VRアイドル・えのぐの熱量を再確認 新たな一歩「enogu Re:1st one-man Live -THE FIRST」ライブレポート
2025年1月20日 18:00 VTuber
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2月に結成7周年を迎えるVRアイドルえのぐ(鈴木あんずさん、白藤 環さん、日向奈央さん)が2025年、最初のワンマンライブを実施。1月4日(土)と5日(日)に池袋の未来型ライブ劇場「harevutai」で、「enogu Re:1st one-man Live -THE FIRST」(以降、「THE FIRST」)の全3公演が開催された。
デビュー以来所属していた「岩本町芸能社」の廃業に伴い、アイドルである3人が立ち上げた新事務所「えのぐ合同会社」での活動を始めてから約1年。「えのぐ合同会社」が一から単独企画した初めてのワンマンでは、3公演のセットリストが異なり、ソロ曲とユニット曲(デュオ曲)に、 4人で活動していた時代を象徴する「e☆Jump!→Dream!!」を除く、えのぐのほぼ全楽曲(45曲)を披露。複数の公演で重なっている楽曲は、2024年9月にリリースした3rdフルアルバム 「真っ白は色褪せない」 の書き下ろし曲「プロローグ」と「真っ白は色褪せない」だけだった。えのぐの7年の歩みを総括し、新たなスタートともなった特大ボリュームのワンマンライブをダイジェストでレポートする。
なお、初日の第1公演は、えのぐの公式YouTubeチャンネルで全編生中継され、アーカイブも無料視聴可能。2日目の第2公演と第3公演も、ニコニコ生放送でタイムシフトを有料視聴可能だ。
※ニコニコ生放送の視聴チケットの販売期間は、2025年3月2日(日)23時59分まで。
ステージの最前に「物理」で3人が近付いてくる!
昨年、実施されたクラウドファンディング「あなたとつくる!えのぐ 2DAYS ONE-MAN LIVE プロジェクト」でストレッチゴール(1300万円)を達成し、全編生バンド演奏で開催された「THE FIRST」。1月4日(土)の19時に開演した第1公演でも、まずは、バンドメンバーがステージに登場。1曲目は、開演時点での最新曲の一つ「プロローグ」だ。
「僕の合図で幕は明けるよ」「想い信じて進めばいい」「僕のために僕がいるんだ」など、えのぐらしい強く前向きな言葉が続く楽曲を歌い上げると、次の曲のイントロと共に鈴木さんがライブの開演を宣言した。
鈴木「これから始まるのは、私たちとみなさんの物語です。いっぱい笑いましょう。いっぱい夢を語りあいましょう。そして、この物語を一緒に未来まで届けましょう!」
ミディアムテンポの曲で少し静かに始まったと思った直後の熱いメッセージに続き、「栞」「Original Color Girls!!!!」と思わず身体が動き出すリズミカルな曲を連発。バンドメンバー紹介と最初のMCを終えて、次のブロックに進むのかと思った時、日向さんが「次の曲に行く前に~」と何やら少し楽しそうに話し始める。
日向「この景色と応援してくれるみんなの顔がもっと鮮明に記憶と心に残るように、いつもより少しだけ、みんなに近付きたいと思いまーす」
何が起こるのか分からず困惑する観客に、日向さんは、「enogu」「THE FIRST」の頭文字を取った「E・T・F」コールをリクエスト。会場が暗くなり、コールを煽る3人の声と、会場と配信のコメント欄での「E・T・F」コールが続く中、ステージ奥のスクリーンから3人の姿が消える。そして、照明が点くと、ステージの最前に3枚の大きな縦型ディスプレイが並び、そこに3人の姿が。推したちが目の前に来てくれたことに驚き喜びながら、激しく手を振るファンに向けて、目を合わせるようにしゃがんで手を振る3人。バーチャルとリアルの距離が、物理的に一気に近付いたシーンだった。
続く、4曲目「絵空事」のパフォーマンス中、間奏で3人が客席を煽っていると、少し間を開けて並んでいた3枚のディスプレイがゆっくり近付き、ぴたりとくっつく。3枚の縦型ディスプレイがまるで横長な一つのディスプレイのように変わったのだ。3人は広くなったステージを大きく使ってポジションも入れ替えながらのパフォーマンスを見せる。
昨年末にインタビューを行った際、演出面でのサプライズがありそうな雰囲気は感じたが、ステージの奥から最前への移動は、バーチャルアーティストの演出として非常にユニーク。今後、いろいろなライブハウスで観ることになる予感がする。
機材トラブルのアクシデントにも対応
バラエティに富んだオリジナル曲の中でも、比較的エモーショナルな楽曲が多かった印象もある第1公演。中盤の8曲目では、最新曲「真っ白は色褪せない」をライブ初披露。続いて「Dreamin’ World」を歌い始めると、出だしから微妙に歌声と曲がずれている。「おや? 珍しい」と思いながら観ていると、白藤さんが手を上げながら大きな声で、「もう1回、最初から行きまーす」と叫んで、パフォーマンスを中断。スタートのポジションに移動した後、スタッフからの指示が入ったのか「1回、MCに入ります」と報告。どうやら、機材トラブルが起きていたようだ。
しかし、まったく焦った様子は見せず、まるで最初から決まっていた流れのように、機材が復旧するまでの時間、客席を盛り上げながら即興のMCを続ける3人。さすが、活動初期から現場にこだわり、バーチャルアーティスト屈指のライブキャリアを誇るえのぐだ。数分で機材が復旧すると、1曲前の「真っ白は色褪せない」から再びパフォーマンス。アクシデントではあるが、特に現地を訪れていたファンにとっては、嬉しいおかわりだったにちがいない。
なお、1月6日(月)の打ち上げ&振り返り配信で、このアクシデントについても語られているのだが、「Dreamin’ World」の最初からイヤモニ(バンドの演奏やクリック音、スタッフからの指示など、歌唱に必要な音声を聴くために装着するイヤホン)の音がまったく聴こえなくなったらしい。しかも、同じ現象は2曲目の「栞」の途中でも発生していたとのこと。アーカイブで「栞」のパフォーマンスを観直したが、「言われてみれば……?」と少し思うくらいで、ほとんど違和感は無かった。
アクシデントもファンとの楽しい交流タイムに変えて、アンコールの2曲を含む全15曲を歌いきった第1公演。クライマックスは、「僕らへの詩」「えのぐ」「星は三度瞬く」を披露した本編の最終ブロック。
4人体制でリリースした最後のアルバムの最終曲、5人組アイドルとして発表したデビュー曲、現在の3人体制での最初の曲と、えのぐの歩みを知っている人なら思わず涙しそうな3曲で、エモーショナルなセトリの中でも特に泣かせに来たのかと感じるブロックだった。
第2公演は、タオル曲で熱いまま終幕
1月5日(日)の13時30分開演の第2公演は、タイトルからして1曲目にふさわしい「Welcome to Live」でスタート。続いて、3人がステージをグルグルと回る「アンプリファー」、コールの連発も楽しい「ビリパリッ!!!」と、序盤から階段を数段飛ばしで駆け上がるようにテンションを上げていく。MCを挟んだ次のブロックは、「YeLL for Dear」「ショートカットでよろしく!」「Love Me」と青春感の強い楽曲が続く。第2公演のセットリストは、全体的にもポジティブで明るい曲が多い印象だった。
その中でアクセント的な時間になっていたのが、少し大人な恋を切なく歌った「恋擬き」と、緩急の変化でも魅せる和ロック「鏡花水月」を披露した10曲目、11曲目の第4ブロック。「えのぐ初心者」は、きっとこの2曲だけでも、えのぐのオリジナル曲の幅広さを感じられるはず。
本編のラスト、12曲目と13曲目では、「イレイザー☆ビーム」「SUN HIGH SUMMER!!!」とハイテンションな楽曲を連発。アンコールでも、3人と一緒にファンも跳びまくる「とぶらぶっ!!!」、真冬でも盛り上がるタオル曲「常夏パーティータイム」と、さらに会場を熱くして第2公演を締めくくった。
静かに始まった最終公演が急変!
1月5日(日)の18時30分開演の第3公演は、「スタートライン2022ver.」で開幕。「プロローグ」「Welcome to Live」「スタートライン」と、始まりに相応しい楽曲を3曲も持っていることからも、えのぐの約7年の歩みを感じた。3曲の中でも「スタートライン」は、新しい一歩を踏み出す卒業式も似合うような曲で、「Re:1st one-man Live -THE FIRST」というタイトルを冠したライブの最終公演1曲目として最高のセレクトだ。続く「NoReason」「Magic」もしっとりと歌い上げるバラードで、3人の安定した歌唱力に引き込まれる。
最初のMCの最後には、鈴木さんが各公演のコンセプトを紹介。
鈴木「1月4日、第1公演のコンセプトは、『衝動、奮起、分岐点』。1月5日、第2公演のコンセプトは、『変化、融合、多様性』。そして、この第3公演のコンセプトは、『誇り、挑戦、リアル』です」
さらに、鈴木さんがこのライブに懸ける真摯で熱い思いを語った後、白藤さんの「全員、高く拳を掲げろー!」という熱い煽りから第2ブロックに突入。全3公演の中で最も多い5曲連続でのパフォーマンスを見せたこのブロックは、激しい曲の連続で、まさに「挑戦」だった。公式でも「えのぐ史上最もラウドでメタルコア」な曲と紹介されている「Defiant Deadman Dance」で、いつも以上に激しいがなりを見せた後、ダンスも含めた激しさの絶対値では負けていない「Armor Break」のイントロが流れ出した時は、シンプルに驚いた。
最終公演で今年最初の新曲を初披露!
さらに、「Possible」「BAD DANCE」と歌もダンスも熱く激しい曲が続いた後、「フラストレーションガール」ではBPMが急加速する。
連続5曲を歌い終えた3人が、「ありがとうー」と手を振り始めた時は、ようやくMCかと思ったのだが、休む間もなく「『harevutai』、ニコ生、まだ声は出ますかー!」と煽りはじめる鈴木さん。続けて「全員、夢に狂えー!」と叫ぶと、会場のファンからは驚き混じりの歓声が上がる。9曲目は、「狂戦士」(バーサーカー)というタイトル通りの勢いと激しさを持った曲「バーチャルバーサーカー」だ。第2ブロックからの流れに続けて、この曲を配置して、まったく疲れを感じさせないパフォーマンスを続ける3人は、本当に「バーチャルバーサーカー」かもしれない。
曲調や歌詞がポップな10曲目「ギザギザコミュニケーション」と、11曲目「It’s 笑 time!」では、ステージの雰囲気はかなり変わったが、ダンスの運動量は変わらず激しい。実質、8曲連続でハードな歌唱とダンスを披露した3人は、ようやく給水タイムに突入する。しかし、第1、第2公演でも同じだったが、休憩時間があるわけではなく、ステージにMC担当を残したまま、順番に舞台袖に下がって給水するだけ。
第3公演では、まず鈴木さんが給水に行ったのだが、白藤さんと日向さんは、どこにそんなスタミナがあるのかと不思議になるくらい、元気一杯でパフォーマンス中にも負けないくらいハイテンションだった。二人と入れ替わりでステージに戻り、珍しく一人ぼっちでMCをする鈴木さんもハイテンションで楽しそう。給水後、最新アルバムの書き下ろし曲の「プロローグ」「真っ白は色褪せない」に、えのぐの代表曲で魂の歌「BRAVER」と続けざまに披露して、さらに会場を盛り上げる3人。
そして、クライマックスを前に、鈴木さんが熱い言葉と共に、初披露となる新曲のタイトルを告げる。
鈴木「私たちが、挑戦することを諦めずに、何度でも繰り返すのは、応援してくださる皆さん、全員に、伝えたいメッセージがあるからです! 夢も、目標も、応援してくれるあなたの存在も、全てがリアルで、本物だから! 私たちは真剣に、この活動と向き合っています! 応援してくれる皆さんに何度でも、感謝の気持ちと私たちのリアルを届けたい! そんな想いを、この曲に込めました。新曲です。聴いてください。えのぐで、『Re:all』」
【THE FIRST】Re:all えのぐ harevutai / Live ver.
えのぐらしい熱さやメッセージ性は持ちながらも、メロディ、歌詞、ダンスのすべてで可愛いさが前面に出ている新曲。特に激しく熱い曲が多かった第3公演だからこそ、その特徴や魅力がより鮮明に感じられた。
「世界一のVRアイドル」を目指すと改めて宣言!
未来を信じて進む姿を描いた「僕色インフィニティ」で本編は閉幕。アンコール1曲目は、鈴木さんがプロデュースした「小さな勇気」。さわやかで可愛いけれど、濃いメッセージ性も持っているまさに「鈴木あんず」のような曲だ。
「THE FIRST」最後のMCでは、日向さん、白藤さんが今後の活動への思いを順番に語った後、鈴木さんがえのぐの目標を改めて宣言する。
鈴木「(前略)私たちが目指す『世界一のVRアイドル』は、VRアイドルやバーチャルアイドルを名乗って活動するスターがたくさん生まれるための礎を築く、最初のグループになることです! 10年後、20年後、『今、たくさんのバーチャルアイドルが当たり前に、リアル、バーチャル関係なく活躍しているのは、あの時、えのぐが、 そして、えのぐを応援する人たちが、今に続く道を作ったからだ』と言われるような、そういうアイドルになりたいって思っています! そのために私たちは、自分たち自身がバーチャルアイドル全体を牽引できるような存在になりたいし、今よりバーチャルアイドルが活動しやすい環境を作りたいって、本気で思っています! そういう『世界一』を、私たちは、これからも目指し続けます! 『enogu Re:1st one-man Live -THE FIRST』、最後の曲です! この2日間の景色と私たちの夢を忘れないでください! そして、次にライブで会う時は、今日より大きな夢を笑って語り合いましょう!」
背負っているものの重さと、心に秘めている夢の大きさが伝わるえのぐらしい言葉の後に披露された最後の曲は、「またね、って言うよ」。「小さな勇気」と同じ鈴木さんのプロデュース曲で、熱すぎるほどに熱かった第3公演を爽やかに締めくくった。
「えのぐ合同会社」として単独企画した初めてのワンマンライブでも、前体制時と変わらないどころか、熱さも濃さもさらに増したようなライブを作り上げたえのぐ。その歩みを追いかけてきた一人として強く願うのは、新たな一歩を踏み出したこのライブを通して、えのぐをまだ知らない人たちにも、その魅力が伝わっていくこと。
えのぐ最大の武器は、鍛え上げられ、魂もこもった歌とダンス。そして、オリジナル曲オンリーのライブを3公演もできるほど、バラエティに富んだオリジナル曲の数々だろう。ライターとしては無念なことに、その魅力は、文章では伝わりづらいのだが、動画などで見て聴けば一瞬。個人の好みあるだろうが、3人のパフォーマンスと楽曲のクオリティーは、すぐに理解できるはずだ。
えのぐのことが少しでも気になる人は、まずは、えのぐ公式YouTubeチャンネルで無料生配信され、現在もアーカイブが無料視聴可能な第1公演を再生して欲しい。そして、第1公演では観られないけれど、レポートの記述で気になる曲があれば、えのぐ公式YouTubeの動画をチェックすると、多くの曲について、過去の公演から抜粋されたライブ映像もアップされている。
1月19日には、新曲 『Re:all』の第3公演でのパフォーマンスも動画化され公開された。 もちろん、ニコニコ生放送で配信された第2、第3公演のタイムシフトも観れば、最新のえのぐの魅力のすべてを楽しめる。
(TEXT by Daisuke Marumoto)
●関連リンク・えのぐ公式(X)・えのぐ公式(YouTube)・「enogu Re:1st one-man Live -THE FIRST」ネットチケット購入ページ(ドワンゴチケット)
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