行のプラットフォームですべてのシリーズ作品を遊べるようにというところからスタートしているプロジェクトなので、その目的は果たされている状態です。もちろん、『SO3』のリメイクに期待する声も認識はしているのですが、いまはさらに『SO2R』を広めようとしている最中で、現段階では次は何も決まっていなくて……。
 皆さんから暖かい声をいただいているうちに何か考えたいなという思いはありますが、いまは何もお答えできない状態です。全然お約束はできないのですが、長い目で『SO』シリーズを見守っていただければなと。
北尾我々も『SO2R』で久々に本格的なRPGをフルサイズで作って、すごくいい経験をさせていただけたなと思っています。今後も皆さんに喜んでいただけるタイトルを作る機会がいっぱいあるとうれしいですね。
――『SO』シリーズの新たな展開を楽しみにしつつ、気を長くして待っています! では最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。
増田旅の先々に刺激を感じられるようなアートをいっぱい用意しているので、ぜひそれを楽しみにゲームを進めていただければうれしいです。『SO2R』はリアルな背景とドットのテイストを混ぜた、懐かしさも感じられつつ、真新しいビジュアルになっています。さらに、何をやってもいいシステムが山盛りになっています。まだ本作をプレイされていない方は、まずは体験版をプレイしていただいて、興味を持ったらそのまま製品版を遊んでいただけたらなと。
北尾原作ファンの皆さんには、当時の記憶、感動をそのままに、現代風に遊びやすく作っています。新しい発見もいっぱい用意していますので、ぜひそこにも注目して遊んでいただければなと。
 『SO』シリーズが誕生してからもうすぐ30年になりますが、どの作品から始めても楽しく遊べるようになっています。まだ『SO』シリーズに触れたことがないという人は、『SO2R』を入り口にして、『SO』の魅力を体験していただけるとうれしいです。
梶本僕自身、『SO2』のファンなので、今回のプロジェクトに参加させていただいて、キャラクターイラストを描かせていただけたのは本当にうれしかったです。『SO2R』で初めて『SO』シリーズに触れたという方もいらっしゃるようなので、そういった方が今後もまた増えていってもらえるととても嬉しいです。
 あと、少し脱線してしまいますが、打ち上げのタイミングなどで毎度風邪を引いてしまい、ジェムドロップさんのスタッフの方々に(リアルでは)全然お会いできていないんですよ(笑)。『SO2R』はUIもすごく気に入っていて、エフェクト、ムービーもすごくいいものになっていますし、直接お会いして伝えられていなかったのが気がかりでした。それをこの場で伝えたいです(笑)。
小牧改めて、『SO2R』をプレイいただいている皆さま、本当にありがとうございます。遊んでくれた方の「おもしろかった」という声は、我々もうれしいですし、当時からのファンからしても自分の記憶が受け入れられるようでうれしく感じると思います。また、そうした暖かい言葉が、まだ『SO2R』に触れていない方を呼び込んでくれていると思っています。ありがとうございます。
 いま『スターオーシャン』は非常によい環境になっていると思いますので『SO2R』をもっと遊んでいただけるように、今後もなにか話題を作りたいなと思っています。まずはこの記事を読んで興味が沸いて、まだ『SO2R』を未プレイという人は、ぜひ体験版を遊んでいただければと。

関連記事

『スターオーシャン セカンドストーリー R』発売記念『SO1』~『6』&外伝14作品を一挙振り返り!“宇宙歴”最初と最後の作品はどれかわかる?
2023年11月2日の『スターオーシャンセカンドストーリーR』(『SO2R』)発売を記念してシリーズ作を一挙振り返り。ユニークなシステムと世界設定、個性的なキャラクターたち、ファンの心をつかんで離さないその魅力に迫ります。

関連記事

『SO2R』“エターナルスフィア”作りかた解説。序盤で作れるあの最強武器はリメイク版にもある! 経験値、SP、BP稼ぎの方法もまとめて紹介
2023年11月3日に発売された、『スターオーシャン セカンドストーリー』のフルリメイク作品『スターオーシャン セカンドストーリー R』。オリジナル版で序盤で入手できる最強クラスの武器として知られる“エターナルスフィア”は、本作でも作れるのかを検証。レベル上げ、SP&BP稼ぎ、金策手段も合わせて紹介!

Switch『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』の購入はこちら(Amazon.co.jp)

PS5『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』の購入はこちら(Amazon.co.jp)

PS4『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』の購入はこちら(Amazon.co.jp)

...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202312/27329506.html

-PlayStation

ゲーマーのおもちゃ箱
Translate »