REBORN(再生)を告げる祝祭の一夜 KMNZ、3rdワンマン「KMNCULTURE」ライブレポート
2025年1月21日 18:00 VTuber
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2025年1月15日に渋谷Spotify O-EASTにて、RK MUSICに所属する3人組ユニット・KMNZ(ケモノズ)が3rdワンマンライブ「KMNCULTURE」を開催した(アーカイブページ)。
2023年12月に前メンバー・LIZがグループを卒業。2024年5月19日からLITAに加えて、新メンバーとしてTINAとNEROの2人が加入し、新体制となって活動を続けてきた。2025年に入って3人体制となってからの初音源「KMNCULTURE」を発表し、リリース後2週と経たずに3人体制として初の現地ライブとなる本日を迎える格好となった。
この流れを見ると「KMNZが復活した」と感じる方もいるだろうが、この日のライブにあったのは「KMNZ IS BACK」ではなく「KMNZ IS REBORN」という新たな空気感。そして彼女らのパフォーマンスに盛り上がった満員札止めの観客とその盛り上がりは、彼女らの”再生”を祝うように大きく熱いものであった。
そんな3rdワンマンライブ「KMNCULTURE」を振り返ってみよう。
久々のリアルライブ 不安や心配を吹き飛ばすようなパフォーマンス
「申し訳ないですが! 前に一歩ずつ詰めてお並びください!!」
この日のライブ開演5分前、スタッフから観客にむけてこんな声があがっていた。
開演まで間にこういった声がかかるのはおかしなことではないが、この日のライブは開演にむけて何度となく聞こえてきた。「前まで詰め詰めじゃないと観客が入り切らない」という状況。本人たちや公式アカウントからアナウンスがあったように、この日のライブは「ソールドアウト」「当日券販売無し」の満員札止め状態。KMNZへの期待の裏返しが、まさに目に見える状況であった。
会場が暗転し、オープニングムービーが流れはじめる。「THANK YOU FOR WAITING」という言葉と3人の愛らしい絵、そこからブーンバップなトラックにあわせてLITA・TINA・NEROの3人が紹介され、早速ライブへと突入していった。
数多ある君の世界へ
全ての道はそこに繋がってる
もう二度と味わえないくらい
聞かせて欲しい 溶け合うライン
1曲目はアルバム「KMNCULTURE」でもトップバッターとなっていた「VERSE」。冒頭を3人のボーカルで歌い上げ、「せーの、どうもKMNZでぇーす!」という挨拶をすると、観客が歓声で応える。Snail’s Houseによるキュートなシンセサウンドが耳を惹きつける中、LITA・TINA・NEROがボーカル&ラップをみせていく。待ってました!とばかりに会場が盛り上がり、1曲目を終えた。
ステージ上は照明用のトラス(細いパイプを溶接した骨組み)がオブジェとしていくつも置かれており、大型スクリーンには、2台のアメ車、いくつかの標識、ソファーにアンプとギター2機、古めかしい何台ものテレビなどが置かれたガレージ。なんともアメリカンな3D空間のなかから3人がパフォーマンスする。
1曲目を終えてすぐに「改めまして! KMNZです! やほだぜぇ~!」とMCをスタートした3人。この日は最初から最後まで会話のテンションが高く、LITAとNEROが小ボケを挟み込めば、TINAが横でクスクスと笑いながらツッコむという絵が生まれていた。
「東京でO-EASTをいちばん揺らす!」と意気込み、「私たち3人の出会いの歌です」という一言を添えて披露したのは、2曲目「MID JOURNEY」。センチメンタルなニュアンスを強く感じさせるダンスポップで、大型スクリーンには同曲のMV映像が流れていく。
LITAが1人運転する黄色い車に、NEROとTINAが乗る赤い車がたまたま横に並んで走り、最後には1台の車に3人が乗ってドライブしていくという内容。そういえば3人がパフォーマンスしているガレージには赤い車と黄色い車が2台止まっていたな……などと思えば、この曲を2曲目に披露した理由や意味も強まって聞こえた。
会場がぐっと暗くなると、メンバー3人の眼がうっすらと輝いてこちらに眼差しを向ける。3曲目「LUNATIC BEAST」はEDMライクなエレクトロ・ポップスで、徐々に高ぶっていくテンションやボルテージを3人のボーカルでもうまく表現しようとトライしていた。
MCを迎えると、LITAとNEROがちょっとおかしなポージングを挟み込み、TINAがすこし戸惑いながらツッコむという先ほどと同じ流れになり、会場にも笑顔が生まれた。
ライブが一気に盛り上がっていったのはここからだった。オーケストラヒットのようなシンセサウンドとグルーヴィなサウンドが基調となった4曲目「CALLING」では3人はユラユラと体を揺らすように歌い、5曲目「BE NOISY!」においては一気に観客を盛り上げていく。
「OH YEAH!BE NOISY!」というサビだけではなく、メンバーの煽りに合わせて自然とへイ!へイ!と声を上げ、ハンドクラップが沸き起こる。「超満員のフロア照らす Antares 最高潮の僕らが いま一番揺らしてるこの夜を」という歌詞のとおり、間違いなくこの日フロアを震わせた最初の瞬間だった。
ソロ歌唱から音楽の渦・波へと飛び込んでいく3人
「実はみなさん、ここからはソロカバーをお届けします!」とNEROから切り出され、LITA・TINA・NERO3人のソロ歌唱パートへ移っていく。そしてLITAによる「TOKYO通信」(SOUL’d OUT)、TINAによる「勘冴えて悔しいわ」(ずっと真夜中でいいのに。)、NEROによる「不可幸力」(Vaundy)とそれぞれが歌っていった。
この日の会場となった渋谷Spotify O-EASTには618インチ(約15m)のLEDビジョンが常設されており、ライブではこの大型LEDビジョンと流れていくムービーが観客をかなり圧倒していたように感じられた。
先にも書いた3D空間の特徴的な美しさはもちろんのこと、ライブ途中に挟まる演出も面白く、このソロ歌唱パートでは1曲ごとにメンバーが交代する際に電車に乗ってステージにやってきて、乗り降りすることでメンバー交代となるという粋な演出をしていた。
KMNZがこれまで意識してきたヒップホップといえば、ニューヨークやブロンクスの地下鉄を思い浮かべる方もいるだろう。そういった古典的(クラシカル)な文脈を取り入れているところにはニヤリとさせられてしまう。
ちなみにZ-anの配信では現地ライブで見れなかったカットが見られる。こういった「本来見れないはずのカットや演出が見れる」というのが3Dライブのオリジナリティとして提示されているのもミソだろう。
ワンマン、実は現地では見ることの出来ない配信だけの画角や演出があるよ!突然出てきた電車の演出でメンバー同士のわちゃわちゃがあったり、ドアップで細かい表情がよく見れたり。アーカイブ26日まで残ってるので現地組も見返す用におすすめhttps://t.co/ok1qg9GB3w↓ナイススクショ https://t.co/XDnV4CVrhj KMNZ NERO | ネロ (@kmnznero_) January 17, 2025
ライブへ戻ろう。ソロ歌唱は各々の特徴・声色にマッチした選曲だったと感じられた。この選曲から伺い知れるのは、やはり「1MC&2Vocal」というところをイメージしているという点であろう。この日集まった観客もなんとなくそのイメージを受け取ったのではないだろうか。
「折り返しを過ぎましたが、みなさん調子はどうですか?!」という問いかけに大歓声が返ってくるフロア、ここでスペシャルゲストとして翌日同じ会場でワンマンを控えているVESPERBELLの2人が登場した。
これまでYouTubeを通したライブなどで何度となく交流してることもあり、より柔和なムードが生まれたところで、5人で「アンノウン・マザーグース」(wowaka)を披露した。明らかに高い音程や複雑に乱高下するメロディライン、明らかに詰め込みすぎた歌詞なども、ファルセットや早口をバッチリと決めてみせる5人。サビに当たる部分では観客から合唱が湧き上がり、会場を大いに盛り上げた。
5人での仲睦まじい掛け合いもほどほどに、VESPERBELLの2人は退場。「オリジナル楽曲をこのまま3曲連続で披露します!」というMCから「FREELY」へ。
自身のファンとの密接な距離感と音楽のなかへと飛び込んでいこうとする昂りを歌にしたこの曲は、生バンドの演奏を感じさせるファンキーな1曲。紫や黄色のライトが観客たちへと差し込み、より濃厚な空間が生み出されていく。
つづく楽曲「NEW DAYS」では、ハウスミュージックライクなダンスポップで、ボーカルの合間で「ジャンプ!ジャンプ!」と3人が煽れば、観客も思い切りジャンプしてこれまで以上にグッと盛り上がる。アニソンなどでよく見られる「PPPH」(パンパパンフー!とリズミカルにハンドクラップする盛り上がり)をメンバーがすれば、それにも即座に観客たちが反応。KMNZと観客が一体となった空気が、目に音にハッキリ生み出されていった。
そんな盛り上がりに続くようにスタートした次曲「META FICTION」では、リズムがこれまでよりグッと速くなり、早足なメロディラインとそれに合わせた字余り気味な歌詞を勢いよく歌っていけば、観客も大いにもりあがる
LITA・TINA・NEROのボーカルリレーもバッチリで、ナイーヴな歌声のTINA、力感のあるボーカルをみせるNERO、そしてクールな佇まいとラップ&フロウの節回しを活かしたボーカルをみせるLITA、3人のカラーが十全に現れていた。
本編最後となった「SUNDAY NIGHT MAGIC」では、グルーヴを少しだけ落としたメロウなムードのなかで、より3人のボーカルとハーモニーが花開く。白い照明が会場中を彩るなか、3人はボーカルとハーモニーにすこし注意し、鮮やかな響きを広げていった。
ホール会場の緞帳のように上からライブタイトルがドンと降り、本編が終了。すぐさま「アンコール!」という歓声が沸き起こる。ライブ中に起こった合唱よりも大きいくらいにきこえ、彼女たちへの熱い信頼や期待感を感じさせるほどだった。
そんな期待や信頼に応えたのが、アンコールでのパフォーマンスと選曲だった。
2人時代の曲を3人で披露するメモリアル その瞬間渋谷が”ブチあがった”
アンコール1曲目に唄われたのは、なんと2人組時代の楽曲「WE ARE BACK」。ライブ途中のMCで過去の楽曲を歌うことをハッキリと口にしていたわけだが、アンコールから帰って来る1曲目にこの選曲とは、なんともニクイ演出だ。
そんなニクい演出に、観客も応える。サーチライトが七色に会場を色付けし、トランシーなシンセサウンドで一気にパーティムードへと変幻したなかで、「SAY PARTY!」という呼び掛けに大歓声で返していく。
「このあとも愛されすぎているKMNZの楽曲を3人で歌っていきます!」とLITAが話し、披露された「OVERNIGHT」「Augmentation」は、パーティ感を一気にヒートアップさせていく。クラブ系なサウンド/ベース音をググっと前に押し出したパーティチューンの2連打で、フロアはクラップ&ジャンプが止まらず、3人が煽らずとも合いの手やコールが自然と起こっていった。
「Augmentation」が始まる直前に「最後まで出し切れるか!!?」とLITAが観客をアジテートしていたが、”ブチ上がり”な盛り上がりにフロアから「ヤバーイ!」という嬉しい悲鳴が聞こえたのを、筆者は聞き逃さなかった。VTuber系クラブイベントの空気感へ、まるで渋谷Spotify O-EASTがclub asiaになってしまったのか?と思えるほどの空気へと変わったのだ
「今回は3人で初めて開いた重要なライブで、わたし(NERO)とTINAちゃんにとっては初めての現地ライブということで、とっても大切なサードワンマンライブだったんですけど、こういうときに駆けつけてくれるヘッズ(KMNZファンのファンネーム)のみなさん! 本当にありがとう!」
「みなさんいろいろ葛藤を抱えながら来てくれた方もいるかと思います。ただもう、私たちは3人で全力で突っ走っていくので。ヘッズのみんなが横並びで走ってくれればうれしいです。これからもKMNZ、よろしくお願いします」(LITA)
この日最後に披露したのは「STAR-LIGHT」。ここでは3人のボーカルを再度1つに集めるように重ね、ミクスチャーロックらしい激しいバンドサウンドのなかでも褪せない強さを発していた。
筆者が気になったのは、新たに3人バージョンで披露されたこの曲における、歌唱パートの割り振り・分量である。2人から3人となったことにより、LITAの歌唱パートは減り、NERO・TINAが歌うシーンが必然的に多くなる。
遮二無二に突っ走っていく!という強いメンタルを綴ったこの曲を、3人となって初の現地ライブの最後に歌う。強かなメッセージ性を秘めた曲をデビューして間もない2人にある程度託し、期待や不安入り交じるファンを眼の前にラップ&シングしてもらう、もしもそこに狙いがあったなら?
2人組時代の楽曲には「2人で活動している」というニュアンスが強く残った歌詞がいくつかあるが、「STAR-LIGHT」ではその部分を新たにしてNEROとTINAがバッチリと歌っていた。その点も含め、「STAR-LIGHT」を歌うワンシーンは「新たな3人組としてのKMNZ」をしっかりと提示しているように見えた。
歌いきった3人、LITAが「また次のライブで絶対に会いましょう!」と最後に声をかけると、万雷の拍手が巻き起こった。それが何よりの大きな返答だったのはいうまでもない。
復活、再始動、再出発、再起動、帰還、舞い戻る(バック)……改めてスタートするという意味の言葉はいくつもあるが、あえていうならば新たなKMNZとしての”再生(リボーン)”を飾った一夜であった。
●セットリスト1.VERSE2.MID JOURNEY3.LUNATIC BEAST4.CALLING5.BE NOISY!6.TOKYO通信(LITA Cover)7.勘冴えて悔しいわ(TINA Cover)8.不可幸力(NERO Cover)9.アンノウン・マザーグース(Cover Feat.VESPERBELL)10.FREELY11.META FICTION12.SUNDAY NIGHT MAGIC*アンコール13.WE ARE BACK(Cover)14.OVERNIGHT(Cover)15.Augmentation(Cover)16.STAR-LIGHT(Cover)
(TEXT by草野虹)
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