2023年9月21日~24日開催中の東京ゲームショウ2023(TGS2023/21日、22日はビジネスデイ)。
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開催2日目となる2023年9月22日にディースリー・パブリッシャー(D3P)ブースにて行われた衝撃のステージ“業界ご意見番が斬る!『Ed-0: Zombie Uprising』”をリポートする。
目次閉じる開く
ゲームが売れなかった理由を考える
『Ed-0』はなぜ売れなかったのか
世界累計販売本数は約13000本
販売本数内訳:日本約2500本、北米約2400本、アジア(日本除く)91本
ゲームのデキは悪くないのに、なぜここまで“無風”なのか
ゲームが売れない典型的な理由
タイトルが読めなぁい!
ゲーム内容自体はやや好評
誰に対して売るのか?
このかわいい女の子で遊べないのよ!
長期のアーリーアクセスが悪い方向に?
日本で5000本なら海外では5万本売れる?
弟者の再生回数123万回転
まとめ:なんで売れなかったのか?
『エドゼロ』を無料で遊ぶチャンス!
ゲームが売れなかった理由を考える
本ステージは、ディースリー・パブリッシャーから2023年7月13日に発売されたローグライクアクションゲーム『Ed-0: Zombie Uprising(エドゼロ ゾンビ アップライジング)』にまつわるもの。
このゲームがびっくりするほど売れていないのだという。
あまりに売上予想を下回る販売本数となってしまったがために、「どうしてこんなに売れないのか?」ということをみんなで考える企画だ。なかなかすごいコンセプトである。
またその内容がものすごい。“歯に衣着せぬ”という言葉があるけれども、いくらなんでもこんなに率直に、赤裸々に語るステージはほかにない。
発言者は全員D3P社員ではないから遠慮なく本作への感想をぶつけまくる。発言はきびしいものにならざるをえないし、同作のファンにとっては「俺は楽しいと思っていたけどそんなに評価が低かったのか……」とショックを受けるものであるかもしれない。
しかし、それでも失敗から得られる経験としてゲーム業界全体のために非常に貴重なものがあったり、また、ゲーム開発やマーケティングという観点からも重要だと思える提言がいくつも飛び出していた。ゲーム業界以外のビジネス分野にも共通する内容もあり、その価値を感じていただきたく、本ステージで語られた内容についてまとめていく。
東京ゲームショウ2023(TGS2023)最新ニュースはこちら
D3Pステージ生放送(9/22)【TGS2023 Day2】
※本コーナーは動画1:39:00ごろ~
ステージに登壇したのは、
バンダイナムコスタジオ 原田勝弘氏
サイバーコネクトツー 松山洋氏
KADOKAWA Game Linkage 林克彦ファミ通グループ代表
の3名。旧知の仲であり、年齢が近いということもあってか、遠慮のない応酬がくり広げられた。
『Ed-0』はなぜ売れなかったのか
まずは、PVを見て『エドゼロ』を改めて紹介。
本作が江戸×ゾンビ×ローグライクアクションであり、
高難度ダンジョン
超ランダム性
和×ゾンビ
という特徴を持つ作品であることが語られた。続いて総売上などのデータへ。
世界累計販売本数は約13000本
ハードはPS5、XSX|S、PC(Steam)対応で、2022年4月から2023年7月の長期にわたるSteamのアーリーアクセス時に購入すると、低価格で購入できた。
販売本数内訳:日本約2500本、北米約2400本、アジア(日本除く)91本
続いて公開されたのは、販売地域やハードの内訳。
プレイステーション5版では、日本ではパッケージ版2480本、ダウンロード版1826本(計4306本)を販売。北米、欧州、アジアでは計1489本を売り上げた(日本以外はすべてDL版)。
XSX|S版は2831本、Steam版はアーリーアクセス含め4487本の販売となっている。これらをすべて合計すると、ワールドワイドで13113本になる。
原田こういう数字を公開しているのは初めて見た、ふつうは社内資料だよ。
林D3Pからは、日本よりも海外で販売していきたいということを聞いていました。しかしこの数字では、1.3万本のうち約半数が日本で売れています。その時点で海外にリーチしていないことが読み取れるわけで、何らかのエラー、コンセプトエラーが生まれているように見えますね。
ゲームのデキは悪くないのに、なぜここまで“無風”なのか
続いて、議論を進めるにあたってのテーマを改めて設定。
それは“ゲームの出来はそこまで悪くないのに、何故、ここまで無風なのか!?”というもの。
なお、これは登壇者たちが制作したスライドではなく、D3Pのプロデューサーが制作したものであり、登壇者がむやみに本作を悪く言っているわけではないという点について念が押されていた。
ゲームが売れない典型的な理由
続いて、まずは一般論としてのゲームが売れない典型的な理由がいくつか例示された。それは
クオリティーが低い
コンセプトが悪い
タイトル認知が低い
というもの。ここで原田氏が質問。
原田そもそもこの3人の中で『エドゼロ』を遊んだ人はいるんですか?
この問いに手を挙げたのは松山氏のみ(一応、林氏もステージ直前にプレイはしたとのこと)。
松山オイ! 何しに来てんだこのステージに!
原田そもそもD3Pってバンダイナムコのグループ会社で、『エドゼロ』のプロデューサーも以前の部下だったんだよ。それでセールスが振るわなくて、「どうしたらいいんでしょう」と相談を受け、SteamキーとPS5のパッケージ版を送ってもらった。
でもパッケージを手に取ったら「わかったな」という気持ちになって、そこからプレイしていない。パッケージは見ました。プロデューサーから1時間くらい説明も受けたんだけど……プレイはしていませんで……。
林でもそこから掘り下げていくと、パッケージをもらってプロデューサーからプレゼンを受けても、原田さんはゲームをプレイするに至らなかったわけですよね。その理由は何なのでしょう?
原田まず、プロデューサーも言っていたんだけど、評判が聞こえてこなかったんですよ。Steamの評価を見てみると、このジャンルを好きな人からはまあまあ好評を得ているんですけど、僕はD3Pだから最初はもっと“バカゲー”みたいなものを想像していたんだけど、パッケージの裏を見ると“「脳に汗をかけ」”と高難度であることが強調されていて、D3Pっぽくないなと思ってしまった。発売する会社の感じってあるじゃないですか。
松山わかりますけどね。
林D3Pのゲームと言えば、むしろ逆にストレスが溜まっているときに何も考えずに遊びたいような。
原田プレイヤーは全員が全員AAA(トリプルエー)タイトルばかりを遊ぶわけではないじゃないですか。たとえば僕は意外にもストラテジーゲームをよく遊ぶのですが。それぞれに好みがあってそこにいかに刺さるか? というのが重要だと思うんですよ。だからそこがうまくいってない、刺さるべき人に刺さっていないのかなと。
原田D3Pが俺たちに脳に汗をかかせにきた、これはちょっとしんどそうだな、と思っちゃって。もっと元気があるときにやろうと。D3Pのゲームってむしろ、ストレスを発散したいときに遊ぶイメージがあるんだけど、どうもそうじゃないらしいと。
松山じつは僕も、ソフトを送ってもらったんだけど、TGS直前にようやく遊んだ。いろいろ優先順位があって、仕事もあるし、遊びの中でも優先順位がありますから、ホラ、やっぱり今週発売された『Lise of P』とか遊ばないといけないわけですし。
タイトルが読めなぁい!
松山そもそも、『Ed-0: Zombie Uprising』というタイトルが読めない!
原田最初見たときEDって書いてあるから、イーディーって読むのかと……。なぜ、タイトルを付ける前に相談してくれなかったんだと思ったね。
林タイトルからどんなゲームか想像がつかない、パッケージビジュアルというか、メインビジュアルもそこまで強いものではないですよね。
原田まずゲーム内容以前のところに問題がある。まあ僕はゲームに触っていないから以前の話しかできませんが。それでも僕はバンダイナムコでグローバルのマーケティングの部長を長らくやっていて、『エルデンリング』や『アーマードコアVI』の立ち上げをマーケティングの部長という立場で見ていたから言うんだけど、まず認知のところができていない。
僕はどんな手段でもお客さんの手に取ってもらって、遊んでもらえればそれはこちらの勝ちだと思っているんですけど、このゲームの場合はそこまで至っていないんですよね。
会場で「『エドゼロ』遊んだよ」という人、手を上げてください。
林ああ、若干名……。
原田D3Pの社長しか手を上げてねえ!
林(笑)。
ゲーム内容自体はやや好評
続けて、Steamストアページの評価とアマゾンレビューの実際の画像を紹介。
原田この“やや好評”というのは、最初は悪かったんだけどアップデートを掛けるごとに改善されていっているんですよね。しかし数字が140件ではやはり少なくて、せめて10倍の1400件ほどあれば初めて評価されていると言えるかなと思います。
林アマゾンレビューも5件しかなく、いいも悪いもまだ『エドゼロ』というゲームが存在していることが世に知られていないんですよ。
原田5件じゃ参考にならない(笑)。
林本来的にはもっと数字が増えて、ここが悪いあそこがダメということを言われて、じゃあ改修していこうかとなるべきだろうと思うのですが、そこまで立てていない。
原田そういうことだと思います。プロデューサーがかわいそうなのは、彼はバンダイナムコの第一線でプロデューサー業務をやっていたんですよ。それでいまD3Pに行ってるんですけど、D3Pって、酸素が薄くて重力が強い“時と精神の部屋”みたいな――
松山“精神と時の部屋”ね。
原田そう、D3Pって精神と時の部屋みたいなところなんですよ。
バンダイナムコってね、皆さん「バンナムといえばDLCだ、課金要素だ」というイメージがあるかもしれないんですけど、会社の力って強いんですよ。マーケティング、パブリッシングの力がすごくあるんです。バンダイナムコっていうだけで売れかたの数が違うんだもの。
松山(深くうなずく)。
林ワールドワイドで強いですよね。
原田あのフロム・ソフトウェアさんが僕らとパートナーシップ組んでやるくらいですよ。バンダイナムコって強いんですけど、そのバンダイナムコでやっていたプロデューサーが、酸素が薄くて重力が重くてという環境の、D3Pに行ってバンダイナムコと同じやりかたでやってしまったのかもしれない。
林ああ~なるほど。
原田マジメにゲームを作ってマジメにゲームを売って、マジメなやりかた、攻めかたをそのままやってしまったんじゃないかなと。
誰に対して売るのか?
林これは私の意見ですけど、“誰に対して売るのか”という見極めが弱かったのではないかと感じます。この組み合わせで作ったらおもしろいんじゃないかな? という発想で出発して、誰に対して売るのかというアイデア、その人に売るためにどういうキャラクターなりシステムなり設定なり、どういうフックが必要なのか? という視点が置いてけぼりだったのかなという印象を受けました。
松山これはスタッフとも遊んで話していたことなのですが、正直、ローグライクだからおもしろいわけではないし、ゾンビと戦うからおもしろいわけではないじゃないですか。ほかのもゾンビと戦うゲームってありますけど、ちゃんとそのおもしろさを体現した状態で作られていますし、理屈で物を作って売っても誰にも届かないの典型だったのかなと。
あと、数時間のプレイですけど、プレイした上で言いますが、単純に不出来ですよ。D3Pの方からはね、「意外とデキは悪くないけど売れてない」という風に言ってくれと言われましたが、そこがズレています。単純に不出来ですよ。
ちゃんとアクションゲームとしても成し遂げることはできていないですよ。キーアサイン(操作ボタンの配置のこと)も含め、アーリーアクセスが15ヵ月間もあったとありますが、「15ヵ月間も改善してこの状態!?」というのが素直な感想です。
原田でもお前、「キーアサインが『エルデンリング』と似てるところがいい」ってめっちゃ褒めてたじゃん。
松山いいところは『エルデンリング』と操作が似ているというところであって、それ以外はアクションも気持ちよくないし、そもそもね、△ボタンで拾うと同時に、投げるんですよ。クナイとか拾いたくても投げちゃうのよ!
林投げますね。
松山なんで△ボタンで(拾うアクションと投げるアクションを)いっしょにしたん!? って。
「拾うと同時に……」
「投げちゃうのよ!」
松山チュートリアルでわかるのよ! 始めて15分よ! 15ヵ月何やってたん!? って……まあでも、ああいうところはすぐ改善できるから。
林その感想は僕もいっしょです(笑)。
松山そうやろ!?
林すぐ木に投げちゃって。
松山でもあそこチュートリアルやからやらんとあかんのよ。始めて15分でわかるダメなところをなぜ直さない!? っていうところに、このゲームの姿勢が出ちゃっているのよ。
原田でもその話聞いて、俺、がぜん興味湧いてきたけどね。
松山ハハハハハ!
林僕は松山さんよりかは長くプレイしていて、『風来のシレン』のアクション版みたいな感じで、スルメゲー的に遊べるかなと思いました。なんですけど、潜って潜って、ボスにやられてまた最初からとか、ロックオンのシステムとか、もっとやりようがあるよなというところは目に付きましたね。
だから僕の感想ですけど、万人にはオススメできないですが、こういうゲームが好きな人はいると思うんですよね。ローグライクで、完全によくできてはいないけど、だからこそ楽しめると言うか。
松山いわゆる“バカゲー”枠ですよね。お酒でも飲みながらゲラゲラ笑ってやろうというタイプの。だから、「そのポジションをちゃんとやろう!」なんですよ、まず。
林それはその通りですね。
松山ただ、残念ですが現状ではそこまでいたってない。で、いちばんよくないなと思ったのが、これ改善ポイントなんでよく聞いてほしいんですけど……。
このかわいい女の子で遊べないのよ!
松山これ見て! メインビジュアルにかわいい忍者の女の子いるじゃないですか。この子、遊んでみたいと思うじゃないですか! 遊べないんですよ!!
林あっはっはっは(笑)。
原田えっ、そうなん!?
松山侍と力士とこの子でプレイアプルキャラクターが3人いて、この女の子は、けっこうゲーム進めないと動かせないのよ。
原田最初に遊べるキャラクターが決まってるっていうこと?
松山そう。そういうところからなのよ、お客様が望むことに応えられてない。
原田それは……あかんよな。だってそれ格ゲーで言ったら、パッケージの真ん中にいるやつがキャラセレクトにおらんってことやろ?
松山そう。
原田あかんでしょ、それ。
松山そう。3人いるプレイアプルキャラクターを最初から全員使えるようにするという改善は、いますぐできることなんで。
原田なるほど。まあでも、俺からすると、そこまで遊んでしまっているなら、買ったのといっしょやん。だけど、(セールスの)実態はそこまで行ってないんだもん。そこまで行ってない方が問題だと思う。
松山まあね。
原田ピロシ(松山氏の愛称)はこの女の子を見て「かわいいな、遊びたいな」と思ったわけでしょ。俺はそれ、思わんかったで。
松山(笑)。
原田もうちょっと魅力的に描けなかったかなとか。
林やっぱりなんかマジメに作りすぎちゃっている気がしますね。
原田シリアスなものに見えちゃうし、この絵を見るとズバズバ切るみたいなゲームなのかなと思うんだけど、YouTubeでプレイ動画を見るとそういうわけでもないみたいだし。
林『無双』系ではぜんぜんないです。
原田『無双』系に見えても実際にプレイすると難しくてウーンと頭抱えちゃうような感じだし。それって動画を見ているとおもしろいけど、自分が当事者(プレイヤー)だったとしたら「俺の求めているゲームとはちょっと違うのかな」と思う。だからパッケージビジュアルの時点でそこのズレが生まれてしまっているし、客層というか向けている方向とのズレがある。
ローグライクが好きな方に向けているなら、ローグライクっぽい絵がもっとあったと思う。「絵がダメ」と言っているんじゃなくて、「構成がダメ」ということなんだと思うのですよね、そもそも。
林ということはさっきのスライドの
クオリティーが低い
コンセプトが悪い
タイトル認知が低い
2番目の“コンセプト”がいちばん引っ掛かるところですかね。
原田コンセプトが悪いというのと、タイトル認知が低いというのはニアリーイコールなところがあって、コンセプトがしっかり立っていれば、タイトル認知につながる。このふたつがぱっと見で理解しづらいというのは大いに問題があると思います。
長期のアーリーアクセスが悪い方向に?
林先程も言いましたが、アーリーアクセスを15ヵ月やってしまったというのが、逆効果になったということは考えられますか?
原田ありえると思います。大手のパブリッシャーだったらそのやりかたもアリだったかもしれない。
発売日に向けて“マーケティングビート”と言うんですけど、広告のしかた、話題の振りまきかた、そこに向けてマーケティング予算がありますよね。大手だとその資金も大きいですから、アーリーアクセスをやって評価を上げながら、思い通りのマーケティングができるんですよ。これはコアなゲーマーに向けた高難度ローグアクションです、と。
実際に出番の前にはニコ生のコメントに「『エドゼロ』おもしろいけど難しい」と書かれていたりして、評価してくれる人は実際にいるんです。そういう声も使って一般の人に「これはコアな人から評価されているゲームです、どうですか」と認知を広げて行って、発売日が来て、1ヵ月~2ヵ月よく売れるという手法ができたかもしれません。
林発売日までちゃんと期待感を煽って話題を広げることができる。
原田けれどなにせD3Pなんで、社長にも聞きましたけどそこまでマーケティングバジェット(予算)がないんですよ。そこまでお金を掛けられるわけではない。そうなると、攻めかたを変えなければいけないじゃないですか。
すると、僕はひょっとしたらアーリーアクセスはやらないほうがよかったという可能性まであるんじゃないかと考えています。「何だろうこのゲーム」とミステリアスに演出して、発売日ドンのほうが、まだ行けた可能性があるかもしれない。
だから何もかもマジメにやってしまっているというか。
林期間も長かったですしね。
原田15ヵ月はねえ。
松山私はむしろ逆で、15ヵ月があっていまがあるわけじゃないですか。15ヵ月のアーリーアクセスがあって、世界中の方から意見をもらって改修してのいまなわけで、これがなかったらもっとひどい状態だったかもしれないわけでしょう。だからこの15ヵ月は無駄じゃなかったと思う。
原田いや、あのね……違うと思うな。
松山あ、そう?
原田あの……そのまま、もっとひどい状態でリリースされたほうがいまの数字より売れた可能性があると思う。
松山(笑)。
原田これはすべてのゲームに失礼な言いかたになってしまうかもしれないけど、これよりひどいゲームなんていっぱいあるわけじゃないですか。しかもこのゲームより売れているものが。
これから言うことがすべてだとか真実真理ではないんですよ、この前置きはカットしないでくださいね皆さん。だけど、現実として売れるゲームって中身がいい・悪いで決まってると思ってますか!
東京ゲームショウに来ている人はピュアなゲームファンで、「いいゲームが売れる」と信じたいかもしれないけど、内容がいい・悪いに関係なく、ブランドで売れるゲームなんて死ぬほどあるんですよ!
売れてるけど実際に遊んでみると「ク◯ゲーじゃねえか」って思うゲームってたくさんあるでしょう。
松山紙一重なものは多い。
原田紙一重どころじゃないよ、これより悪いゲームなんていっぱいあるよ絶対!
松山(笑)。
原田遊んでて「ん?」って思って、業界の人に聞いても評判がよくないんだけど売れている、そういうゲームっていっぱいある。だけど、そういうゲームって2~3ヵ月たつと売上がピタッと止まるんですよ。
いいゲームは5~6年売れ続けるんですけど、そうでないと1ヵ月とか、初動で終わる。でも一応売れるというのは、それはブランド、マーケティング、パブリッシングのパワーがあるからなんです。
ゲーム自体の評価や評判で売れるなんて少ないんですよ。やっぱり最初から認知とマーケティングがうまく行っていないゲームは最初から売れないし、あとあとからも伸びるということは稀有です。
だけど、昔って、そんなことはなかったイメージありませんか?
松山まあね。
原田そうですよね。僕もそうです。なんでそうなっちゃったかと言うと、数が違う。昔、みなさんが選べるゲームってそんなになかった。いまは1社で年間150本くらい出すところもあるんですよ。
そうなると当然すべて試遊して選ぶことはできないですよね。じゃあどうやって選んでいるかと言うと、広告とか認知とか、誰かの評判で買うしかないんですよ。それがどう届くかで売れちゃうゲームっていうのはあるんです。
だから『エドゼロ』の認知が届いていないということ、中身以前の問題だというのは、それ(マーケティングの問題)ですよ。
日本で5000本なら海外では5万本売れる?
松山あと言えることは、じつはこれもっと売れるポテンシャルがあると思うんです。
というのは、いまのゲーム業界って日本国内は2兆円規模の産業なんですけど、グローバルでは22兆円くらいあるんですよね。つまり日本で作ったソフトも、総売上にしめる日本の割合は10%くらいになって当たり前。
原田どんな日本で売れるソフトでも、全体の売上の7割ほどは海外になるくらいですね。
松山だからさっきの表でいうと、日本で5000本で海外で残り8000本しか売れていないということは、しっかり海外のマーケットにもリーチさせれば、50000本くらいは売れる可能性があると思うんですよね。
林Steamで北米での売上が820本というのはおかしいと思います。
原田おかしいおかしい。僕は海外のイベント、サンディエゴ・コミコンで、マイク・タイソンと『鉄拳8』のステージで宣伝したんですよ。あとWWEとかUFCの選手にも来てもらって。マイク・タイソンが来るって言うから観客が数千人くらいきた『鉄拳』ステージで。
「僕はこのゲームのプロデューサーに弱みを握られているから宣伝しますね」って『エドゼロ』を紹介したら、アメリカ人は大爆笑だったんですけど、数字的にはまったく変わらなくて。
林やっぱり無風のまま(笑)。
メディアクリエイトとか、海外サイトとかを見てみても、そもそもレビューされていなかったり記事がぜんぜん上がってないんですよね。おそらくインディー的に口コミで広がるということを想定されていたんだと思います。だけどこういうやりかたをD3Pがするのがそもそも初めてじゃないですか。
だから本当は、正攻法で発売タイミングで海外のメディアに対して「ちょっと取り上げてよ」とアピールをすべきだったかのかもしれない。まあそのリソースがなかったのかもしれないですが。
弟者の再生回数123万回転
松山じつはストリーマーの弟者さんが案件でもなんでもなくこのゲームをやってくれて、けっこう観られていたんですよね。でも、配信者がやっている姿を見ても「自分も遊んでみたい、買ってみよう」というところまでいかなかった。
林日本ではそれなりに数字が残っているというのは、偶発性も含めて、こういうことがあったからなのでしょうね。そういうことが海外では何もなかったんじゃないかな。
原田というわけで『エドゼロ』はどうすればいいんですかね、これから。
松山うちは開発会社なので、どうしてもそういう視点にはなりますが、プレイヤーに長く遊んでもらうにはそれしかないと思うのは、やっぱりやるべき修正をきちんとやることがスタートだと思います。
さっきの、ゲームスタート時には女の子では遊べないこととかね。キーアサインを含めてゲーム自体を、おもてなしの姿勢をちゃんと作ること。やるべきことをまずやるべきです。
林それはしっかりとゲームの中身としてやってほしいと。
松山はい。
原田キーアサインキーアサインって、お前キーアサインは褒めとったやないか。
松山あの、キーアサインが『エルデンリング』に似ているというところだけが褒められるという話であって、あれが正解とは言ってないからね。
原田でも俺は△ボタン押したら拾って投げたくもないのに投げるって聞いたら、逆にちょっとやってみたくなったぞ。
松山(笑)。
原田もっとそういうのないの、もっと。だっていわばファミコン時代のヤバイゲームみたいな感じなわけでしょ? がぜん興味が湧いてきて、むしろ今日この後遊ぼうかなと思ったくらい。
林今日この会場で話を聞いてみて、「『エドゼロ』遊んでみようかな」と思った方いらっしゃいますか?
松山あ、ちょっと増えたね。
原田ちょっと増えたって言っても4人が8人になったくらいやぞ。
林これをもっと増やしていきたいですよね。
原田だからD3Pに言いたいのは、こんなね、暑い会場(冷房の不調か何かで、会場内が暑い状態が続いていた)に来てもらっているお客さんにね、無料でコードを配ったりすればいいのにね。
林暑いですよね。そういう施策もありかもしれないですよね。
原田うちわもらったでしょ、そこに印刷すればいいのに。そのうちわもさ、ゲームの宣伝が入ってて、PS5、Steamって書いてある横に“NOT FOR SALE”って書いてあるでしょ。それ「このゲームが売ってません(非売品)です」って見えない? それでスタッフの方に聞いたら「いやこのうちわが非売品なんです」って言っていたんだけど……そういうとこやぞ、D3P。
松山ハッハッハッハ(笑)。
原田うちわに絶対非売品と入れなきゃいけない、そうするとゲームが非売品みたいに見えるというね。
林みんなマジメに作ってるんでしょうね。
原田D3Pってね、社員がマジメなんですよ! あんな不真面目なゲームいっぱい作っているのに。
俺、D3Pのマジメな社員がバンナムに来たら大活躍すると思うんですよ。酸素が薄いところで……予算という酸素が4分の1くらいしかないところで働いていてね。
松山こらこらこら!
原田そこから急に酸素がたくさんあるところに来るわけだから、大活躍すると思う。だからその逆コースがよくないんですよね。バンナムからD3Pに行くと。突然、薄い酸素、限られた予算の中で……。
とか好き勝手なこと言ってて、どうします? 我々がもしも「D3Pの社外取締役になってくれ」って急に言われたら。
林いや今日のステージ観てて「社外取締役になってくれ」って言われないでしょ!
林だからどうすればいいかという話に戻すと、海外はとくに認知の問題ですよね。
松山完全に、シンプルな認知度不足でしょうね。
原田さっきの売上表の“アジア91本”って、俺がゲームショウで手売りしてももっと売れるだろ!(笑) だから、もうちょっとなんとかできると思うよ。
まとめ:なんで売れなかったのか?
議論が白熱する中で、終了の時間に。司会者に促され、それぞれから「『エドゼロ』はなぜ売れなかったのか?」という理由についてまとめが語られた。
林やっぱり、くり返しにはなりますけど、知られてなさすぎるということでしょうね。とくにターゲットにしている欧米に対して、何か有効な施策が打てたかと言うと、Steamアーリーアクセスくらいしかしてないわけで。
逆に言うといまからでも何らかのアプローチすべきでは。知られて、売れて、「このゲームダメだったな」と言われる方が僕はいいと思うんですよ。それを受けて改善するほうが健全だと思うので。やっぱりまずは、手に取ってもらうために何をすべきか、考えることじゃないかなと思います。
原田ファミ通の点数的には何点ですか。10点満点で。
林う~ん……6点かな。
原田けっこう高い。
松山置きにいったな!(笑)。
司会 では続いて、原田さんお願いします。
原田売れない理由……ディースリー・パブリッシャーだからだと思います。
松山ちょっと(笑)。
林D3Pから発売されたんだけど、“D3Pらしいゲーム”というのとはちょっと違ったのかなと。ユーザーが持ってる、D3Pっぽいゲームというのとイメージのズレがあったということですよね。
原田ああ、そういうことです。フォローありがとうございます。
司会 では最後に松山さんお願いします。
松山単純に不出来な部分を、“バカゲー”のレベルになるくらいまで、まともに遊んでもらえるようになるくらいには改修すべき。残り9割の海外ポテンシャルはあるはずなので期待したいですね。
『エドゼロ』を無料で遊ぶチャンス!
最後に、Xbox Game Pass会員は、9月29日~10月2日の期間、本作を無料で遊べるという施策が紹介された。
原田これはXboxだけなんだ!? SteamとかPS5はなくて……。うーん、そういうとこやぞ、ディースリー・パブリッシャー!
……と、最後まで原田氏は気炎万丈、大盛りあがりのうちにステージはつつがなく(?)終了。
一見、おのおの好き勝手に悪口を言っているようでありながら、原田氏は広報やコンセプトも含めたマーケティングや予算の大切さというプロデューサー的観点、松山氏はいかにプレイヤーに良質な体験を与えるかというディレクター的視点、林氏は届けるべき人に情報を届け認知を広げる重要さというメディア的観点、三者三様の考えが語られたことに気づくのではないだろうか。
そんな貴重な話題が楽しめたステージは、以下の林氏のぼやきとともに幕を閉じた。
林東京ゲームショウで、こんなステージこれまであったかなあ(笑)。
...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202309/22317990.html