2023年8月19日、モンゴルのウランバートルで第2回東アジアユース競技大会が開催された。本稿では同大会の対戦格闘ゲーム『THE KING OF FIGHTERS XV』(以下、『KOF XV』)部門で優勝した齊藤りく選手と、3位を獲得した荒井陽希選手のインタビューをお届けする。
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※この記事はSNKの提供によりお届けします。
インタビューの前に、簡単にeスポーツの歴史を振り返ってみよう。
“eスポーツ”という言葉は、1990年代に世界初のプロゲーマーが誕生して以来使用されはじめた。その後、グローバルな動きが年々活発化している。
1995年:「Battle by the Bay」(現在開催されているEVOの前身)が開催
2003年:日本で格闘ゲームを中心としたeスポーツ大会「闘劇」が開催
2007年:アジアオリンピック委員会が主催する第2回アジア室内競技大会でeスポーツが初めてメダル種目として採用
2018年:日本の公立高校で初めて、eスポーツを部活動として採用
2021年:国際オリンピック委員会主催の公式eスポーツ大会「Olympic Virtual Series」が開催/第19回「アジア競技大会」で同大会で初めてeスポーツが正式に採用
2023年:国際オリンピック委員会主催の「Olympic eSports week 2023」が開催
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2023年6月22日、シンガポールでIOC主催による“オリンピックeスポーツウィーク”開会式が行われた。会期は2023年6月23日~25日の3日間。10の競技(ゲーム)による決勝戦と、いくつかのタイトルでエキシビション試合が行われる。
現在もグローバルなeスポーツを取り巻く動きは加速しており、市場として2032年には100億ドル(約1.5兆円)規模にまで成長していくと予想されている。また、オリンピックの正式種目登用に向けた動きや教育現場へのeスポーツの導入。そして、eスポーツの教育に与える影響の研究なども盛んに行われているようだ。
引用元:Market.US
東アジアユース競技大会
前述したように、オリンピックの正式種目としてeスポーツ登用に向けた動きがあるなか、第2回東アジアユース競技大会にて対戦格闘ゲーム『KOF XV』が競技種目として選出された。
この大会は、東アジア地域の9つの国と地域のオリンピック委員会で組織される東アジアオリンピック委員会(EAOC)が主催する、ユース世代の競技力向上と国際交流を目的とした国際総合競技大会。2023年の第2回大会からeスポーツが正式種目として採用された経緯がある。
写真提供:日本オリンピック委員会
写真提供:日本オリンピック委員会
渡邊先生
国際アート&デザイン大学校・eスポーツデザイン科の先生。闘神祭ベスト16進出など、格闘ゲーマーとしての腕前も確か。
齊藤りく選手
齊藤りく選手。年齢は17歳で、プレイヤーネームはRize(りぜ)。第2回東アジアユース競技大会の『KOF XV』部門では1位を獲得。
荒井陽希選手
荒井陽希選手。年齢は18歳で、プレイヤー名はえでぃこ。第2回東アジアユース競技大会の『KOF XV』部門では3位を獲得。
今回、取材班は齊藤選手、荒井選手が在籍している福島県・郡山市の国際アート&デザイン大学校を訪れ、eスポーツビジネス科の設立過程や大会のエピソードトークを聞いてきた。学校でeスポーツを学ぶということがどういうものなのか、ぜひ最後まで目を通してほしい。
eスポーツビジネス科について担当先生に質問! プレイングのみならず、裏方仕事も学べる充実したカリキュラム
大会について訊いていく前に、まずは国際アート&デザイン大学校eスポーツビジネス科の渡邊先生に、eスポーツビジネス科の設立過程や授業内容について伺った。
――まずは、eスポーツビジネス科の目的や狙いについてお聞かせください。
渡邊現在日本でのeスポーツを学べる学校は、プロを目指すところが多くを占めています。しかし、eスポーツ業界はプロプレイヤーだけではなく、多くのサポートがあって初めて成り立っています。具体的な仕事で言うと、イベントディレクターやマネージャー、イベントプランナーなどのイベント運営やコーチやアナリストなどプレイヤーを直接支える仕事に加え、実況者やストリーマー、ライターなどの広報に関わるような仕事もあり、とても多様化しています。
そこで本学科ではeスポーツの現場において、どのような職種でも活躍できるように、ここでの学びを通じて、幅広い知識を身に着けることを目的としています。
そのために、学校の授業では"国家資格 ITパスポート"や"ICTプロフィシエンシー検定"などのITに関する資格、Word/Excel/PowerPointなどPCスキルに関する資格、"著作権検定"や"コミュニケーション検定"などの幅広い資格取得もさせており、学科開設以来就職率も100%を継続しています。
また就職後即戦力として活躍できる人材育成を目指し、実践授業も数多く取り入れています。行政と連携し高齢者への体験会の運営や、世界大会の運営補助など、本校でしかできないオンリーワンの実践授業も魅力のひとつです。「eスポーツを学ぶ学校では就職なんてできない」そんなネガティブなイメージを変え、好きなゲームを活かして仕事にすることができる。そんな学科を作りたいと考え設置をしました。
――プロ選手以外の道も探っていけるのはいいですね。では、カリキュラムはどういったものになっているのでしょうか?
渡邊いくつかの軸に分かれていまして、まずはプレイをするという軸、もう一つがイベントの運営にかかわるスキルという軸ですね。
記者の目
筆者は、「国際アート&デザイン大学校eスポーツビジネス科では、プロ以外の道も探れる」というのが非常に好印象だった。eスポーツに関わりたいけど、プロとして最前線で続けられるか不安、という人もいるだろう。そんな人に、別の道も導き提示してくれるのが国際アート&デザイン大学校eスポーツビジネス科の良いところではないだろうか。
――プレイに関しては、今回優勝を飾った『KOF』をメインにプレイされているのでしょうか?
渡邊そういうわけではなく、格闘ゲーム全般をプレイしている感じです。プレイングに関しては量を確保して“PDCA”を回しながら強くなるための戦術や考え方を学ぶ、という方式を取っています。
※PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのプロセスをくり返し行うことで、業務効率を改善するための方法。この流れを格闘ゲームに置き換えて実行しているそうだ。
『KOF』を扱ってる理由としては、私が『KOF』好きというのが大きいですね。『餓狼 MARK OF THE WOLVES』というタイトルを十数年やっていまして、その流れで『KOF14』にハマり、アーケード版格闘ゲームの全国大会“闘神祭”でベスト16に残れるくらいやり込みました。
だからこそ楽しさを伝えられますし、強くなったときに大会を上がっていく過程や、難しさも伝えられると思っています。SNKさんを通じて横のコネクションも作れていたので、そこも要因のひとつでもあります。
――なるほど。PDCAをまわすなど具体的なテクニックよりは、取り組み方を重点的に教えられているのでしょうか。
渡邊そうですね。どうしても生徒全員が格闘ゲームのことが好きだったり、うまいというわけではないので、彼らがふだんプレイしているゲームにも活かせるような考えかたを中心に教えています。自分の課題をエクセルのシートに描きだすような課題もありますね。
――生徒のおふたりは、実際に課題をやってみてどうですか?
齋藤解らない部分は先生に聞きながら、場面ごとの対処法を聞けるので、すごく役に立っています。
記者の目
格闘ゲームを強くなるためにメモを取るなどの取り組みはよく聞くが、より具体的にメモの取り方を教えてもらいつつ、誰かに見てもらえる。というのが生徒にとって良い環境となっているのだろう。自分でメモを取ろうとしても、「何をメモしたらいいかわからない」「メモの内容が合っているかわからない」というのはよくある話だ。そこをきちんとサポートし、適切な努力を適切に行えるようになっていると感じた。
――なるほど。そのほかにはどういったことをやられているのですか?
渡邊強くなるということに関しては、いま挙げたような課題や授業に集約されています。そのほかには、イベントで使用するゲームをプレイして、ルールを学習する授業もあります。たとえば、格闘ゲーマーにとって興味関心の薄いレース系のゲームをやってみたりと、得意分野以外のゲームでもイベントにつなげるためにプレイしています。
――プレイングの授業は1週間にどれくらいあるのですか?
渡邊本校では週5日登校し、朝から6限まで授業がありまして、プレイングは週に3時間ほどです。
――プレイ以外の勉学にも力を入れているわけですね。プレイ以外のイベント運営については、どのような授業を行っていますか?
渡邊実際に企画書を書いたり、イベント運営に参加したりとかなり幅広いですね。私に依頼が来た実際のeスポーツイベントの案件で、生徒から有志を募ったり、案内を行う場合もあります。設立から4年が経ち、eスポーツ業界からもある一定の信頼をいただけていると思います。
――実際に生徒さんがeスポーツシーンの現場に出られるのは素晴らしいですね。
渡邊そうですね。大きな現場に参加することがいちばん成長につながると思っています。
EVO JAPAN 2023(格闘ゲーム世界大会)にもスタッフとして参加させてもらいましたが、3月31日の開催だったので、スタッフとしてイベントに参加したあとすぐに入学式というスケジュールでたいへんでした(笑)。
――現場に出る授業は年にどれくらいあるのでしょうか?
渡邊外の現場は年に25~30回ほどあります。福島県eスポーツ協会という団体がありまして、そこが郡山市と連携したイベントを開催しています。認知症予防としてゲームを教えるという企画で、福島の医大と協力して効果の研究が行われています。
そちらのインストラクションはすべて学生が行っているので、それだけでも年に10回くらいありますね。
――社会福祉的な学習もできるいいイベントですね。そういったイベントは基本的に休日になると思いますが、その場合は平日の授業はどうされているのですか?
渡邊休日にイベント活動をした場合は、平日のどこかが休みになります。
記者の目
実際に現場でスタッフとして活動する生徒たち。EVO Japanは特にたいへんだったと語っていた。国内最大規模と言っても過言ではない大型大会で、仕事としてeスポーツに関わっていくというのがどういうことか身をもって知ることができ、プレイヤーとは違った目線を体験することができたことだろう。
初海外という両選手。初めての異文化の感想を聞いてみた
続いて、大会について齋藤選手、荒井選手にインタビューを実施。初海外だという両選手、初めて触れる異文化や選手間のコミュニケーションについて聞いてみた。
――ここからは、大会について選手のおふたりに聞いていきたいと思います。まずは、参加を決意した経緯をお聞かせください。
齋藤・荒井授業で習っていたKOFの力を試したいと考え参加しました。また、ここまで大きなeスポーツ大会を案内されるのが初めてだったため、「どんな感じなんだろう?」「出てみたいな」という気持ちもありました。
――先生は、どういったお気持ちで本大会についてお考えでしたか?
渡邊一番の理由は「生徒の成長につながるから」です。日の丸を背負って大会壇上に立つということだけでも、ゲームへの取り組み方が変わりますし、大会出場までの書類のやり取りや海外へ向かうための準備など、多方面で生徒が成長するまたとないチャンスだと考えました。
――会場がモンゴルでしたが、訪れてみた感想はいかがですか?
齋藤最初は「どんな感じなんだろう」と思ってワクワクしていました。実際に行ってみた感想としては、“すごく楽しかった”ですね。そもそも海外が初めてで、初めての飛行機で5時間半ほどかけてモンゴルに行きました。気圧で耳が痛くなりましたね(笑)。
荒井僕はとにかく緊張しました。行く前からもうずっと緊張しっぱなしでしたし、飛行機に乗るのも怖かったですし、海外にいくのもすごく怖かったです(笑)。
――現地での食事はどうでしたか?
齋藤あまり抵抗はなかったですね。羊肉の料理などが多く、モンゴルらしい感じでした。こういった料理です。(下の写真が、齋藤選手が撮影した料理の様子)
モンゴルの高級料理なんかもいただけて、すごく楽しかったですね。
齋藤選手が撮影したレストランの様子と、現地の料理の写真
荒井個人的には、ベーコンがいちばんおいしかったです(笑)。日本のものと比べてすごくしょっぱいのですが、それがすごく美味しくて。
あとはカレーもおいしかったですね。ホテルの食事はバイキング形式だったので、わりと好きなものを食べられました。
――日本食が恋しくなったりはしませんでしたか?
齋藤なりました。ですので、一度日本食レストランに行って、とんかつやラーメンを食べました(笑)。
記者の目
若くして、日の丸を背負って異国の大地に立った齋藤選手と荒井選手。普通の学生生活とはまた違った体験ができたのも、eスポーツが国際的な競技として発展しているからこそ。そして二人がそんな大舞台に通用するほどの努力を重ねてきたからだろう。
――今回、選手団での渡航だったと思いますが、“選手団”の雰囲気はどういったものなんでしょうか?
齋藤今回は、僕と荒井選手とコーチの方でeスポーツチームが組まれまして、ほかにはボクシングの選手らと合同で行きました。
そのボクシングの選手の人たちとは仲よくなれました。ホテルのカフェで練習していたときに、ボクシングの選手が「何やってるの?」と声をかけてくれたんです。それで僕の方も「『KOF』という格闘技のゲームで……」といった話を通じて仲よくなれました。その人が僕と同じゲームが好きだったので、話が合ったのもあります。
――ほかの競技の選手でも、同世代で交流できるのはいいですね。スケジュールはどういった感じだったんですか?
齋藤事前に現地入りし、そこから調整をして……という感じで10日間くらいの日程でした。大会自体は1日で終わったので、それ以外は練習や調整、ほかの競技の応援に行ったりという感じです。
――なるほど、基本的には練習などがメインという感じだったんですね。日本の選手のほかに、他国の選手とも交流はありましたか?
齋藤ライバルではありますが、友だちにもなれました。僕の場合は、わからない言葉はスマートフォンの翻訳アプリを使いつつという感じで香港、台湾、モンゴルの選手と交流がありました。
荒井ホテルの部屋に直接遊びに来てくれて、そこでジャージの交換をしました。大会の前からそういった交流をしていたので、緊張をほぐすきっかけになったと思います。
――ジャージの交換ですか。なんだか、国際選手らしい交流ですね。緊張の話も出ましたが、大会当日はどうでしたか?
齋藤最初はすごく緊張しました。ただ、当日の控室でほかの選手たちと配信を見ながら雑談しているうちに、緊張が解けてきた感じです。
荒井めちゃくちゃ緊張しましたけど、それまでの交流で仲がよくなっていたので、リラックスした状態で対戦できました。ある種、友だちと対戦しているような感覚だったかもしれません。
――先生から、出国時に何かアドバイスはしていたのですか?
渡邊出国時はとくにしていなかったのですが、当日に配信を見ながら「次にこの選手と当たったらこうしたほうがいい」というようなアドバイスを送っていました。
齋藤すごく助かりました。一回負けた相手に、先生のアドバイスのおかげで勝てたんですよ(笑)。
渡邊これは余談ですが、なんか調子悪いな~と思ってみていたら、どうもキーコンフィグが違ったらしくて、それで一回負けていたっていうこともありましたね。
――国際大会と国内大会は比べてみてどうですか?
齋藤日本とモンゴルでは、セッティングしてくれる人の雰囲気が違いましたね。モンゴルの方は結構ラフな雰囲気で、セッティング自体もラフなんですよ。音が出ないトラブルがあった時には「偉い人来るから直せ!」とか言ってて(笑)。
荒井僕が感じたのは、会場の豪華さですね。映画館のようなホールで、eスポーツ専用の会場でその広さだったんです。豪華な会場で試合ができて、面白かったですね。
――現地での楽しかった/面白かったエピソードなどありますか?
齋藤モンゴルで出来た友人に日本語を皆で教えたのですが、みんなして変な日本語を教え込むんですよ(笑)。日本の芸能人の一発芸とかも教えましたね。帰国後も、インスタグラムで何度か連絡を取っていて、日本に来た時は案内する約束をしています。
荒井ホテルに遊びにきた友人とバッジ交換をしたことですね。選手に交流促進用のバッジが配られていて、それを交換しにお互いの部屋へ遊びに行くんですよ。それでいろいろな選手と交流できたのが思い出深いです。
記者の目
言葉は通じなくとも、ゲームという共通言語で最新の技術を使いながら異文化交流を図っているというのは、多感な10代にとっては非常にいい刺激になったであろう。試合に際して緊張などもあったという両名だが、先生のサポートや現地で交流した選手のおかげで緊張せず戦えたという。こういったスポーツらしい緊張感やライバルの存在をゲームを通じて楽しめるのがeスポーツの魅力だと再確認させられた。
大会での活躍の裏には『KOF』コミュニティの暖かいサポートが
次に、齋藤選手、荒井選手をコーチングした雪之丞さんについて聞いてみる。すると、大会での活躍の裏にあった、『KOF』コミュニティの暖かいサポートが浮き彫りになったのである。
――『KOF』の公式大会の実況でおなじみの雪之丞さんにコーチングを受けていたと伺いました。
渡邊そうですね。後半はほぼ雪之丞さんが専属コーチみたいな感じでした。放課後はほぼ雪之丞さんにお任せして、授業で僕が教えるみたいな形でしたね。
――どういった経緯で雪之丞さんに協力してもらえることになったのですか?
渡邊「雪之丞さんが応援したいと言ってた」ということをSNKさんらから伺いまして、私自が身雪之丞さんとつながりもありましたので、ご依頼したという次第です。
――両選手は、実際に教えてもらっていかがでしたか?
齋藤すごく成長できましたね。雪之丞さんに空いている日があれば、ディスコードで通話しながら教えてもらって、画面を見てもらいながらアドバイスをもらっていました。
渡邊雪之丞さんのYouTubeチャンネルに当時のコーチングの様子などが残っていますので、よければそちらも見ていただけると幸いです。
――EVO Japanの実況解説なども務める雪之丞さんが自ら指導を担当してくれるというコミュニティのフットワークの軽さ、若手選手を歓迎する姿勢がとても印象的だった。他のスポーツでもこういった“トップ選手に教わる機会”というものはあるのかもしれないが、ゲームという性質上、交流が実現しやすいのはeスポーツの強みだろう。
――出発前に、大会に向けて努力したポイントはありますか?
齋藤大会に向けてプレイの量は意識しました。とにかく学べるところは全て学ぼうという感じで、基礎からゲームを理解するようにしています。
荒井僕も、基本があまりできていなかったので、そこを重点的に雪之丞さんや先生に教えてもらうようにしていました。
――齋藤選手は予選で荒井選手に敗れたと思いますが、その後に本戦では逆に勝利した要因を教えてください。
齋藤本選まで、学校に帰ってからほぼ毎日『KOF』の練習をしていましたね。雪之丞さんをはもちろん、上位プレイヤーの方に師事をして、どのように成長すれば大会で勝ち抜けるかなどを具体的に聞いていたのが勝利につながったと思います。
――今回、『KOF XV』をプレイしてみて、どうでしたか? まずは、齋藤選手。お願いします。
齋藤格闘ゲーム自体が初めてだったので、すごく新鮮でした。格ゲーは基本的に1対1じゃないですか。僕はこの1対1というのが好きで、自分が負けたら自分のせいだし、勝利は自分のもの、という点がすごくマッチしていたと思います。
――逆に、難しかった部分は?
齋藤読み合いや、技を打ったら打ち返されてという間の取り合いといった駆け引きが難しかったです。
――荒井選手は、おもしろかった点などはいかがでしょう?
荒井『KOF』はコンボが入ったら、ものすごいダメージが出るじゃないですか。それがすごく気持ちよくて、楽しかったです。
――『KOF』のコンボは難しいものも多いですが、そこは特に問題なく?
荒井そうですね。難しいと言えば難しいのですが、できたときの達成感の方が大きかったです。トレーニングモードで練習して、できるようになっていく。というのが面白かったです。
――トレーニングモードでの反復練習はつらくはなかったですか?
荒井つらいです(笑)。たまに訳がわからなくなりますが、それでもできたときが最高に楽しいですね。
齋藤僕もコンボは難しかったですね。しかも『KOF』は3キャラクター覚えないといけないので……!
記者の目
難しいコンボの反復練習などは、一見地味で無意味にも見えかねない細かな練習だが、こういった小さなことをコツコツと積み重ねたからこその実力なのだろう。実際、大会などの本番では普段と違う環境でプレイしなければいけない場合や、緊張で上手く手が動かないこともある。いついかなる時と場所でも、必ずコンボや連携をミスしないよう普段から練習することの大事さに、若くして両選手は気づいていたのである。
卒業後の進路は? 両選手の今後について尋ねてみた
――今回、大会に参加してみていかがでしたか?
齋藤自分自身の視野が広がったと感じます。大会を通してやりたいこと、なりたい職業などがガラっと変わりました。在籍中によりつながりのある企業や業界を調べ、eスポーツ業界の中枢で関われる人材になりたいです。
――生徒のおふたりを送り出してみて、先生はいかがでしたか?
渡邊カリキュラムについては、いままで運営メインではありましたが、希望学生に対しては格闘ゲームの大会上位入賞を目指せるようなカリキュラムを取り入れようと考えております。『THE KING OF FIGHTERS XV』を通してより格闘ゲームの魅力を伝え、若手の育成に努めたいと考えています。
――おふたりが今考えている卒業後の進路をお聞かせください。
齋藤僕は『KOF』などの格闘ゲームジャンルをメインに、プロのプレイヤーとして活動することを目標にしています。並行して、運営などの裏方業にも携わっていけたらいいなと考えております。競技者としてダメだったときにも、裏方として業界に関わっていけたらいいですね。
荒井大会の運営など、イベント製作の方面で考えています。イベント運営等のノウハウをしっかりと学んでいき、東京で数千人規模の大きな大会をやるのが夢です。
取材を終えて
eスポーツの登場から時代が流れ、学業として学ぶことができるようになった時代。今回、アジア競技大会という大舞台で素晴らしい成績を収めた2名の選手にインタビューを行ってきたが、その裏には真摯に格闘ゲームに向き合い着実な努力を積み重ねるプレイヤーとしての姿勢と、日の丸を背負って世界を相手に戦う若い彼らを献身的にサポートする先生方やKOFコミュニティーの存在があったことがわかった。今後、業界で羽ばたくかもしれない両選手の今後に、ぜひ注目していきたいところである。
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...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202403/11324459.html