2023年1月、発表と同時に突然発売されたTango Gameworksが贈る『Hi-Fi RUSH』(ハイファイ ラッシュ)。リズムとアクションを融合させた新感覚の遊び応えが話題を集め、全世界で一躍ヒットした本作が、2024年3月19日にプレイステーション5(PS5)でも発売された。
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これまでにない驚きのゲームシステムと、ハイクオリティーなサウンドで多くのゲームファンを唸らせた『Hi-Fi RUSH』。“The Game Awards 2023”では“Best Action Game”や“Best Art Direction”など5部門にノミネートされ、“Best Audio Design”で最優秀賞を受賞。ほかにも、数々のゲームアワードで賞を獲得している本作が、ついにプレイステーション5で楽しめるようになった。
本作がなぜ幅広い層から高評価を受けているのか、『Hi-Fi RUSH』ならではのリズムアクションの魅力はどこにあるのか……。その理由を新たなプレイヤーに伝えるべく、ゲームの中枢を担ったTango Gameworksの開発陣にインタビュー! さまざまな挑戦がスマッシュヒットへとつながっていく道程を、たっぷりと語っていただいた。
ジョン・ジョハナス
Tango Gameworks所属。スタジオ設立時からのスタッフで、『サイコブレイク』のDLC『ザ・アサインメント』と『ザ・コンセクエンス』、『サイコブレイク2』でディレクターを担当。『Hi-Fi RUSH』は4作目のディレクション作で、初の完全新作に。
小堀修一(こぼり・しゅういち)
Tango Gameworks所属。KONAMIで『BEMANI』シリーズや『メタルギア』シリーズなどの楽曲を制作。 『サイコブレイク』や『サイコブレイク2』に続き、『Hi-Fi RUSH』でもオーディオディレクターを務めている。
阪井圭太(さかい・けいた)
Tango Gameworks所属。10年以上にわたり、数々のアニメ作品で背景美術を担当。プラチナゲームズの『The Wonderful 101』などを経て、 『サイコブレイク』シリーズ、『Hi-Fi RUSH』でアートディレクターを務める。
畠山耕一(はたけやま・こういち)
Tango Gameworks所属。スタジオ設立初期から参加し、『サイコブレイク』シリーズではクリーチャーのアニメーションやプレイヤーモーションなどを担当。『Hi-Fi RUSH』でもリードアニメーターとしてチームをけん引した 。
プレイヤーの記憶に強く残るゲームを目指していた『Hi-Fi RUSH』
――2023年1月に『Hi-Fi RUSH』はXboxとPC向けに発売され、世界中から大きな反響と高い評価を受けました。Steamでは現時点(2024年3月14日)でも2万件を超えるレビューで“圧倒的に好評”となっています。これはもう「本作は成功した」と言っても差し支えないと思いますが、この反響を皆さんはどのように感じられていたのでしょうか。
ジョンいや、あたりまえの結果です!(笑) とてもいいゲームなんですから……というのは冗談ですが、おもしろいゲームができたとは思っています。
本作は発表と同時に発売するという、私たちにとっても経験したことのない手法でリリースしました。約5年の開発期間の中で、ゲームユーザーの誰にも見せずに作っていたのですが、チーム内では「自分たちはおもしろいゲームを作っている」という確信はありました。発売したときは、クオリティーについては自信があったのですが、こんなスタイルのゲームがプレイヤーにどう受け入れてもらえるのか、正直不安はありましたね。
それでも、結果として想像以上の反響をいただけましたし、本作が目指している方向性を多くの方が理解してくださったことが、とてもうれしかったです。
また、発売されてすぐは盛り上がるかもしれませんが、一瞬で忘れられてしまうかもしれない、と不安になったこともありました。それでも、本作は皆さんの印象や記憶に強く残るゲームを目指していたので、長いあいだファンの方々が愛してくださっていることにホッとしています。
小堀純粋にすごくうれしかったですね。開発の初期から「自分たちは新しいスタイルのゲームを作っているんだ」といった感覚はありました。
それと同時に、音楽をテーマにしたゲームが好きなプレイヤーの一定層には受け入れていただけるだろう、そうなったらいいな、くらいに考えていた部分もあります。それが、ここまで大きな反響をいただけるとは予想していなかったので、驚きもありました。
阪井アートの面で言うと、昨今のタイトルはリアル調のグラフィックが主流の中で、本作はアニメ調でシンプルな見た目のアートになっているので、ユーザーからどのように受け止めてもらえるのか、想像がつきませんでした。
きっと一部の方はハマってくれるだろうとは思っていたのですが、ここまで高評価をいただけたことが本当に信じられないというのが、正直な気持ちです。もちろんうれしいのですが、予想外すぎました(苦笑)。ゲーム自体はすごくおもしろいので、触ってもらえれば魅力に気づいてもらえるはずです。
アートでゲームに触れようという気持ちが一歩手前でなくなってしまわないか、不安になったこともありましたが、その不安は一瞬で消え去りました。
畠山Tango Gameworksが手掛けてきたゲームは『サイコブレイク』シリーズや『Ghostwire: Tokyo』といった、リアルなグラフィックのものがほとんどです。また、ここまでアクションに特化したタイトルも初の試みでした。
誰にも見られないまま消えてしまうタイトルにならないか不安でしたが、きっと遊んでもらえればファンが増えるとも考えていました。本作のリズムとアクションには中毒性があると思っていましたが、その中毒性がプレイヤーの皆さんにも浸透していったことがわかって、すごくうれしかったです。
――開発期間は約5年とのことですが、開発チームの規模は?
ジョン開発の初期は少人数のチームで制作していましたが、『Ghostwire: Tokyo』の開発が終わったあたりから、そのチームが合流する形で大勢のメンバーが関わるようになり、一気に仕上げていった形です。
確かに当初は少ないメンバーでの制作でしたが、スケールの小さいゲームにするつもりはありませんでした。私はディレクションしながらシナリオも担当していましたが、ほかのメンバーも自分の役割を超えて、多岐に渡る仕事を担当してくれました。
このゲームに関わった全員がたいへんな思いをしながらも、みんなで協力しあったことで『Hi-Fi RUSH』は完成できたと思っています。
――2024年3月19日にプレイステーション5版がリリースされましたが、今回初めて本作を遊ぶ人も多いと思います。そこで、あらためて開発を振り返っていただければ。
ジョン“リズムアクション”を銘打ったゲームはありますが、そこまで数は多くありませんよね。なぜタイトルが少ないのか、このゲームの開発で理解しました。リズムとアクションを合わせておもしろくすることは相当難しいので、誰もやりたがらないんだな、と(笑)。
全編に音楽が流れていて、ストレスなくリズムに乗せたアクションが楽しめる。ポップでカラフルなアートがアニメーションで動く。これらの要素を組み合わせて最後までゲームを作り切れるクレイジーなチームは、Tango Gameworksしかないでしょう。
――開発の初期段階ではプロトタイプ版が重要な意味を果たしたそうですが、ゲームの原型はそこで確立していたのでしょうか?
阪井ジョンとプログラマーの中村(Tango Gameworks所属の中村祐二氏。リードプログラムを担当)がゲームの原型となるプロトタイプを制作したのですが、そこから遊びの骨子は製品版と変わりはありませんでしたね。
手触りやアクション性の楽しさは理解できたのですが、そこからステージや遊びのバリエーションを増やしていくことはとても難しかった。ただ、その要素をしっかりと固められたので、スタッフの数が増えていっても、ゲームが目指すコンセプトから外れることがなかったのだと思っています。
小堀サウンドが重要なタイトルなので、音作りとアクションが密接に絡んだゲームにしたいということは、ジョンから最初に相談を受けました。私はこれまでにリズムゲーム開発の経験があったので、その知見も踏まえて話し合いを重ねていきましたね。
ただ、ジョンがやりたいことは一般的なリズムゲームとは大きく違う方向性で、「世界のすべてが音楽に合わせて動き、自分のアクションが曲の一部に感じられるようシンクロする」というコンセプトがありました。
いままでの手法が通じないので、初期の段階からいろいろと試行錯誤を重ねた結果、プロトタイプ版に落とし込むことができました。
――プロトタイプの時点で、アニメ調のグラフィックになることは決めていたのですか?
ジョンプロトタイプの時点では、キャラクターは肉付けしていない棒人間のようなモデルでしたね。
阪井最初は、絵としては何もない状態でした。サウンドとアクションの楽しい部分だけがわかる状態だったので、そこにアートを乗せるとなったときは、「どうしたらいいんだろう」とすごく悩みました。
ただ、ジョンが言うように、最初から本作は“プレイヤーの記憶に残るゲーム”を目指していて、ジョンと話し合っていく中で生まれて、しっかりとゲームにハマったのが、現在のアートスタイルになります。
畠山アニメーションは、プロトタイプ版の制作過程で確立していきました。リズムが重要なタイトルですから、リズムとキャラクターのアクションが合うタイミングがはっきりとわかるような、メリハリの効いたアニメーションが必要だと判断しました。
インゲームアニメーションは操作性を重要視しつつも、カットシーンはビジュアルのコンセプトに合わせて、カートゥーンアニメ作品のようなコミカルなアニメーションを制作しましたね。
――主人公・チャイの軽いノリというか、全体的に明るくてどこか憎めない雰囲気は、初期段階からイメージがあったのでしょうか。
ジョン音楽プレイヤーが胸に埋め込まれていて、そのリズムを血肉にして戦う。新たな仲間たちと出会い、会社の“ボス”に立ち向かっていく……。世界観の根幹は、初期から変わっていません。キャラクターの設定なども、ほぼ最初から決まっていました。
そうしたのも、コンセプトからブレないよう、初期に決めたことはなるべくゲームに落とし込んでいこうと思ったからですね。残念ながら入れ込むことができなかった要素も当然あるのですが、その思いはゲーム内のシーンでキャラクターたちが語ったりしています(笑)。
――PS5版で初めて遊ぶ方もいると思うので詳細は避けますが、けっこう赤裸々に語る場面があったりしますからね(笑)。
小堀ジョンが最初から目指していたものから、ほぼブレずにそのまま製品版になっていると思います。ジョンの頭の中には、最初からしっかりとした完成形のイメージがあったんだなと、驚きました。
ジョンイメージがあったからこそ、かなりの試行錯誤もありましたし、開発チームとのゲームが目指す方向性の擦り合わせには時間を掛けました。
たとえば、すごくカッコいいアニメーションを作ってもらっても、ちょっとでもリズム感に欠けていたら「作り直してください」とお願いしたり……。
畠山ありましたねえ(笑)。プロジェクトの進行と合わせて、リズムを感じさせるアニメーションとはどのようなものなのか、徐々に理解していきました。私は音楽自体を作った経験がないので、最初は「BPMとは何ですか?」くらいの知識から始めたんです。
Tango Gameworksにはそういったスタッフも多かったので、みんなで勉強しながら制作していきました。
小堀スタッフのみんながわかるように、音楽用語のリストを作ったりしましたね(笑)。どうしても専門用語が不可欠なジャンルなので。
チャイは待機しているあいだ、指パッチンのモーションを見せるのですが、開発初期のころは気持ちいいタイミングで指を鳴らしていなくて。サウンドデザインとして「2拍目と4拍目で指を鳴らしてほしい」と言っても、なかなかうまく伝わらないこともありました。
そういったときは、動画で自分を撮影してリズムやタイミングを説明して、理解してもらいました。
ジョンリズムには正解はないですし、決まっているものでもありません。
「こうしたほうが気持ちいい、このほうがグルーヴを感じる」といった感覚的な話になってしまうので、そこの意識を擦り合わせるのは難しかったですね。
小堀敵の攻撃は、音楽のリズムやグルーヴが強調されるタイミングでくり出されるべきなのですが、そういった音とゲームのズレをなくすために、各開発セクションで意識を合わせる必要があるんです。
とくに本作のようなゲームでは、そこは気持ちよさに直結する部分だったので、かなり気をつけていました。
――リズムとアクションが融合したゲームの開発自体が初めてという状況でしたから。
畠山私自身、アクションゲームの開発経験はあったので、最初に「本作はリズムとアクションの融合だ」と聞いたときは、音ゲー要素の強い、 もっと小規模のタイトルになると想像していました。
ですが、ジョンの頭の中にはしっかりとアクション要素も重要視した、 スタイリッシュで気持ちのいいリズムアクションゲームというビジョンがあり、「これはアニメーターとしても挑戦しがいのあるゲームになるぞ」とワクワクしましたね。
阪井アートとして、“カラフル・クリーン・シャープ”をビジュアルのコンセプトにしています。ゲームを作るにあたって、プロトタイプのような絵が決まっていないものでは、ゲームに対する理解が開発スタッフに伝わりにくい。
本作のようなコンセプトのゲームでは「こんな見た目のゲームです」とわかったほうが理解が早まる。そう思ったので、かなり早い段階からアートスタイルを決定していました。
――具体的なビジョンがあったほうが、アイデアも生まれやすくなるかもしれません。
阪井プロトタイプ版を遊ばせてもらったとき、確かにゲームの仕組みはおもしろいのですが、リズムとアクションを同時にこなすのがすごく難しいなと感じました。
そこで、ジョンに「本作はリズムとアクションのどちらを優先するのか」と質問したのですが、ジョンから「どちらもないと成り立たないゲーム」と答えてもらったことで、コンセプトを固められました。
アクションが優先されるのであれば、派手な絵作りに振り切っていいのですが、リズムも絡んでいて、いろいろなオブジェクトが画面で動くわけです。そこで、動きや絵でリズムを知らせられるような世界観で、かつ楽しく見えるものを考えた結果、現在のアートスタイルになりました。
どれだけコミカルにしていいのか、少し悩みましたが、初期設定の時点で「チャイの胸にはサウンドプレイヤーが埋め込まれている」とわかったところで、「マジメになりすぎなければ何をやってもいいか」と振り切りましたね(笑)。
ジョンアートのコンセプトが決まったところで、阪井の作ったアートを背景チームにそのまま再現してもらうようにお願いしました。
仕様上、いろいろなところで変更が発生したとしても、阪井のアートにある“カラフル・クリーン・シャープ”というコンセプトさえブレなければ、ゲームの雰囲気は統一されると考えていましたし、このアートであればプレイヤーの記憶に残ると確信していました。
――カラフルではありますが、画面全体から受ける印象はスマートで、とても見やすいビジュアルです。まさにクリーンでシャープなものになっています。
阪井逆に言うと、細かいディテールを加えられないので、地味な苦労は多かったですね。アニメ調のグラフィックで、キャラクターがアニメ的なセルルック表現で描かれているタイトルでも、背景はディテールの細かいグラフィックを採用している作品が多いんですね。
ですが、本作は背景もベタ塗りを基本とするセルルックで表現しているので、大きなオブジェクトの表現には苦心しました。ゲーム内のカメラが固定されている場合ならばいいのですが、自由にカメラを動かせる本作では、大きなオブジェクトを単色でベタ塗りにしてしまうと絵にならないんです。
そこは形状、線の強弱、それを補足する細かなタッチ線や色遣い、ライティングなどの要素をそれぞれ融合することで、ディテール感につながるように工夫を施しています。なので、ぜひゲームでは背景にも注目していただきたいですね。
遊んでいるうちに自然と身体がリズムを刻むようになります
――本作のキモとも言えるアクションとサウンドの融合は、どのようにして構築していったのでしょうか?
小堀アクションはジョンが全体を統括していて、サウンドチームとしてはゲームにアクションが組み込まれたとき、そのアクションとリズムのズレやBGMとのズレなどをチェックして、違和感があるところをバトルチームに報告して……と、調整を重ねていきました。
――サウンド面で、とくにたいへんだったと感じたポイントは?
小堀とにかく音が重要な作品ですから、すべてがたいへんでしたね(笑)。BGMが止まるとゲーム開発そのものが止まるようなゲームでしたから。音楽が流れている中で、自分がそのセッションに飛び込むような感覚です。
ジョンの頭の中にある楽しさを実現するために、あらゆる工夫を盛り込みました。たとえば、オリジナル楽曲はレベルデザインと密接に結びついているので、曲がないとゲーム側が作りにくいんです。サウンドとアクションのやり取りは、セッションを進めながら試行錯誤を重ねていくことの連続でした。
小堀また、ライセンス楽曲を使用する場合は、いかにその曲が持つ流れをそのままゲームプレイにつなげられるのか、歌詞がおかしなところで途切れたりして不自然にならないか、丁寧にゲームに取り込みました。
ゲームの流れを優先して ライセンス曲をアレンジすることはできないので、難しかった面もありますが、うまくゲームに活かせたと思います。
――ライセンス楽曲のラインアップは、どのような経緯で決めたのでしょうか。
ジョンシナリオを書いているとき、自分の頭の中にイメージしている楽曲が流れていたので、それをメモしていましたね。
すべての楽曲の使用許諾が得られるかは別として、イメージした楽曲を取り入れられたら……とは思っていましたが、想像以上に許諾をいただけてうれしかったです。そこから、「この曲をこのステージに入れるとなると、前のステージのノリを変えないと」みたいな、ステージの構成をあらためて考えることになったりもしましたが。
小堀先ほども言ったように、音楽がないとレベルデザインから演出、ステージ構成まで、開発が進められないゲームなので、ライセンス曲が決まるとうれしい反面、ちょっとたいへんだぞ、と(笑)。
やはり、ライセンス曲の許諾には時間がかかるものなので。使用が決まったライセンス曲はシーンのポイントに入れることになるので、その間に流れるオリジナルのBGMを、ジョンのイメージを聞きつつ作っていきましたね。
――そんなオリジナル楽曲が本作の人気を引き上げたと思いますが、『Hi-Fi RUSH』の開発で「このゲームはうまくいく!」と手応えを感じたポイントなどはありましたか?
ジョンそれはもう、無事に発売されたときですね(笑)。ゲームはいつ発売が中止になってもおかしくないものですし、今回はとくに何の前情報も出さず、発表と同時に発売を迎えたので、最後までドキドキしていました(苦笑)。
発表されて、発売されてもなかなか信じられなくて……。スタジオを出て、自分の家で遊ぶまで不安でした。
阪井発表されたとき、まずユーザーの方々の目に飛び込んでくるのがメインビジュアルだと思うので、いきなりビジュアルを見て「何だ、これ?」と思われたら、本当に遊んでもらえないこともあるわけです。
不安はありましたが、最初にお話した通り、グラフィックのスタイルを確立したときに「きっと受け入れてもらえるだろう」という自信はありました。ただ、私もジョンといっしょで、自分の家で製品版を遊ぶまで、発売されたことを信じられませんでした(笑)。
畠山初期の段階では、アクションとリズムが組み合わさっている骨子の部分しかなくて、開発を進めていくうちに仲間とのアクションといった要素などが加わり、アニメーションも固まっていく中でアクションゲームとしても純粋に楽しめるものになりました。
ステージの構成や、その中に散りばめられた遊びを見て「このゲームはヒットする可能性がある」と感じていましたね。
――開発が進むにつれて、徐々にいいゲームになることを確信できたと。
畠山アニメーターの目線で言うと、序盤にリミテッドアニメーションのカットシーンから、ゲームプレイへシームレスにつながるシーンがありますよね。
これまでのゲームにはないような演出ができたので、きっとプレイヤーの皆さんにも驚いてもらえるぞ、と思いました。
ジョンゲームの開発では全体を見ながらも、細かい部分を同時進行で制作していくことが多いんです。初期から大規模なプロジェクトに取り掛かると、「本当に完成するのかな?」と不安を抱えながら作業することもあります。
しかし、『Hi-Fi RUSH』はあるステージが完成したら、つぎのステージを作っていくという、珍しく順番にゲームを作っていく流れだったので、ゴールに対する不安がなかったのはよかったかもしれません。
――無事に発売されて何よりです(笑)。本作は文字通りの“リズムアクション”を体現したゲームですが、いわゆるリズムゲームと違う点はどこにあると訊かれたら、どのようにお答えになりますか?
小堀一般的なリズムゲームは、譜面があって、そこにプレイヤーがタイミングを合わせにいくゲームだと思います。『Hi-Fi RUSH』は、プレイヤーは自由な行動が可能で、自分がリズムに合わせたいときに操作すると、気持ちよさが味わえるゲームなんです。
ありそうでなかったゲーム性ですし、そこが楽しい部分だと思っています。アクションすることで鳴るサウンドが、リズムと後ろで流れているBGMに合致して、戦いながらもセッションに乱入するような楽しさが味わえます。
ジョンきっとリズムゲームが苦手な人もいるでしょうし、「アクションは好きだけどリズムゲームはやらない」みたいな人もいると思うんです。
安心してほしいのは、本作ではリズムにアクションを合わせることがそこまで重要ではない、ということです。アクションにリズムのタイミングが合わなくてもマイナスにはなりません。うまく合えばプラスには働きますが、デメリットはないんです。
ふだんはリズムゲームを遊ばない人にも遊んでほしいと思って作ったゲームですから、リズムの要素を難しく考えず、まずは手に取って遊んでみていただきたいですね。
阪井あまりタイミングを合わせることにこだわらず、気持ちよく遊んでいただきたいですね。遊んでいるうちに、自然と身体がリズムを刻むようになるゲームです。
サウンドに巻き込まれる形で、流れていくように楽しさがどんどん向上していきます。リズムに乗りながらアクションをすると聞くと難しいように聞こえますが、もっと気軽に遊べるゲームなのは間違いありません。
畠山リズムにさえ乗れたらアクションもうまくなるゲームですね。
たとえば、敵の攻撃はリズムに合わせてくり出されるので、画面を見なくてもリズムにさえ合っていれば敵の攻撃を回避できてしまう。BGMのリズムを覚えることがアクションのうまさにつながり、気持ちのいい反応が画面から返ってくる。ここは本作ならではの要素だと思います。
ジョン世界観やキャラクターも、魅力的なものになったと自負しています。ストーリーや設定にも、いろいろなパロディーが隠されていたりして、ギャグも多いので(笑)。
メタ的な要素もあって、開発者の事情をイジったシーンが出てきたり……。それらを全部組み合わせたのが『Hi-Fi RUSH』です。リズムアクションだけに注目するのは、もったいないですよ!
――本作でとくに好きな楽曲やキャラクターは?
小堀細かいことはネタバレになるのでお伝えできませんが、ゲーム後半でThe Joy Formidable(ザ・ジョイ・フォーミダブル)の『Whirring』がかかるシーンは、そのシーンの内容と相まってとても好きです。
また、私は家で黒猫を飼っていることもあり、やはり808(やおや)はお気に入りですね。
畠山あそこは本当にすごくいいシーンですよね。曲のすばらしさも相まって、とても印象に残るシーンになっています。曲も好きになって、プライベートでもずっと聴いています。
ジョンあのシーンは、最初から実現したかったものなので、そう言われるのはうれしいですね。チャイは決してスーパーヒーローではありませんし、最初は「あまりカッコよくない」、「主人公らしくない」といった意見もあったのですが、遊んでいくうちにその魅力に気づいていただけたと思います。
ちなみに、チャイは25歳の設定なのですが、これは私がゲーム業界に入ったのが25歳のときだからですね。当時は何も知らないくせに、何でもできると思っていました。そんな思い出が、少しだけチャイに反映されています。
阪井チャイは僕も大好きです。あの軽妙さがいい感じに見えるよう、主人公らしさを伝えるデザインにすることはたいへんでしたが、チャイができてからはペパーミント、808とメンバーのデザインが揃っていきましたね。
そして、デザインしたキャラクターたちがゲーム内で動き始めたのを見たとき、キャラクターたちの魅力はデザインだけでは完成せず、ストーリーやボイス、アニメーションなど、すべての要素が合体したときに生まれたと思いました。
畠山チャイのイメージがなかったときは、カッコいいモーションを付けていたのですが、チャイのビジュアルができて、カットシーンなどではコミカルさを押し出していて、 それがすごくいいキャラクター性につながって大好きな主人公になりました。
――仲間が増えていくストーリー の流れも、共闘というアクションも楽しい要素になっています。
ジョンほかのアクションゲームでは、武器が増えることが多いですよね。
そうではなく、仲間とともに戦っている感覚というか、チームでいっしょにバンドを組んでいるような感覚をアクションに落とし込むために、このような流れを作りました。そのセッション感を感じ取っていただければうれしいですね。
――『Hi-Fi RUSH』の開発が今後のタイトルに活きることもあるのでしょうか?
ジョンこのゲームの開発では、あらゆるセクションと協力して、同時進行で開発しないといけなかった。この点は、いい経験になりました。アクションを作ってもサウンドとの関わりが重要ですし、アニメーターがモーションを作っても、そこにリズムが感じられなければいけません。
制作しながらもセクションどうしでの連携がないと進められませんでした。ゲーム制作におけるコミュニケーションスキルもアップしましたし、新しいチャレンジは怖くないこともわかりました。この気持ちは、今後の開発にも役立てていきたいです。
小堀どんなゲームの開発でもその経験は活きるとは思いますが、本作では初めてトライした要素が非常に多かったんですね。
ゲームの進行に合わせて曲が変化していくインタラクティブミュージックの要素などは、とてもいい経験になりました。もちろん、今後のタイトルにも応用できるかと思います。
阪井『サイコブレイク』のグラフィックのように、ゲームグラフィックの主流はリアリティーのあるものなのは確かです。しかし、アートのスタイルはさまざまで、いちばん大事なのはプレイヤーに楽しんでもらうことです。
『Hi-Fi RUSH』のようなスタイルは、プレイヤーにユニークな体験をお届けしたい気持ちを表現した結果ですし、本作を完成させて多くの方に楽しんでいただけたことで、経験したことのないものにも挑戦し続けられると思っています。
畠山私も『サイコブレイク』などでリアル系のモーションを手掛けてきましたが、動きと動きのつながりが自然でないと、リアルなモーションにならないんですよね。そのときの経験が、 テイストは違えど『Hi-Fi RUSH』に活きた部分でもあります。
また、プロトタイプ版で大きな遊びの土台を作り、そこから肉付けしていくことの大切さもわかりましたので、今後もそこで得たノウハウを活かしたいと思います。
――最後に、ディレクターとしてPS5版の購入を迷われている方にメッセージをお願いします。
ジョン完成したのは1年前のタイトルですが、まだ遊んだことがない人もいらっしゃるでしょうし、中身を知らない人もいるでしょう。
リズムアクションゲームと聞いただけではゲームの内容を想像することは難しいとかもしれませんが、遊び始めればすぐにその楽しさに気づいてもらえると信じています!
PS5版には、Xbox/PC版の無料アップデートで追加されたコンテンツをすべて収録。コスチュームパックはもちろん、メインストーリーのクリアー後に開放される“BPMラッシュ!”と“パワーアップ!タワーアップ!”というふたつの新しいゲームモードが楽しめる“アーケードチャレンジ!アップデート!”も実装されている。
フォトモードやアシストモードの“2Dリズムゲームアシスト”も最初から実装されているので、リズムアクションは苦手という人も気軽にプレイしてみよう!
商品情報
[タイトル]『Hi-Fi RUSH』
[対応ハード]プレイステーション5
[メーカー]ベセスダ・ソフトワークス
[発売日]2024年3月19日発売
[価格]4180円[税込]
[対象年齢]CERO 12歳以上対象
[備考]ダウンロード専売、『Deluxe Edition』は5500円[税込] ※Xbox版、PC版は2023年1月26日発売 開発:Tango Gameworks
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...以下引用元参照
引用元:https://www.famitsu.com/news/202403/19337297.html