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【4回連載】VTuberビジネスの現在位置と展望 #2「VTuber市場の概観(事業構造、市場規模)」 | PANORA


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【4回連載】VTuberビジネスの現在位置と展望 #2「VTuber市場の概観(事業構造、市場規模)」
2024年12月29日 19:35 VTuber

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*本寄稿はnoteよりの転載となります
本稿はVTuberを題材に、そのビジネスや経営戦略を考える上で重要と思われる情報整理と同時に、その展望についても考えてみる月1連載形式のnoteである。
#1では先ずVTuberという概念そのものについて、および2024年現在で主流となっている事業モデルについて整理を行なった。
【#1のサマリー】・VTuberとは「タレント」と「IP」の機能をミックスした新しい仕組みである・VTuberの成立には「タレント」と「IP」の両立が不可欠。「中の人」が変われば同一のVTuberとして機能できない・VTuberは見た目や社会的アイデンティティの影響を軽減できることや、アニメライクな見た目を活用した強みを持てる可能性がある・現在は「2Dモデル×大量投入によるタレント事務所モデル」がVTuberビジネスの中心となっている
#2ではVTuberビジネスの事業構造を理解すると同時に、VTuber市場の成長ドライバーについて考察をしている。
本連載は、下記スケジュールで引き続きVTuberビジネスの現在位置と展望について議論を行う予定である(※本連載はPANORA様にて転載を頂いております)
#1『前提認識の共有』notePANORA#2『VTuber市場の概観(事業構造、市場規模)』 今回#3『主なプレイヤーとその戦略方向性の整理、VTuberビジネスの展望仮説』:1/23(木)投稿予定#4『業界関係者インタビュー』:2/27(木)投稿予定
目次
VTuberビジネスの事業構造VTuberビジネスはどのように稼いでいるか?参考)YouTuber事務所との違いグッズ事業の成長性VTuberのグッズはどのように販売されているか?今後もグッズ事業の重要度は高まるのか?グッズ以外の事業セグメントの成長性VTuberタレントあたり収益の成長性はどの程度か?「タレント機能の限界値」の経営への影響はなにか?市場規模
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VTuberビジネスの事業構造
VTuberビジネスはどのように稼いでいるか?
VTuber事務所の事業セグメントは、トップ2社(AnyColor社、カバー社)の公表資料を参考にすると、「グッズ」「配信」「ライブ・イベント」「タイアップ」に大別される。
VTuber事務所の収益構造
この構造は、#1で整理した通りVTuberがIP機能とタレント機能の両面でマネタイズ出来ることを示している。
セグメント毎の必要機能
参考)YouTuber事務所との違い
YouTuber事務所(例:UUUM社)とVTuber事務所は、しばしば同列に語られるものの、実際には異なる業態と考えた方が良い。
YouTuber事務所とVTuber事務所の比較
YouTuber事務所は既に活動をしているYouTuberを自社ネットワークに組み入れ、マネジメント機能の提供や広告案件紹介を行っている。すなわち活動主体者はあくまでYouTuberであり、事務所の機能は活動支援である。対してVTuber事務所は、IPとしてVTuberをデザインしつつ、「中の人」と一体でコンテンツをつくっている、すなわち事務所自身も活動の主体者という違いがある。
その他にも、グループとしての活動を基本としていることから、同じ事務所の所属同士でコラボレーションをすることや大人数企画を行う点で、「個」の配信者を束ねるYouTuber事務所の仕組みとは異なっている。
グッズ事業の成長性
VTuberのグッズはどのように販売されているか?
売上構成からも分かるように、VTuberビジネスにおいてグッズの販売は重要といえる。ではVTuberグッズがどのように販売されているのか?を整理すると、先ず「季節・記念行事連動×ユーザーへの直接販売形式」が挙げられる。
VTuberのグッズの興味深い点として季節や記念行事に連動したグッズの多さが挙げられる。例えば『にじさんじ』のVTuberである天宮こころの本日(2024年12月26日)時点でオフィシャルストアから購入可能なアイテムの約8割が、季節やイベントに紐づいて販売されたものである(※他のVTuberを参照すれば比率は変わるものの、有識者によれば「季節・記念行事連動販売」が多い傾向は他のVTuberでも概ね同一とのこと)。
にじさんじオフィシャルストアの天宮こころのページ
VTuberグッズの販売形式
この「季節・記念行事連動販売」は、IPおよびタレント機能の両方を持つVTuberと相性が良い販売形式とも捉えられる。
すなわちVTuberが配信を通じて時節に沿ったコミュニケーションを視聴者と行うことで、共通の思い出という付加価値を備えたVTuberグッズが誕生する。端的には、恋人同士・友人同士で誕生日や記念日を祝うことに近い感覚を生み出すことで、なにかしらのイベント毎にグッズを販売することに成功している。
ただし、このような時節に沿った期間限定的なグッズを高頻度で販売する形式は実店舗チャネルと相性が悪いことは想像に難くなく、ECチャネルを活用することで、イベント毎にユーザーへ直接届けるサプライチェーンを構築する必要が出てくる。実際にVTuberビジネスの世界では、黎明期から現在までBOOTHのようなネットショップサービスを活用して「季節・記念行事連動販売」が行われてきた他、トップ2社は2021年頃から自社ECの運用をはじめている。
参考までに現在のトップ2社のサプライチェーン全体をみると、より内製化が出来そうな部分はあるものの、企画とEC部分を先ず抑えることによって「季節・記念行事連動×ユーザーへの直接販売」を高頻度で回す体制が構築されていることが分かる。
グッズ事業のサプライチェーン
今後もグッズ事業の重要度は高まるのか?
売上高の構成比をみるとグッズ事業はその重要度を年々高めている。売上高全体が拡大しているため、金額のインパクトも大きい。
売上高構成比率の推移
「季節・記念行事連動×ユーザーへの直接販売」がVTuberの得意領域と述べたものの、この領域は今後も成長する余地はあるのだろうか?そして、その他の領域はどのように評価できるだろうか?
グッズ事業の成長性仮説
(外部からみたラフな仮説ではあるものの、)現時点の見立てとしては、グッズ事業は全体的に成長余地があると考えられる。
「季節・記念行事連動×ユーザーへの直接販売」は、所属するVTuberの数が増加すれば収益が増やせる体制が整っている(あるいは整えやすい)他、「記念行事」を新たに企画することも不可能ではない。

それ以外の領域についてはどうか。
「季節・記念行事連動販売」がリアルな店舗チャネルと相性が悪いことは否めないものの、ポップアップストアのような形態を活用することで同一商品を集中的に販売できる可能性はあるだろう(実際に、アニバーサリーにあわせたポップアップストアが開催されている事例は徐々に確認できるようになっている)。
にじさんじの男性ユニット「ROF-MAO」のポップアップストア事例
「常設販売」は、企画力やサプライチェーン構築等、現時点体制との差分はあるように見受けられるものの、あえてアンタッチャブルな領域とする理由も見当たらない。見方は逆になるものの、「店舗に通年で置いてもらえるグッズ」を開発することでVTuberファン以外の層へアプローチ可能になるかもしれない。
「季節・記念行事連動×ユーザーへの直接販売」をコアに、高頻度でIPのグッズ化を回しているVTuber事務所であるものの、埋めきれていない領域は残されている。したがって「季節・記念行事連動」の強化だけでなく新規領域(「常設販売」や「店舗での販売」)への拡大も十分に考えられるオプションではないか。
グッズ以外の事業セグメントの成長性
VTuberのIP機能を発揮したグッズ事業には成長余地があるといえる。では、タレント機能の事業セグメントはどのように捉えるべきか?
成長性という観点からすると、現時点では配信事業とライブ・イベント事業、およびタイアップ事業を含めても、やはり最も有望なセグメントはグッズ事業と捉えている。この理由には、タレント機能で稼ぐ上での「悩ましさ」がある。
VTuberタレントあたり収益の成長性はどの程度か?
先ずタレント機能を発揮できる稼働時間には限界がある。1度グッズを作った後は、比較的に自由な展開・拡大が可能なIP機能と異なり、VTuberの稼働時間と常にトレードオフなのがタレント機能である。
稼働時間に限りがあるとすると、時間あたり収益はどの程度高められる余地があるのだろうか?このためタレント機能(タイアップ/ライブ・イベント/配信事業)のみの売上高を、各期末時点のVTuber数で割ったものが次のグラフである。
VTuberあたり収益(タレント機能のみ)
CAGR25%程度でVTuberあたり収益は伸びつつ、現在では1億~2億円/人に達している。VTuberあたり収益成長率を同水準、むしろ今後は緩やかに鈍化していくものとすると、平均3~4億円/人くらいの水準は見込めるものの、平均10億円/人のような世界は中々遠いように思われる。
また2社間で2倍以上の開きがある点は、AnyColorの方がVTuber数が多く、またカバーの方がYouTubeチャンネル登録者数ベースで上位を占めていることを踏まえると、平均値の差としてそこまで違和感はない。
以上を整理すると、下記のような2軸でタレント機能を活用した収益最大化のポイントを探っていくことになるだろう。
タレント機能収益最大化仮説
現時点ではこのバランスについて明確な仮説は打ち出しにくい。
しかしながらタレント機能を活用する事業には、稼働額(稼働時間×稼働単価)に限界値があることは考慮して戦略策定をする必要があることは言えそうである。
「タレント機能の限界値」の経営への影響はなにか?
少々道を逸れると、稼働額の最大化は経営側とタレント側の綱引き状態、まさに「経営とクリエイティブの両立」という問いにも繋がる。
さらに、仮にタレント機能の事業セグメントそれぞれに事業トップを置いた場合(例:ライブ・イベント事業部長)を考える。すると当然ながらトップは担当セグメントの収益を最大化したいため、タレントが自分達の事業に稼働を割いてくれるように囲い込む、としたハレーションが起きることも想像されるだろう。
「タレント機能の限界値」を踏まえ、どのように戦略を構築するか?そしてどのように”タレント稼働時間の取り合い”が起こらない組織をつくっていくのか?という問いは大変興味深い。しかしながらこの議論の続きは、是非#3でさせて頂きたい。
総じて、少なくともタレント機能軸の戦略変数はIP機能軸よりも限定的である。
収益をあげる余地が残されていること、経営として比較的自由に戦略を描けること、収益の根源であるVTuberの取り合いや疲弊といったハレーションが生じるリスクが小さいことを踏まえると、相対的にグッズ事業はより有望なセグメントであろう。
ただしIPとしてのVTuberを育てるためには、タレント軸の活動も必要になるため、IP軸にだけフォーカスすれば良いということでもない。このバランスについても#3のトピックに加える予定である。
市場規模
以上により展開されているVTuberビジネスの市場規模は、2023年度時点で約800億円である。
VTuberビジネスの市場規模
この数値はしばしばVTuberビジネスを考える上で引用されている数字のため、業界において概ね共通した認識と捉えている(例えば、「「キズナアイ」から8年、VTuber国内市場規模800億円へ」)。また国内VTuber事務所の売上ベースに推計されているため、市場シェアの半分以上がトップ2社によって占められていることになる。
VTuber市場の成長ドライバー
VTuber市場にとってトップ2社の存在感は大きい。よってこれまで議論してきたようにトップ2社のグッズ領域成長が先ずもって市場成長には不可欠である。ではそれ以外に、どのような成長ドライバーが考えられるか?いくつか散発的に挙げてみたい。
海外展開
トップ2社の海外売上高比率をみると、海外展開をより強化する余地はあると考えられる。
海外売上高比率
実際にトップ2社を中心に海外展開は走り出しつつある。
例えばカバー社は、2024年における海外展開関連アクションとして3月に北米拠点を設立している他、8件の海外イベントを開催・出展している等、本格的な海外展開を視野に入れている。
カバー社の海外イベント出展状況
海外展開を行う上で、日本タレントを輸出するのか?英語/現地語に対応したタレント(例:ホロライブEN)を主軸とするのか?グッズを海外展開する上でどのようなサプライチェーンを構築するのか?その上で適切なパートナー企業は?将来的に内製化を狙うのか?……といった様々な検討論点が出てくる。
その他にも人材獲得や、既に指摘した「タレント機能の限界値」も論点になるとすると、海外展開が花開くまでに今しばらく時間は要するかもしれないものの、VTuberの浸透が日本ほど進んでいない諸外国は、明らかに市場として開拓余地がある。
新たなプレイヤーの台頭
VTuberの総視聴時間に関するデータを踏まえると、第3、第4の勢力が市場成長を牽引する可能性もある。
新たなVTuber事務所が台頭してくる可能性が考えられる他、興味深いのは企業に所属しない所謂「個人勢」が視聴時間の35.6%を占めている点である。個人勢VTuberの市場は、大量の小規模活動でほとんどが構成されているフラグメント市場的な構造である。
個人勢VTuberの活用を考えている事例として、日本テレビの子会社であるClaN Entertainmentは、MCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)としてVTuberを対象にUUUM社に近いサービスを提供しているとみられる。
ただし「個人勢」を束ねることでどのようなビジネスをつくるのか?については別途検討が必要である。少なくとも事務所的な体制とは異なる方法になる他、UUUM社は近年では業績の低迷が指摘されているため、MCNモデル自体のアップデートも議論されるべきではないだろうか。
新規事業の可能性
VTuber事務所に視点を戻したとき、VTuberのIP機能およびタレント機能で出来ることは既にやり尽くされたのだろうか?
恐らくそんなことはなく、両機能において未開の地はまだまだあると考えられる。
例えば既存の芸能プロダクションの領域、すなわちVTuberが芸能人のシェアを奪うことも可能かもしれない。少々ユニークなものとしては、VTuberと漫才をする事例やVTuberが映画主演を務めた事例がある。
漫才の相方をVTuberにしている事例
VTuberが映画の主演をした事例
IP機能も、さらなるメディアミックスの可能性は十分に考えられる。
例えば、カバー社は自社IP×メタバースである『ホロアース』を開発・運営している。ホロライブ所属タレントと一緒に、ファンが「ホロアース」の世界を体験できる仕組みをつくることで、自社IPを起点とした新たな収益源を生み出そうとしている。将来的には課金型のデジタルファッションを実装することで、「グッズ×デジタル」構想も打ち出している。
ホロアースのイメージ画像
発散的にタレント機能とIP機能の両方において新規事業の可能性を提示した。これ以外にも、様々な可能性があるだろう。
ただし既存グッズ事業が先ずもって有望という点や「タレント機能の限界値」がある点、海外展開が(恐らく先に)必要といった点を踏まえ、VTuber事務所としてどれだけのリソースを新規事業に投下すべきか?は重要な論点である。
いずれにせよ、VTuberビジネスの成長領域は未だ幅広く考えられるため、VTuber市場全体は引き続き成長トレンドであるとみている。
ただしこれまで挙げてきた要素のうち、どの要素がどれだけ成長を牽引していくかは議論をし尽せていないため、具体的にどのような成長曲線が今後描かれていくかは判然としていない。グッズ領域の成長は重要なドライバーであることは間違いないものの、例えば「VTuber IP×メタバース」が急激に成長することも考えられるため、今後の成長ドライバーの変化には注視をしたい。
まとめ
#2の議論の整理は下記の通りである。
【#2のサマリー】・VTuber事務所の事業は「グッズ」「配信」「ライブ・イベント」「タイアップ」に大別される・成長性の観点からみると、「グッズ」が先ずもって有望な事業セグメント。既存領域の強化に加え、新規領域への拡大も検討されるべきではないか・「配信」「ライブ・イベント」「タイアップ」にも成長余地は見出せるものの、VTuberの「タレント機能の限界値」を踏まえた戦略策定が必要となる・VTuber市場規模は約800億円かつトップ2社による寡占的な構造である・既存領域の継続的な成長に加え、海外展開や新勢力の台頭、新規事業が加わることでVTuber市場は引き続き成長していくとみられる
#3では、これまでの議論を踏まえ、VTuberビジネスの展望についてご議論をさせて頂きたい。
そのため、すでに名前が挙がっているトップ2社を含め、主なプレイヤーとその戦略方向性について整理を先ず行った後、議論の総括としてVTuberビジネスの展望、具体的には成長論点の整理をしたい。
【#3の論点】・VTuber市場にはどのようなプレイヤーがいるか?どのような戦略の違いがあるか?・VTuberビジネスの展望を見極めるにあたっての論点はなにか?
本記事の執筆者は株式会社コーポレイトディレクションの松元です。
経営コンサルタントとして様々な業界の新規事業策定および実行支援、中長期経営戦略策定支援業務等に従事している他、特にバーチャル×エンタメ/コンテンツ領域に関心があるため、VTuber他、メタバースやXR分野のウォッチをしています。
略歴:慶應義塾大学を卒業した後、三井物産株式会社入社。MBA取得を経て、現在に至る
主要プロジェクト:【新規事業開発支援】・建材メーカーの新規事業策定支援・ヘルスケア企業の新規スポーツ関連事業策定支援【経営戦略策定業務】・放送局の新規メディア事業成長戦略策定支援・製薬企業の東南アジア展開戦略策定支援・玩具メーカーの中期経営計画策定支援【調査関連業務】・放送局の事業投資に向けたビジネス・デューデリジェンス・医療機関買収に向けたビジネス・デューデリジェンス
お問い合わせ先:[emailprotected]
最後までお読みいただきありがとうございます。次回も、よろしくお願い申し上げます。
また最後になりますが、#1へのご反応・コメントありがとうございます。拝読させて頂きつつ、記事作成の参考とさせて頂いております。

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...以下引用元参照
引用元:https://panora.tokyo/archives/99616

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