『チェイサーゲーム』の原作を務めるサイバーコネクトツ―の松山洋社長が手掛けた『エンターテインメントという薬』(エンタメ薬)という本が発売されたのは6年前の2017年11月1日だった。
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3週間後に手術で全盲になってしまう青年“ヒロシくん”のために、『.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで』を発売前に松山洋社長が届けた話は『エンタメ薬』(KADOKAWA)にくわしい。
漫画家こしのりょう先生による『エンタメ薬』紹介マンガ
マンガ『エンターテインメントという薬 -光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』の続き
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その後、ヒロシくんによる『劇薬 -エンターテインメントという薬の真実-』が公開され、『エンタメ薬』では描かれなかった衝撃の事実が語られた。
ファミ通.com“劇薬 -エンターテインメントという薬の真実-”
今回は、合同会社ブラインドライターズ代表の和久井香菜子が『劇薬』のその後を聞いた。ブラインドライターズはスタッフの9割が視覚障害者で、文字起こしサービスやバリアフリーの提案を行う会社だ。
20年前は、失明する前にゲームを終わらせなければならなかった。ではいまならどうなのか。視力を失っても、人生が終わるわけではない。視覚障害者はゲームを遊べるのか。この先、どんなゲーム開発が望まれるのか。
(以下、ヒロシくんはヒロシ。)
――『劇薬』から6年、近況を教えてください。
ヒロシ僕は主夫をしていて、妻が働きに出ています。娘も小学校2年生になりました。
家の周囲は住宅街でお店などがないので、なにかあったときに助けてもらえるのかが不安です。自治体や学校に相談をして、理解してくれる人が増えてきたので、ちょっとずつ環境を整えてもらえたらいいなと思っています。
“劇薬”では母のことも書きましたが、いまはうまく付き合っています。
――娘さんももう小学生なのですね。だいぶお手伝いができるようになったのでは?
ヒロシ料理は基本的に僕が作るのですが、たとえば冷蔵庫に入っているチューブが生姜なのかニンニクなのか、わからなくなったら娘に読んでもらうこともあります。
――買うときはよくても、帰ってから中身がわからなくなるのは、あるあるのようですね。レトルトなんかも、食べてみてから味が判明するなんて話をよく聞きます。印刷の文字を読むのに『Be My Eyes』などのヘルプアプリを使って晴眼者に読んでもらう人もいるようです。
ヒロシ目の見えている人が家にいないと、照明を使用しないんですよね。妻が盲導犬を飼い始めたので、盲導犬がいるところは照明をつけるようにしていますが、たまに知らないうちにスイッチを押すことがあるらしくて、娘に「なんであそこの部屋の電気がついてるの?」なんて聞かれることがあります。
――パソコンも画面をつけずに使用するので、驚かれる人も多いですよね。紙の本は視覚障害者の方が読むことが本当に難しいですが、デジタルなら大きさや色味を変えたり、音声として読み上げさせたりできますものね。点字を読める視覚障害の方は1割程度と聞きますが、ヒロシさんは読めますか?
ヒロシ手術後に函館の視力障害センターで訓練を受けたのですが、点字を読み書きできる人はほぼいなかったです。
中途障害で点字をゼロから習うのは大変なんですよね。僕はとくに病気の治療によって指先が痺れていることもあって、点字を触っても読めなくて。
なので、手術後に買ってもらった音声が出る“らくらく”ホンで簡単なホームページを作ったりして時間を潰していました。
その後、ガラケーのサービスが終了すると聞き、2年くらい前にiPhoneに替えました。同じ視覚障害者の会のメンバーに詳しい人がいて使い方を教えてもらいました。iPhoneは便利ですね。
――Apple製品は昔からアクセシビリティ(※)への意識が高いので、周囲の視覚障害者はほぼ100%、iPhoneを利用している印象なのですが、iPhoneではどんなことをしていますか?
※アクセシビリティ=高齢者や障害者が身体の状態や能力の違いによらず様々な人から同じように利用できる状態やその度合いのこと
ヒロシ時間があるときはiPhoneでYouTubeを見たり、『冒険者ギルド物語』というゲームを遊んだりします。
これはパーティを組んで冒険するRPGなのですが、テキストが多いので全盲でも遊べるんです。テキストになっていればiPhoneのボイスオーバーという機能で読み上げてくれます。なので、画像が多いゲームは言葉として説明されないので理解がやっぱり難しいんですよね。
――このゲームはほぼほぼテキストですね! 問題なく遊べそう。もともと、どんなゲームが好きだったのですか?
ヒロシゲームは『信長の野望』や『三國志』シリーズ、『SimCity』(シムシティ)といったシミュレーションゲームが好きでした。
冒険ものも好きなので、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』、『テイルズ オブ』シリーズなどのタイトルを遊んでいました。最近よく聞く『Minecraft』(マインクラフト)はどんなゲームなのか分かりませんが、遊べるのであれば遊んでみたいと思っています。
手術をする前に、いただいた『.hack//G.U.』のほかにも家族でNINTENDO64の『パーフェクトダーク』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』、『どうぶつの森』を暇つぶしにプレイしていました。
――手術前に『.hack//G.U.』がクリアーできなかったらどうしようと思ってハラハラしながら『エンターテインメントという薬』を読んでいました。
ヒロシ クリアーするのにギリギリまでかかるなと思って、間に合わなかったらどうしようと思って、僕もハラハラして24時間ぶっ続けでプレイしたりしていたら、思ったよりも早く終わっちゃいました。
しかし『.hack//感染拡大 Vol.1』の発売からもう21年も経つんですね、すごいな。僕個人の希望ですが、もし次回作があるとしたら、バンダイナムコエンターテインメントの人や松山社長といった、制作に深く関わった人物を出演させてほしいってずっと考えているんです。
――そうしたら、視覚障害者が遊べるアクセシビリティ対応をしてもらわないといけませんね。
ヒロシ『.hack』を視覚障害者対応させるにはどうしたらいいんだろう。すごく難しい問題かもしれないけど、全盲モードがあって、ゲームに入った瞬間にピロシ社長が隣に現れて、「僕が介助するよ」なんて言ってつねにいろいろ教えてくれるとか。あと、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のような2Dのマップだったら、全盲向けのバージョンが作れそうですよね。
――初期の『ドラゴンクエスト』は画像がシンプルだし、セリフさえ自動で読み上げてもらえたら遊べるかもしれませんね。読み上げ機能やOCR(光学文字認識。印字や手書きの文字などをカメラで読みこみ文字として認識させる技術)など、技術の進化によって特別にアクセシビリティ対応を指定ないタイトルでもそこそこ遊べるものがあるようです。逆にマップが2Dから3Dになったことで位置の把握が難しく、ゲームが遊べなくなったという声もよく聞きます。
ヒロシじつは以前一度だけ、
「僕らみたいな全盲でも、脳波とかを利用して、ゲームの中に入ったら目が見えるようになるゲームを作ってください」
と、松山社長に相談したことがあるんです。そうしたら
「絶対に作れるとは言えないけど、それに向けて勉強しながら頑張ってみる」
と、言ってくれたので、ちょっと期待しています。何度も言うと重たいのでそれ以降は伝えたことはありませんでしたが、それに近いのができたらすごくうれしいなと思ってるんですよ。
――それは夢が広がりますね……! まずはこうした事情を多くのかたに知ってもらい、そして誰も取り残されることがないよう、アクセシビリティ対応が当たり前になってほしいと思います。いまは多くの人が遊べるアクセシビリティ機能をつけるタイトルが増えています。ヒロシさんにはぜひ、松山社長にプレッシャーをかけ続けてもらいたいです。今日はありがとうございました。
以上ヒロシさんへのインタビューを終了します。
当日インタビューに同席してくださった、サイバーコネクトツ―の担当者によると、「『.hack』の次回作については何も決まっておりませんが、SNSなどで皆様が『.hack』に対する期待の声をあげてくださることが、最新作への後押しになるかもしれません」とのことでした。
皆さんのひとつひとつの声援によって、『.hack』を愛している人が楽しめる『.hack』の最新作にまた会える日を迎えることができるかもしれません。
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...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202311/06286247.html