Blitz Wing・朝倉杏子&皇美緒奈 個性にあふれた2人のバースデイライブをレポート!
2024年8月22日 18:00 VTuber
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バーチャルミュージックプロダクション・RIOT MUSICのレーベル・Blitz Wing(ブリッツウィング)所属の朝倉杏子(あさくらあんこ)と皇美緒奈(すめらぎみおな)、両名のバースデーワンマンライブが8月17日にGRIT at Shibuyaで開催された。
前日には台風が関東地方を通過するというタイミングで開催自体が心配されていたが、実際当日になってみれば台風一過の快晴。晴れ晴れとした空模様のもとに熱心なファンが集まり、温かなムードのなかで2つのライブはスタートした。
今回はそれぞれのライブについてレポートしてみようとおもう。
杏子!大爆発! フルパワーでキュートな誕生日ライブ
午後2時半というまだまだ暑い時間からスタートしたのは、朝倉杏子の「ANKO ASAKURA BIRTHDAY EVENT 2024 あんこだいばくはつ!!」だった。誕生日は7月9日ということで配信上ではすでにお誕生日会を終えているが、やはり本人自身のライブは特別なもの。楽しもう!という心意気にみなぎったものだった。
照明が絞られて暗転すると、「杏子ー!!」とステージへ大きな声が飛んでいく。1曲目に歌ったのは、1週間ほど前にカバー動画として投稿されたばかりの「Love Cheat! 」だ。スクリーンに登場した杏子に対して歓声が飛ぶが、すぐに本日のライブのイメージロゴが覆いかぶさる。なんと登場したタイミングで3Dビジュアルが固まってしまうトラブルがおきてしまったのだ。
最初は笑っていた観客だが、イメージロゴがかぶさって数刻のうちに不安な気持ちになっただろう。「まさかライブが始まってすぐに中止?」と。そんななかでも観客を不安にさせないのが、本日の主役・朝倉杏子である。突然のトラブルに一切動じることなく堂々と歌い続け、不安げなイメージを一切沸き立たせない。結果、曲途中でスッと登場した際にはより大きな歓声で登場することになったのだが、それも当然といっていいだろう。
続く2曲目に披露したのが自身のオリジナル曲「アプリコットブロッサムマジック」、シンセサウンドによるアッパーなムードが基調となった杏子印のアイドルソングであり、ピンクのペンライトが振られ、大きな合いの手がステージの彼女に向かって飛んでいく。
まさかのトラブルから選曲チョイスのよさが噛み合った偶然とはいえ、トップアイドルを目指す彼女のしたたかさがそこに現れていたのだ。
「GRIT at Shibuya!盛り上がってますかー!?杏子の爆発が激しすぎて本当に爆発しちゃったんですけどね(笑)それもご愛嬌ということで。」
「杏子はいつでも全力全開!あなたのハートに!全速前進!届け!頑張る君に!杏子の気持ち!みんなを癒やすために生まれてきた全人類の女神、そして世界一の美少女JKこと、朝倉杏子!17歳でーす!」
序盤のトラブルをフォローしつつ長めのキメゼリフをキチっと決め、杏子はライブをドンドンと進めていった。「ポニーテールとシュシュ」「ハッピー☆マテリアル」「サインはB」、青空、白い雲、ラブレター、星々など、ポップなムービーがスクリーンを流れるなかで、杏子は止まることなく歌って踊っていく。
AKB48から「魔法先生ネギま!」といういまに繋がっていくネットカルチャー/アイドルカルチャーの源流になった存在から、その両軸が混ざりあった「推しの子」へとジャンプしていく流れ・選曲。「杏子さんさすがに分かり手の選曲だ……!」と思ったのは筆者だけではないだろう。
「みんなありがとう!見ての通り、杏子がちょっとハァハァタイムに入ってきたので、趣向を変えてこちらのコーナーをお届けしたいと思います!。クイズ!◯×杏子王はだれだ選手権!」
スペシャルコーナーとして「クイズ!◯×杏子王はだれだ選手権!」がスタートした。朝倉杏子にまつわる難問を出題し、最後まで残った観客にスペシャルなグッズがプレゼントされるという形になっており、これまでの配信にも出ていないような内容にも触れるゲキムズクイズに挑戦した。
景品となるスペシャルグッズも、サイン入りイラスト色紙・サイン入り会話ボタン・配信内で作ったてるてる坊主といったラインナップで、しかも「運営の検閲していない」という代物。ファンのなかには是が非でも全回答して手に入れたいファンもいただろう。また、彼女が愛してやまない愛犬にまつわるクイズが多かったというのも、杏子らしい内容だった。
約40分ほどのクイズコーナーでの触れ合いを終え、ふたたび杏子はマイクをとって歌い踊っていく。「マクロスF」の「星間飛行」に始まり、緑黄色社会「Mela!」、内田真礼「ストロボメモリー」、HoneyWorks「誇り高きアイドル 」4曲と流れるように披露していった。
サイドステップを踏み、腕を振り、愛らしい笑顔と真剣な表情を振りまいて歌っていったなかで、特に「新しい自分になる自信をくれた曲です」と話し唄い始めた「ストロボメモリー」、それに続く「誇り高きアイドル」の2曲は、アッパーでキュートなアイドルイメージをなぞることが多かった杏子にとって、内面を打ち明けるようなシリアスな2曲は緊張だったはずだ。
「いままでの明るいとか萌えとかではなく、みんなには見せてこなかったもどかしさや悔しさという気持ちがテーマになっています。」
このように彼女は語ったが、この言葉は先に上げた「ストロボメモリー」「誇り高きアイドル」を指すものではない。この2曲を歌い終え、本編ラストとしてこの日初披露した新曲「走り出したら」に対しての言葉だ。
サウンドとしては切なさに重きをおいたアイドルソングといったところだが、ピンク色を中心にしてカラフルに彩られたムービーのもと、初めて披露するこの曲を、大切そうに、大事そうに歌っていたのが印象的だった。
アンコール!ではなく大!爆!発!というコールで杏子を待つ観客たち。そのなかで登場した彼女が歌ったのは、いちばん大好きな曲という「リフレクティア」、そして自身のオリジナル曲「マジ恋ぷれりゅーどLOVEアンセム」という鮮烈&強烈なパンチでライブを締めたのだった。
スタートとエンディングは自分のオリジナル曲を配し、序盤にはアニソン~アイドルの本流を意識した選曲を、後半では自身にとっての新機軸を披露する。選曲・曲順といったセットリストは、朝倉杏子の意図・狙い・アイディアがこれでもかと込められていた。
2022年12月のデビューから1年半、彼女はより大きな存在へと変化しようとしている、そのキッカケとなるライブであった。
皇美緒奈・アニソンシンガーの軌跡を歩むようなバースデーライブ
陽も落ちて暑さもおだやかになった18時半。皇美緒奈によるバースデーライブ「REVOLUTION」がスタートした。ステージ真ん中にスッと登場した皇が、「世界を革命する力を!」と宣言して始まったのは「輪舞-revolution」だった。エメラルドグリーンのロングコートに銀色の長髪をなびかせ、皇は伸びやかなボーカルを響かせていく。
2曲目はFictionJunction YUUKA「nowhere」。時折視線を外しつつも観客を見ながら唄うその姿は、実に腰が据わった印象を抱かせる。2021年12月にデビューして以降、ライブに出演することは決して多いとは言えないが、”RIOT MUSICとは別の音楽事務所から移籍した”という彼女のプロフィール通り、落ち着き払ったムードを漂わせていた。
3曲目「甲賀忍法帖」では馬力をグッと出してよりパワフルに歌い上げる。MCパートでは、歌っているイメージ通りの余裕ある口ぶりで喋っているかと思いきや、急に言葉を噛んだり、かわいく腕を振ってみせたりと、時折可愛らしい一面を見ることができニコニコとさせてくれた。
そんな愛らしいムードも、唄い始めると一気に変わる。「わたしにピッタリだとみんなが言ってくれた思い出の曲」とMCして唄い始めた4曲目「嵐の中で輝いて」、続く「Meteor-ミーティア-」とガンダム曲が並ぶ。
特に「Meteor-ミーティア-」は西川貴教の野太くドッシリとしたボーカルにリスペクトしてか、よりググッと低くパワフルに歌っていく。追い打ちをかけるように唄い始めたのが、劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」のエンディングテーマ「去り際のロマンティクス」、まさかガンダム曲3連打とは驚かされた。以前ガンダム縛り歌枠を生配信していた彼女だが、ここで思いっきり披露するとは思っていなかった。
「ガンダムシリーズからわたしの大好きな3曲を歌わせてもらいました!」と嬉しそうにMCしつつ、「次の楽曲も、これまた大好きな曲。『マクロス』シリーズからカバーさせていただきます」とMCし、「いけないボーダーライン」を披露。続いて「Hacking to the Gate」「Shangri-La」へと歌っていった。
こうしてみると、奥井雅美、米倉千尋、いとうかなこ、angelaのatsuko、ワルキューレのJUNNAと、芯のあるしたたかさを感じさせる女性アニソンシンガーの系譜を意識しているのは明白で、Blitz Wingもといネットカルチャーの中でも王道・定番の道を往こうというのがヒシヒシと伝わってくる。
そんなことを思っていると、MCを挟んで「oblivious」「ダイアモンド クレバス」「THERE IS A REASON」とミドルテンポ~スローバラードな楽曲で、今度は強かさではなくシットリと質感を表現していく。Kalafina「oblivious」とMay’nの「ダイアモンド クレバス」はもちろん名曲だが、筆者としては鈴木このみの「THERE IS A REASON」を唄うとは驚きであった。
ここまで皇が唄っていた楽曲は、アニソンファンならば一度はタイトルを聞いたことのある楽曲ばかり。だが鈴木このみの「THERE IS A REASON」は、隠れ名曲ともいって差し支えない名アニソンバラード。彼女のアニメ好きっぷりを感じられた。
「今日は遠いところから来てくださった人もいると伺っています。本当にありがとうございます」
「わたしのオリジナル楽曲は、どの曲もさまざまな角度から慈愛をテーマにしています。これまでの活動を通して、みなさんとの関係も深くなっていると思います。そんなあなたに向けて、わたしの愛と想いを歌に乗せて唄います」
MCでこう言葉を重ねて唄ったのは、自身の楽曲「I Promise You」「セントエルモの火」の2曲だった。どちらともミドルテンポ、かたやシンセポップ、かたやバンドサウンドをイメージした曲なのだが、芯の入ったしたたかさとつややかさを兼ねた歌声に、この日集まったファンはウットリと聞き惚れていた。
ここからラストへ向けてスパートをかけていく。「私がリスペクトしてやまない水樹奈々さんの楽曲です!みんないける!?」と煽ってから唄い始めたのは、「禁断のレジスタンス」「Exterminate」の2曲。水樹奈々楽曲でもトップランクにハイボルテージな曲であり、それがゆえに歌いづらさもある2曲なのだが、皇は今日一番のパワフルさで歌いきってみせた。
こうして迎えた本編ラスト。彼女が唄ったのは新曲、その名も「Dialogue of Revolution」だ。自身の内なる気持ちを込めたというこの曲、さきに唄ったオリジナル曲と違い、ストリングス・シンセサイザー・バンドサウンドが混ざりあったアップテンポな質感は、まさに「THE アニソン」といえようオーセンティックさを漲らせた1曲。高揚感やエネルギーに満ち満ちたパフォーマンスで本編を締めたのだった。
早々にアンコールへと移ると、JAM Project「SKILL」のあのイントロが流れ始める。本編17曲を唄って休む間も多くはなかったが、まだまだ歌い足りない!と言わんばかりにフルパワーで唄っていった。最後に皇は「ライブをするときに大切にしている、誰かのためじゃなく、あなたのために歌いたい。この心からの想いと愛を、歌に込めて唄います」とMCし、伊藤由奈の「ENDLESS STORY」を最後に、しっとりと披露した。
途中彼女は「このライブの裏テーマとして、強くと美しくを掲げていた」と語っていたが、まさにそれを体現するようなアンコール2曲、そして歌唱を見せてくれたのだった。
振り返ってみると、唄っているあいだに観客を煽る「ハイ!」という掛け声、その後の煽る動きや身振り手振り、なによりMC中の話し方に至るまで、水樹奈々を始めとするさまざまな女性アニソンシンガーからの影響を感じられた。
ライブ中には「いつかオリジナルソングだけでアルバムを作ったり、ライブをしてみたりしたいよね !?」とファンにむけて訴えていたが、そんな彼女が今後どのような音楽を作り、活動していくのか、非常に見ものである。
●朝倉杏子セットリストM1. Love Cheat!M2. アプリコットブロッサムマジックM3. ポニーテールとシュシュM4. ハッピー☆マテリアルM5. サインはBM6. 星間飛行M7. Mela!M8. ストロボメモリーM9. 誇り高きアイドルM10. 走り出したらM11. リフレクティアM12. マジ恋ぷれりゅーどLOVEアンセム
●皇美緒奈セットリスト
M1. 輪舞-revolutionM2. nowhereM3. 甲賀忍法帖M4. 嵐の中で輝いてM5. Meteor-ミーティア-M6. 去り際のロマンティクスM7. いけないボーダーラインM8. Hacking to the GateM9. Shangri-LaM10. obliviousM11. ダイアモンド クレバスM12. THERE IS A REASONM13. I Promise YouM14. セントエルモの火M15. 禁断のレジスタンスM16. ExterminateM17. Dialogue of Revolution(新曲)
*アンコールM18. SKILLM19. ENDLESS STORY
(TEXT by草野虹, Photo by 塙薫子)
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引用元:https://panora.tokyo/archives/91093